2024年12月27日午後1時50分頃より、東京都千代田区の外務省にて、岩屋毅外務大臣の定例記者会見が行われた。
2024年最後の記者会見にあたり、岩屋大臣は就任からの3ヶ月を振り返り、来年に向けての抱負を述べた。
岩屋大臣は、「ウクライナ侵略や中東情勢、東アジアの安全保障環境など、本年も引き続き国際情勢は大変厳しい状況が続いた」とした上で、以下のように、自身の具体的な活動を強調した。
岩屋大臣「国際情勢が、このように激しく揺れ動く重要な局面で、外務大臣を拝命することとなった。
まず、日米同盟の深化と抑止力・対処力の強化、『自由で開かれたインド太平洋』実現のための同盟国・同志国との連携の強化、そして、グローバル・サウスとのきめ細かい連携の3点を柱として、外交活動を進めてきた。この間、既に対面での会談は50回を超え、電話会談は35回、実施してきた」
そして、岩屋大臣は、「世界の各地で、今なお戦禍が続き、国際社会の分断が深刻になる中で、我が国が戦後築いてきた信頼を土台に、来年も引き続き、『対話と協調の外交』を進めて、国際社会の平和と安定、繁栄に積極的に貢献してまいりたいと思う」と抱負を述べた。
続いて、岩屋大臣と各社記者との質疑応答となった。
他社の記者からは、「日中外相会談」、「中国が、沖縄県の与那国島の排他的経済水域内に設置したブイについて」、「戦後80年の歴史認識問題」、「石破総理の年始外遊」、「反捕鯨団体シー・シェパードの元代表ポール・ワトソン氏」、「日米拡大抑止に関するガイドライン」、「中国における邦人被害事案」、そして「米国次期政権(日米関係の展望)」などについて、質問があった。
この日は、岩屋大臣の日程の都合で、可能な限り、挙手した記者全員を指名できるようにするため、質問は「簡潔に短く」と、外務省側からすべての記者に協力要請があった。
IWJ記者も、準備していた質問を大幅に短縮し、岩屋毅外相が12月25日に発表した「中国人向けの査証(ビザ)発給に関する緩和措置」について、質問した。
IWJ記者「岩屋大臣は、(12月)25日、訪問先の北京で、中国人向けのビザ発給について、『富裕層向けの10年間有効な観光マルチ・ビザの新設』など、いくつかの緩和措置を発表されました。
改めて、なぜ富裕層限定なのか、また、保有資産額・年収など、富裕層の定義・基準などについて教えてください」
この『富裕層向けの10年間有効な観光マルチ・ビザ』の新設については、発表後、SNS上などで、『中国の金持ちに媚を売っている』、『金のあるなしで差別するなんて不平等だ』、また『10年間の滞在中に、ビジネスを始めたらどうするのか、なぜ就労ビザではないのか?』といった批判の声が上がっている。
岩屋大臣は以下の通り、説明した。
岩屋大臣「(12月)25日、第2回の日中ハイレベル人的・文化交流対話の機会に、今、ご指摘のあった団体観光査証の要件の緩和、それから、10年間有効の観光数次査証の新設を始めとする、中国人観光客に対する査証緩和措置を実施することを発表いたしました。
日中関係の基礎は、言うまでもなく、国民間の交流にございます。そうした観点から、中国人の訪日査証につきましては、これまでも、関連の措置を進めてまいりましたが、このたびの査証緩和措置によって、両国間の交流が一層促進される、円滑化される。そして、結果として、相互理解がさらに進む、ということを期待しております。
その上で、このたび発表した緩和措置は、団体観光客に対する滞在可能日数の延長、15日から30日へということ、それから、高齢層に対する申請書類の簡素化などを含むものでございまして、今までは、在職証明、どこでお仕事をしていますか、という証明を求めていたりしていたのですが、65歳以上の高齢層になりますと、それは不要になるという考え方です。
したがって、一定層に限った優遇措置ではございません。
そして、今回新設する10年間有効の観光数次査証につきましては、何も10年間にわたって無制限に日本滞在が可能になるということではございませんで、1回の入国につき認められる滞在期間は、最長で90日でございます。
また、滞在期間中は、あくまでも観光ですから、報酬を伴う活動を行うことは認められないというものでございます。
今回の査証緩和措置は、先刻申し上げましたように、一定層に限った優遇措置ではありません。我が国の査証については、治安上の影響などの観点から、中国に限らず、一定の経済要件を設けておるところでございますので、そこは御理解をいただきたいと思います」
岩屋大臣の説明によると、10年有効のマルチビザは、活発な消費活動が期待される富裕層限定というわけではない、ということである。
一方で岩屋大臣は、治安上の懸念から、「一定の経済要件」を設けている、とも発言している。しかし岩屋大臣は、IWJ記者が質問した「富裕層の定義・基準」については、その具体的な内容を回答しなかった。
日中の国民同士の交流が活発になることは、ウクライナや中東でエスカレートしつつある戦禍が、東アジアに及ばないように抑止する上でも有意義なことであると思われる。
しかし、「一定の経済要件」についても、少なくとも基本的な方針だけでも明示すべきではないだろうか。
このたびの岩屋大臣の訪中に関する詳細については、外務省ウェブサイトの以下の情報をご参照いただきたい。
- 第2回日中ハイレベル人的・文化交流対話(2024年12月25日)
- 岩屋外務大臣臨時会見記録(2024年12月25日14時36分於:中国・北京)
- 岩屋外務大臣の中国・北京市在留邦人との懇談会(2024年12月25)
- 岩屋外務大臣と劉建超・中国共産党中央対外連絡部長との夕食会(2024年12月25)
会見内容の詳細については、全編動画を御覧いただきたい。