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【IWJブログ・特別寄稿】スクープ!「そんなこと、米山候補が考えれば?」――新潟県知事選、現地入りした自民・二階俊博幹事長が衝撃の無責任発言!原発事故後避難のバス運転手手配に関心なし!? 2016.10.14

記事公開日:2016.10.14取材地: テキスト
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(取材・文・写真:横田一)

 10月16日(日)の投開票に向けて、いよいよ最終コーナーを曲がった新潟県知事選挙。当初、「圧勝」と見られていた自公推薦の森民夫・前長岡市長に対し、「泉田路線の継承」を掲げる野党3党(共産・社民・生活)推薦の米山隆一候補が、「原発再稼働反対」を願う市民の広範な支持を得て、怒涛の追い上げを見せている。

 これに焦ったのが、自民党本部である。10月2日には、二階俊博幹事長の指示により、片山さつき参議院議員が新潟入り。地元の新潟1区選出の石崎徹議員らとともに応援演説をしたそして10月12日には、二階幹事長本人が新潟入りし、森候補の選挙事務所や地元の建設業協会などを訪れ、選挙戦における引き締めを図った。

 今回の新潟県知事選の最大の争点は、新潟県が抱える柏崎刈羽原発の再稼働である。小泉内閣、福田内閣、麻生内閣で原発を所管する経済産業大臣を務めた経歴を持つ二階幹事長は、柏崎刈羽原発の再稼働についてどう考えているのか。新潟現地で取材を重ねているジャーナリストの横田一氏が、二階幹事長を直撃した。(IWJ編集部)

自民党・二階俊博幹事長が新潟入り!「森県政が誕生すれば、原発の安全確認を一生懸命頑張ってくれる」~しかし、いったいどうやって!?

 四選出馬を辞退した泉田裕彦新潟県知事が10月13日午後、官邸で安倍晋三総理と面会した。面会に同席した二階俊博幹事長によると、原子力防災の課題(問題点)を指摘している泉田知事に対して、安倍総理が「当然、力を借りることもある。よろしくお願いしたい」と述べたという。

 このやりとりだけを見ると、あたかも安倍政権が原発再稼動に慎重な姿勢に転じたかのような印象を受ける。しかし、ゆめゆめだまされてはいけない。実はこの日の前日の10月12日、自民党推薦の森民夫候補のテコ入れのために、新潟県内の企業や団体回りをした二階幹事長を、現場において筆者は直撃取材している。その取材を通じて透けて見えてきたことは、原子力防災にまるで無関心の、原発再稼動ありきの姿勢だった。

 12日12時半すぎ、森民夫候補の選挙事務所を訪問して関係者を激励した二階幹事長が、囲み取材に応じた。幹事社からの「この県知事選は原発の問題、再稼動の問題が争点になっていますが、それについてはどのようにお考えでしょうか」との質問に対して、二階幹事長は次のように答えた。

 「原発の問題については、それぞれ関係者の皆様で協議をされたり、また研究されたり、また現場を見に行ったりされていると思いますが、私は森県政が誕生すれば、これだけ原発の問題が囁かれている選挙でありますから、必ず、このことを第一番に取り上げて、安全の確認といった面で、一生懸命頑張ってくれるであろうと思います。

 私も経済産業大臣を3回もやったものでありますから、原発の問題の重要性はよく承知しているつもりであります。安全を確保する、安全を確認することに対して、みんながご心配をされているのは無理もないことです。これに対して、新しい県政の取り組みに全力でバックアップをしたいと思っております」

▲森民夫候補の選挙事務所を訪れた二階俊博幹事長――10月12日

新潟で二階幹事長を直撃!「避難計画」について聞くと、「そんな問題(バスの運転手確保)は相手候補が考えればいい」と無責任発言!

 あまりに曖昧で抽象的な回答なので、米山隆一候補が問題視している原発事故時の避難計画の杜撰さについて、筆者が二階幹事長を直撃した。

――相手候補(米山候補)は「原子力防災が不十分だ。避難計画に問題がある。再稼動は認められない」と言っているのですが、二階幹事長のお考えはいかがでしょうか。

二階幹事長「私がここに来て、『再稼動がいいとか悪いとか』と論評する必要はないと思います。ここの土地の新しく知事になった人がみんなで考えることでありますが、『再稼動が安全か安全ではないか』ということを念頭に対応しているのは当り前のことで、新潟だけの問題ではない。この問題は日本全体に関係する問題ですから、そこは慎重の上にも慎重に、二重三重の安全を考えて対応していきたいと思っております」

――「原発事故の時に放射能被曝の恐れがあるところに行くバスの運転手が確保できない」と相手候補は言っているのですが。その点はいかがですか。

二階幹事長「それは、相手候補が考えればいいことです」

――え!? これは日本全国の避難計画に関する問題じゃないですか!?

二階幹事長「いやいや、そんな難しいことを言って。あなた、計画案は持っているの?」

――「避難計画は不十分ではないか」と。バスの運転手がいなければ、(住民を)避難させられないじゃないですか。

二階幹事長「そんな問題は政府が考える。そういうことに万が一遭遇した場合には、日本国をあげて対応しますよ」

――政府は考えていないじゃないですか。(バスの運転手を)どうやって確保するのですか

二階幹事長「政府が考えていないということはありませんよ」

 いやはや、経産経験者とは到底思えない、場当たり的で、おそろしいほどの無責任な発言である。原発事故の避難時に、バス運転手の健康の問題は、米山候補が考えればいいことだと言い放ったのだ!

 ということは、自分が応援する森民夫候補やその陣営、あるいは自民党は「米山まかせ」にして、自分たちでは考えていないということを、満天下に宣言したようなものである!

 あげくの果てに、とってつけたように「政府が考える」などと言う。考えていたら、はじめから県民に説明しているはずだ。どこにもそんな避難計画がないから問題になっているのだ。「政府が考える」などというのは、口から出まかせで、「国民の命と安全を守る気があるのか」と疑いたくもなる。

「シン・ゴジラ」に描かれた「ヤシオリ作戦」は夢のまた夢~日本の原子力防災のトホホな現実

 泉田知事や米山候補が問題しているのは、原子力災害時の避難計画が「絵に描いた餅」だということだ。

 福島第一原発事故では、放射能被曝の恐れのある作業遂行の際、東電の高齢者社員からなる「決死隊」が結成されたが、日本ではいまだに放射能被曝のリスクをおかして現場に行く人員をどう確保するのかが決まっていない。周辺住民の避難にはバスを使うことになっているが、泉田知事はこう問題提起をしている。

 「運転手に『職務で行け』という命令を出せるのでしょうか。本人の了解があれば、行ってもいいのでしょうか。このことも詰めないといけないはずです。アメリカでは誰が行くのかが決まっているが、日本では決まっていないのです」

▲泉田裕彦・新潟県知事

 福島第一原発事故と重なり合う場面が多々ある映画「シン・ゴジラ」では、放射能被曝の恐れがあるゴジラ凍結作戦(ヤシオリ作戦)実施のために、決死隊が結成される。しかし日本の現実は、原発周辺住民を避難させるバスの運転手をどう確保するのかが詰められないまま、安倍政権は原発再稼動に突き進んでいるのだ。

▲映画「シン・ゴジラ」公式HPより

 嘉田由紀子・前滋賀県知事も「原発事故時のバスの運転手の確保には、放射能被曝で健康被害が出たときの補償を含めた法整備が不可欠なのに、安倍政権は取り組もうとしていない」と厳しく批判している。

 安倍政権のもとでは、本当にシビアアクシデントが起こったとき、おそらく多くの人の命が奪われかねない。「シン・ゴジラ」は「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」というキャッチコピーを掲げている。

 悪ノリした自民党はこの映画を、安倍政権を礼賛する映画だと勘違いして、「シン・ゴジラを観ろ」とあちこちで吹聴しているようだが、明らかに、映画で描かれる日本政府の姿は「現実」ではなく、「過度に美化された理想」「願望」あるいは「幻想」である。

 避難計画の杜撰さを放置し続けた「職務怠慢」の安倍総理が突然、原子力防災について警告を発してきた泉田知事と会って、「力を借りることもある」と言っても、県知事選向けのリップサービスにしか映らないのではないか。

再稼働については「国が責任を持って判断をする」――森候補は「県が独自に検証して国にも東電にも『ノー』を言える」と表明しているが、それを真正面から否定して、国の優位を宣言した二階幹事長

 二階幹事長の囲み取材では、原発問題に関する質問が集中したが、いずれも具体性に欠く回答に終始した。

――経団連との会合で「電力業界、オール日本で対応する」と言いましたが、森候補に再稼動を期待されているのでしょうか。

二階幹事長「別に期待も何もしていないですよ。皆さんが選んだ人が、県議会というものがあるわけですから、県議会でもいろいろご相談をなさって、その上でどうするこうするという相談をすることになると思います。いま、森候補にお願いすることは何もありません。ただ、立派な新潟県を作っていただきたい。新潟の歴史、新潟の将来に対して、しっかりとした対応をしていただきたい」

――森候補は「県で独自に検証をして、国にも東電にも『ノー』を言うこともある」と言っているのですが、「ノー」と言われた場合にはどうされるのですか。

二階幹事長「知事の意見を十分に聞いた上で判断しますが、まだ知事になられていない人がなられたら、また相談があれば、冷静に判断をしたいと思います」

――「再稼動については国が判断する」ということでよろしいでしょうか。

二階幹事長「私は少なくとも『国が責任を持って判断をする』と思っております」

▲新潟県内の土地改良事業関係者向けに講演する二階俊博幹事長――10月12日

 原子力防災の不備を具体的に指摘しないまま再稼動反対の可能性を口にし始めた森候補、経産大臣経験者なのに抽象論しか語らない二階幹事長、そして県知事選の真最中に急に原子力防災について関心を示した安倍総理――。

 こうした素早く言動を変えるのが得意な陣営を信用するのか。それとも、原子力防災について具体的に語る候補者に未来を託すのか。新潟県知事選は、いよいよ10月16日(日)に投開票が行われる。

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