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DMF14系エンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
DMF14系
概要
製造会社 カミンズ
設計者 カミンズ
別称 NTA855-R, N14-R
生産 1950年代-
レイアウト
構成 直列6気筒
排気量 14リットル
シリンダー内径 5.50 インチ
動弁装置 OHV4弁
圧縮比 14.0 - 17.0
燃焼
ターボチャージャー あり
燃料系統 直接噴射式
燃料種別 軽油
冷却系統 水冷
出力
出力 261-386ps

DMF14系エンジンは、アメリカ合衆国ディーゼルエンジンメーカー、 カミンズ製NTA855-RおよびN14-R系列(以下、Nシリーズと記述)エンジンの、JRグループにおける呼称である。第三セクター鉄道で採用されたNシリーズはメーカー型式をそのまま用いているが、併せて記述する。

概要

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カミンズNシリーズは、1950年代に設計されたNHシリーズを源流とする歴史の長いエンジンで、大型自動車から建設機械船舶内燃力発電まで幅広く用いられてきた。直列6気筒バージョンとしては、672(内径478×行程6″、以下同じ)、743(518″×6″)、855(512″×6″)、927(512″×612″)の各排気量立方インチ表記)が設定されていた。型式の数字は総排気量に由来するが、1980年代中頃に立方インチからリットルに表記が改められると同時に、ターボチャージャーを表す“T”、アフタークーラーを表す“A”が省略された(NTA855 → N14)。1990年に電子式燃料噴射制御“CELECT”(Cummins Electronic Engine Control)、1997年には改良型の“CELECT Plus”を採用、これらは型式がN14Eとなった。先進国では排出ガス規制強化により、2001年に後継のXシリーズ英語版に置き換えられ、以後は主に規制の緩い途上国向けとして生産されている(N14Eの規制適合はEPA Tier 2[注 1]どまり)。

鉄道車両用としては、Nシリーズを横型化(水平シリンダ化)し全高を抑えたタイプ(型式に-Rが付く)が気動車用エンジンとして世界的に広く採用されていた(日本国外の近隣諸国での採用例は後述の台湾のほかに韓国鉄道公社(旧鉄道庁)の9501系気動車がある)。横型の気動車用Nシリーズはイギリス・スコットランドのショッツ工場(1998年3月閉鎖)で生産されていたが、インドなどの新興国に生産拠点を移転している。

上述のように、Nシリーズの排出ガス規制適合はEPA Tier 2にとどまる[1]ため、2022年現在、カミンズは、公式サイト(日本語版)においてNシリーズを鉄道車両用エンジンとしてラインナップしておらず、過去の形式となっている[2]。鉄道車両向けにラインナップされているのは上述のXシリーズ及びクアンタムシリーズ英語版であり[2]、また気動車(DMU)向けの水平シリンダー型への対応例として、公式サイトではクアンタムシリーズのQSK19(直列6気筒・750hp)を挙げている[2]

排出ガス規制の関係で、2019年現在カミンズの鉄道車両用エンジンのカタログにNシリーズは掲載されていない[3]が、カミンズ台湾法人の公式サイトにはN14-R系列の記載がある[4]

日本国内での導入

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カミンズNシリーズは、日本の鉄道車両メーカーが製造する輸出向け気動車(台湾鉄路管理局DR2700型気動車DR3000型気動車DR3100形気動車DR1000形気動車など)に搭載されていたが、国産エンジンに固執していた日本国有鉄道では採用されなかった。日本国内向け鉄道車両としては、大井川鉄道DD20形ディーゼル機関車が初めてNシリーズ(直立シリンダタイプ)を採用した。

国内向け気動車へのNシリーズの採用は、国鉄分割民営化後の1988年東日本旅客鉄道(JR東日本)がエンジンのコンペを企画し、小松製作所(コマツ)製[注 2]および新潟鐵工所(現・IHI原動機)製[注 3]エンジンとともにカミンズNTA855-R1エンジンをキハ58形気動車に搭載し、1年間の営業試験走行を行った[5]ことに始まる。試験終了後、JR東日本ではキハ110系気動車などの新製気動車や、旧年式気動車のエンジン換装にNシリーズをDMF14HZ系列として採用した。その後のキハE130系気動車以降の一般形気動車の新形式では小松製作所製SA6D140H系エンジンをDMF15HZ系列として採用して以降同系列に移行していたが、2017年製造の事業用気動車キヤE195系気動車のみ原設計がJR東海向けであったことから最後に採用した2002年製造の事業用気動車のキヤE193系気動車以来15年ぶりの採用となった。

1989年には、東海旅客鉄道(JR東海)がキハ85系気動車に国内向け新製気動車としては初めてカミンズNTA855-R1エンジンを採用、国鉄式呼称に“C-”を付けC-DMF14HZと称した。以後、JR東海はキハ40系気動車などのエンジン換装も含め、全ての気動車用エンジンをNシリーズに統一した。

なお、日本国内には鉄道車両用ディーゼルエンジンに対する排出ガス規制が存在せず[6]2010年代に至っても後継形式のXシリーズやクアンタムシリーズの採用はなくNシリーズの導入が続くという、欧米では見られない現象が続いている(上記カタログ参照)。大手ユーザーの東海旅客鉄道(JR東海)の非電化区間用の最新形式(2022年現在)であるHC85系においても、Nシリーズエンジンを搭載している[7]

諸元

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Nシリーズ(気動車用)共通項目

N14-R系列各型式の相違は以下の通り。

型式 燃料噴射制御 定格出力
kW(HP) / rpm
最大トルク
N‧m(lb-ft) / rpm
適合排出ガス規制
N14-R 機械式
(PT:Pressure Time式)
261 (350) / 2,100 1,485 (1,095) / 1,200 不明
N14-R1 309 (414) / 2,000 1,654 (1,220) / 1,200
N14-R2 332 (445) / 2,000 1,898 (1,400) / 1,200
N14-R3 354 (475) / 2,100 1,932 (1,425) / 1,200
N14E-R 電子式
(CELECT Plus)
298 (400) / 2,100 1,969 (1,452) / 1,200 EPA Tier 2[注 1]
N14E-R1 309 (414) / 2,100 1,966 (1,451) / 1,200
N14E-R2 336 (450) / 2,100 2,000 (1,475) / 1,200
N14E-R3 386 (518) / 2,100 2,350 (1,733) / 1,200

主な搭載車種

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JRグループ

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C-DMF14HZ(NTA855-R1)
C-DMF14HZA(NTA855-R1)
C-DMF14HZB(NTA855-R1)
C-DMF14HZC(N14E-R)
C-DMF14HZD(N14E-R)
C-DMF14HZE(N14E-R)
  • JR東海キハ25形気動車(1000・1500番台)
C-DMF14HZF(N14E-R)
DMF14HZ(NTA855-R1)
DMF14HZA(NTA855-R4)
DMF14HZB(N14-R)

私鉄・第三セクター鉄道

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NTA855-R1
キハ8500系 - 後に会津鉄道へ譲渡。さらに一部はマレーシアサバ州立鉄道へ譲渡
TH3000形
N14-R系列
AT-400形
AT-500形・AT-550形
AT-600形・AT-650形
AT-700形・AT-750形
TH2100形・TH9200形
イセIII
NT200形
NT300形
この他、JR東日本からキハ40形を譲受した小湊鉄道北条鉄道も、カミンズ製エンジンに機関更新された車両を譲受したため使用者となった。

脚注

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注釈

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  1. ^ a b 2001年施行(原動機出力225 – 450 kWの場合)、規制値はNOx+NMHCが6.4 g/kWh、PMが0.2 g/kWh。2014年施行(原動機出力130 – 560 kWの場合)のEPA Tier 4 FinalではNOxが0.4 g/kWh、PMが0.02 g/kWhと大幅に強化されている。
  2. ^ DMF11HZ系(SA6D125H系)
  3. ^ DMF13HZ系

出典

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  1. ^ カミンズ公式サイト(日本語版)掲載「船舶用N855」(2022年5月24日閲覧)
  2. ^ a b c カミンズ公式サイト(日本語版)掲載「鉄道エンジン」(2022年5月24日閲覧)
  3. ^ RAIL PRODUCT GUIDE 2019” (PDF) (英語). 2019年10月19日閲覧。
  4. ^ 台灣康明斯動力有限公司” (中国語). 2020年1月7日閲覧。
  5. ^ 今野和市「更新用機関試験車両を運転して」『月刊ディーゼル』1988年12月号交友社
  6. ^ 日本の排出ガス法規制”. 一般社団法人 日本陸用内燃機関協会. 2022年1月29日閲覧。
  7. ^ a b 鉄道ファン』2020年9月号(No.713)付録「新車カタログ2020」p.2