「大逆事件とヘイトスピーチ」と題した講演会が1月26日、参議院議員会館で行なわれ、ジャーナリストの安田浩一氏が登壇した。
安田氏は、1910年に明治天皇の暗殺を企てたとして12人の社会主義者が処刑された大逆事件と、ヘイトスピーチが蔓延する現在の社会背景を重ね合わせ、「もっともあってはならない暴力だ」と主張。ヘイトスピーチに関する法整備の必要性について言及した。
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(IWJ・前園由美子)
特集 IWJが追ったヘイトスピーチ問題|特集 戦争の代償と歴史認識
※2月2日テキスト追加しました!
「大逆事件とヘイトスピーチ」と題した講演会が1月26日、参議院議員会館で行なわれ、ジャーナリストの安田浩一氏が登壇した。
安田氏は、1910年に明治天皇の暗殺を企てたとして12人の社会主義者が処刑された大逆事件と、ヘイトスピーチが蔓延する現在の社会背景を重ね合わせ、「もっともあってはならない暴力だ」と主張。ヘイトスピーチに関する法整備の必要性について言及した。
記事目次
■ハイライト
※以下、発言要旨を掲載します
福島みずほ参議院議員「通常国会が始まりました。150日間、6月24日までの予定です。この国会、4月26日に統一地方選挙が終わったら、一挙に戦争法案が出てくると言われています。それを食い止めたい。
メディアに対するバッシング、歴史認識を変える歴史修正主義やいろいろな動きが強まって、これを総体としてどう変えていくのかと思っています。
何故、大逆事件か。1月24日、幸徳秋水さんたちが処刑されました。100年後の国民・市民がこのことを理解してくれるように――という文章を読み、私たちは無念のうちに殺された人たちをきちっと検証し、何をやろうとしたのか、大逆とは何だったのかということを共有をしたいと考えています。
大逆事件そのものは、いわゆる主義者に対する『弾圧』だったのかもしれません。今日のヘイトスピーチは、主義者に対する弾圧とは少し違うかもしれませんが、様々な理由をつけて、まつろわぬ人々に対して排除し、弾圧をしていく構図は全く同じではないかと思っています。
差別と排除と弾圧と抑圧。もの言えないということが進んでいる社会の中で、もう一回、大逆事件のこと、そして大逆事件とヘイトスピーチということを是非、共有して一緒に考えたい。大逆事件、いろいろなところで集会が開かれておりますが、私は議員会館でやることに大変意味があると考えています」
安田浩一氏(以下、安田・敬称略)「21世紀のこの時代に誰かを敵として認知し、みんなで吊るし上げ、攻撃し、そして放逐しようとする動きが今、確実に存在するわけです。これは私が最近、取材しているヘイトスピーチだけの問題ではなくて、あらゆる場所でそうしたものが起きているわけです。
犠牲者が、あるいは何かしようとする者が、失敗を咎められる。敵として認知され、バッシングを受ける。それだけではないですね。朝日新聞の記者が、かつて書いた記事を元に家族までもが脅迫される。
昨年(2014年)、私は生活保護に関する取材をしていました。生活保護バッシングに関する取材ですけれども、生活保護を受給しているだけで、さも敵であるかのように、あるいは『非国民』、『反日』という言葉をもって、批判、非難、中傷されるという現象も数多くあったわけです」
安田「生活保護に関して言うならば、昨年少し大きな事件がありました。大分県在住の中国籍の女性。永住権を持った中国人女性ですけれども、彼女が生活保護を申請したけれども、大分市がそれを却下してしまった。
この決定が違法であるとして、女性は処分取り消しの訴えを2008年に起こしていたわけです。第一審では、女性側は敗訴したわけですけれども、二審で女性は勝訴した。そして昨年(2014年)、最高裁がこういう判決を下したわけです。
『生活保護法が対象とする国民というものは、日本国民を意味し、外国人はそれに合致しない』
外国人への支給は憲法違反だといった文言を用いた政府バッシング、外国人に対するバッシングだと僕は思っているわけですけれども、こうした状況が現実に起きたわけです。生活保護受給者の中で、外国人受給者の占める割合なんて3%もないわけです。97%は日本人が受給している。
であるにもかかわらず、外国人が受給していることが、そもそも福祉の危機であるというようなもの言い、あるいは外国人が福祉にタダ乗りしていいのかという議論。これは何もネットの中でわけの分からない人々だけが言っているんじゃないですよね。
永田町で与党の議員がそうしたことを大声で唱えているという現実。そうした人々が一部で強い支持を集めているという現実もまたあるわけです。
憤りを覚えると同時に、しかしこの現象に沈黙を強いられ、何も言えなくなっている人々がいるということ。このことが、それ以上に深刻なことだと思っているんです」
(…会員ページにつづく)