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【IWJ号外】ウクライナ劣勢顕著となり、ポーランド軍をウクライナに送り込む口実として、ポーランドとウクライナは「ロシアがウクライナの原子力発電所(NPP)を攻撃する」という偽旗作戦に打って出る!? 2024.10.3

記事公開日:2024.10.3 テキスト
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(文・IWJ編集部)

特集 ロシア、ウクライナ侵攻!!

 モスクワを拠点としながら、多極化への世界的な体制移行を専門に研究している米国の政治アナリスト、アンドリュー・コリブコ氏が、ポーランドのドゥダ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナ領内の原子力発電所に対する「偽旗作戦」を企んでいる可能性がある、と警告しました。

 コリブコ氏は9月27日、『サブスタック』で「ウクライナの原子力発電所で、ドゥダ大統領とゼレンスキー大統領が偽旗作戦による挑発行為を企てている可能性がある」と題した記事を出しました。

 コリブコ氏によると、ウクライナとポーランドは、「ウクライナ領内の原子力発電所に対する偽旗作戦」を口実として、ポーランド軍をウクライナ領内に派遣することを企てている、と分析しています。

 ゼレンスキー大統領は、9月25日、国連総会における演説で「ロシアがウクライナ国内の原子力発電所の攻撃をこれまで以上に計画しており、『核の大惨事』が起きる危険がある」「(標的になっているのは)原子力発電所だ。安全が守られなくてはならない」と、強く訴えました。この発言は、偽旗作戦のための伏線なのでしょうか?

 26日付『BBC』は、しれっと「ロシア軍は侵攻開始から間もなく、ザポリージャ原発を制圧。同原発への攻撃はその後も相次ぎ、ロシアとウクライナの双方が相手の責任を非難し合っている」などと書いています。

 ロシア軍が制圧している原発を、同じロシア軍が攻撃しなければならない理由など、ありえないことは誰でもわかる話です。こうしたくだらない嘘が、2022年からずっとまき散らされていますが、改めて、こんな嘘を『BBC』がまき直すのは何のためなのか、と疑わしくなります。『BBC』の記者やスタッフだって、実際にはそんな馬鹿げたことは起こり得ないとわかっているはずです。

 現在、ウクライナ軍による、ロシア領内のクルスク侵攻は、無惨な敗北を重ね、多くの兵員と兵器・弾薬・装備などを失っています。クルスク侵攻に精鋭部隊を投入したため、ウクライナの領土の守備を担うウクライナ軍部隊は弱体化し、東部戦線では、ロシア軍の優勢が明白となっています。

 ロシア軍が、ウクライナ東部ドンバス工業地帯にある、要塞ヴフレダルの中心部に到達した、と『ロイター』が、10月1日付で報じました。

 SNSに投稿された映像には、爆撃された高層ビルの屋上からロシア兵が旗を振り、屋上の金属の尖塔に別の旗を掲げる様子が映っており、ウクライナで人気のある戦争状況を伝えるサイト『ディープ・ステート』が公開した戦闘映像には、ヴフレダル全域にロシア軍が展開している様子が映し出されていたことから、『ロイター』はこの情報を信頼性が高いと判断しています。

 ヴフレダルは、ドネツク州の西側エリアに位置する、高地の要衝です。

 ヴフレダルの防衛にあたってきたウクライナ軍第72機械化旅団は、撤退命令を受けていないものの、ロシア軍に包囲され、非常に困難な状況にあるとみられています。

 10月2日付の日本の投資サイト『インベスティング』は、ロシア軍がヴフレダルを完全に支配すれば、砲撃のための有利な高地を得てさらに優位となり、鉄道網を活用して物流能力を向上させ、地域でのさらなる進軍を容易にする可能性があると指摘しています。

 ウクライナ軍が劣勢になればなるほど、何が何でもこの紛争を継続し、長期化させ、ウクライナがどうなってもかまわないから、ロシアを少しでも弱体化したいと願う一部の西側諸国の首脳らは、さらに強力で危険な手段を用いざるを得ません。

 ゼレンスキー大統領は、9月25日、バイデン大統領と会談し、新たな「勝利計画」を示して、米英など西側諸国の長距離兵器を用いてロシア領内深部を攻撃する許可を要請しましたが、少なくとも表向きは、バイデン大統領はゼレンスキー大統領の要請を受け入れたとは、発表しませんでした。あくまでも、表向きは、です。

 この西側諸国の長距離兵器を用いたロシア領内深部攻撃に対して、プーチン大統領は、9月26日、ロシアの核抑止ドクトリンの更新(適用範囲の拡大)を、公に発表しました。

 それは、ウクライナが西側諸国(核保有国を含む)の長距離兵器を用いてロシア領内深部を攻撃すれば、それは支援している西側諸国も、ロシアによる核攻撃の対象となりうることを明示するものでした。

 一方、10月1日に、ストルテンベルグ氏の後任として、NATO事務総長に就任したマーク・ルッテ氏は、早速、ウクライナが西側から供給された武器を使用してロシアの領土の奥深くに攻撃することを許可することを、支持すると表明しました。

ルッテ事務総長「国際法によると、この(自衛の)権利は国境で終わらない。つまり、ウクライナの自衛権を支持することは、侵略者の領土で合法的な目標を攻撃することも可能であることを意味する」

 ただし、ルッテ事務総長は、NATOとしてではなく、「各加盟国次第」だとしています。ストルテンベルグ前事務総長の方針をそのまま継承するものでした。NATO加盟国内部で、全加盟国一致の賛成を得られなかったものと思われます。

ルッテ事務総長「最後に、ウクライナへの支援を決定するのは、各同盟国次第である。それは、私次第ではない。これは、ウクライナとの関係における個々の同盟国のためのものである」

 「自衛の権利は国境で終わらない」「侵略者の領土で合法的な目標を攻撃することも可能」という論理は、日本における敵基地への先制攻撃論を正当化するロジックとなります。

 ということは、日本の隣国で、「仮想敵国」である、中国、北朝鮮、そしてロシアは、いずれも核保有国であり、このロシアの核使用ドクトリンを参考にして、核使用のガイドラインを定めれば、敵基地先制攻撃論にのっとり、仮想敵3ヶ国のどこにミサイルを撃ち込んでも、報復攻撃として、通常兵器のミサイルだけでなく、核ミサイルが飛んでくることも覚悟しなければならないことになります。

 これは、他人事ではなく、日本にとっても重大な問題であり、ロシアの核ドクトリンの変更は、真剣に受けとめて考えるべきテーマです。

 ポーランドは、ウクライナ西部に相当する領土は、かつてポーランド領であったという歴史を忘れてはいません。ウクライナ側だけではなく、ポーランドにもウクライナ西部に軍を進駐させたい、という動機があります。

 ウクライナ軍の劣勢が顕著となり、西側諸国による長距離兵器を使ってのロシア領内深部への攻撃の承認も遅々として進まない中、ポーランド軍をウクライナに送り込むための偽旗作戦が実施されるリスクは否定できません。

 コリブコ氏による警告が、実際に起こるのかどうか、現段階ではまだわかりませんが、ウクライナ紛争を一気にNATOとロシアの直接戦争にエスカレートする可能性を注視する必要があります。

 特に原発への本格的な攻撃があった場合、それが「偽旗作戦」であるかどうかの見きわめはきわめて重要です。

 以下に、コリブコ氏の記事を仮訳します。どうぞお読みください。


ウクライナの原子力発電所で、ドゥダ大統領とゼレンスキー大統領が偽旗作戦による挑発行為を企てている可能性がある
2024年9月27日 アンドリュー・コリブコ

 ここ1週間にわたる両者のお互いの発言を補い合うような語り口と、それが吐き出された具体的な状況は、ポーランド軍がウクライナに介入する口実を作るために、両者が共謀していることを強く示唆している。

 ポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領は、ロシアがリヴネ州とフメリニツキー州にあるウクライナの原子力発電所(NPP)を攻撃した場合、「即座に介入し、専門家を派遣する必要がある」と宣言した(※1)。

 これは、ポーランドの外相ラデク・シコルスキー氏が9月初旬に、ポーランドがこれらの施設を保護すべきだと提案したことに続くものであり、その分析はこちらを参照してほしい(※2)。

 また、ロシアによるウクライナNPP(原子力発電所)への攻撃に関する、ゼレンスキー大統領の恐怖をあおるような発言(※3)とも合致している。これらの動きは、ドンバス戦線の悪化の中で展開されている。

 ロシアは、こちらで説明されている(※4)ように、攻略できれば戦況を一変させる可能性がある要衝都市ポクロフスクへの接近を続けている。

 タカ派的なチェコ大統領(ペトル・パベル大統領)でさえ、ウクライナが自国領だと主張する領土の一部は、「一時的」にロシアの支配下に残ることを受け入れなければならないと言い始めている(※5)。

 英国の国防相も、ウクライナに英国が提供できるものをすべて提供した後に、最近、自国の「すり減った」備蓄について不満を漏らした(※6)。キエフにとっては、すべてが非常に悪い方向に向かっている状況である。

 しかし、西側諸国は、戦線の崩壊を回避するための停戦交渉の好機を活かす代わりに、ウクライナがロシアの奥深くまで攻撃できる長距離兵器を使用することを容認するという、深刻なエスカレーションを検討している。

 西側諸国は、ロシアの条件(※7)に沿った停戦を受け入れるよりも、西側の条件に沿う形で「エスカレートして、(その後で)デ・エスカレート(緊張を緩和)する」方が良いと計算している。

 しかし、これは危険な賭けである。なぜなら、こちらで説明されている(※8)ように、状況に次第によっては、ロシアからの核報復を誘発する可能性があるからだ。

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