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「省エネは我慢大会ではなく、エネルギー効率を上げる技術だ」 〜講演 ラウパッハ=スミヤ・ヨーク氏 2014.5.23

記事公開日:2014.5.23取材地: 動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 「なぜ、ドイツで再生可能エネルギーが人気なのか。経済力の再生も伴うからだ。この現象はヨーロッパのみならず、世界中のうねりになっている」──。

 2014年5月23日、京都市下京区の事務機のウエダビルにおいて、きょうとグリーンファンド総会記念講演「自然エネルギー100%をめざすドイツの戦略」が行われ、ラウパッハ=スミヤ・ヨーク氏(立命館大学教授)が、ドイツの再生可能エネルギー事情、地域産業、NPOなどの関わりと可能性について解説した。

 再生可能エネルギーと地域経済の専門家であるラウパッハ=スミヤ・ヨーク氏は、ドイツのエネルギー転換が成功しつつある実態を、データや実例を挙げて分析。「再生可能エネルギーに関する日本の報道は、偏っている」と語気を強めた。

■全編動画

  • 講演 ラウパッハ=スミヤ・ヨーク (Jörg Raupach-Sumiya) 氏(立命館大学経営学部教授、脱原発をめざす首長会議アカデミック・アドバイザー)

不誠実でプロパガンダ的な報道が多い日本

 ラウパッハ=スミヤ・ヨーク氏が登壇、「ドイツの再生可能エネルギーへの転換は成功している。しかし、このドイツの試みについて、日本では不誠実でプロパガンダ的な報道が多い」と異議を唱えて、講演の口火をきった。

 まず、ドイツでは電力全体の24%(現在25%)を再生可能エネルギーが占め、世界第4の経済規模で繁栄していることを説明。「その内訳は、風力8.4%、バイオマス6.7%、水力3.2%、太陽光4.7%」と述べ、一方で、コスト、安定供給、環境負荷についての論争があることも認めた。

 まず、1番目の争点となる価格については、「2000年から電気料金は確かに上がった。3人世帯家庭の平均で、1キロワットあたり13.94セント(約0.14ユーロ=10円)から、2倍の28.5セントになり(2013年)、3人世帯のエネルギーコストは月間約350ユーロ(約5万円)。しかし、ガソリン、暖房用重油が1〜2番を占め、再生可能エネルギーのための賦課金は全体の5%にすぎない」と説明した。

再エネ過剰供給で電力スポット価格が下落

 ラウパッハ=スミヤ・ヨーク氏は、固定買取金額と賦課金の変動のグラフを示し、固定電力買取金額は2倍に、消費者が負担する賦課金は5倍になったわけを、「約2000社の企業が全電力の半分近くを消費している、という理由からの、政策的な賦課金免除の優遇によるものだ」と話す。

 そして、再生可能エネルギーの生産供給過多で、電力卸のスポット価格が半分まで下落。そのため、電力買取会社への補填金の問題があり、賦課金が値上がりしたことを説明し、「電力卸売り価格が下落しているにもかかわらず、料金が下がらないのは謎だが、企業が明かさない。どこかが儲けている」と述べて、グレーな部分があることも認めた。

 「なぜ、再生可能エネルギーが安いのかというと、風や太陽光はタダだから。今時点での電力代は高いが、自分たちの子どもの時代には、今の投資の恩恵が得られる」。

 このように述べたラウパッハ=スミヤ・ヨーク氏は、「今、ドイツの大手電力会社は経営が悪化。東電のようなRWEは大赤字だ。なぜなら、再三述べるが、再生可能エネルギーが卸価格を下げているからだ」と強調した。

市民と地域が担うドイツの再生可能エネルギー

 続いて、再生エネルギーを中心とした新電力システム、市場の設計、構築に移り、「202X年のベースロード電源は、足りない時だけ稼働できることがキーポイントになる。原子力は稼働と停止を迅速にできないから、論外。ベースロード電源は、ガスか蓄電になるだろう」とした。

 そのための、政府のエネルギー政策目標では、2020年35%、2030年50%、2050年に80%の達成を目指すという。2014年4月8日、閣僚決定で買い取り法を改定し、コストの問題、数量目標、省エネ促進、スマートグリッドなどの新課題を取り込み、動き出していることを示した。

 「ドイツの再生可能エネルギーは、市民や地域が担っている。設備所有権では、国内トップ4の電力会社はその5%しか占めず、一般市民(35%)、農家(11%)、一般企業(14%)で維持。再エネ自給率100%を目指す地域は138ヵ所、2160万人である」と語った。

再エネ100%を目指す100万都市ミュンヘン

 ラウパッハ=スミヤ・ヨーク氏は、ライン・ヒュンスリュック地域とミュンヘン市の、再エネに取り組む現状を説明した。

 2020年までに、温室排出ガス0%を目指すライン・ヒュンスリュックは、すでに電力自給率149%。ゴミで地域暖房を生産し、2050年までに、年間3億ユーロの燃料購入費の90%を地域内で補えるようにする計画を立てている。

 次に、ミュンヘン市経営の再生可能エネルギー会社SWM社を紹介。1兆円規模の投資で、2025年までに世界初の100万人都市での電力自給率100%を目指す。そのSWM社は、現在、従業員7800人、2012年の売上げ6000億円。また、市民活動団体が作ったグリーン・シティ・エナジー(GCE)という開発投資会社の躍進についても言及した。

一番大事なのは省エネ・造エネの明確な目標設定

 続いて、朝日新聞の記事(2014年5月11日京都版)に掲載された、(ヴッパタール気候・環境・エネルギー研究所のシニア・アドバイザー)ペータ・ヘンニッケ博士の、再生エネ100%自給率を目指すための設計図について話した。

 その設計図とは、省エネ・造エネの明確な目標設定のことだという。「できない理由を探すのではなく、できるようにするやり方を探すこと。リソースの棚卸し。エネルギー政策は街づくり、地域経済づくりだ。モノづくりではなく、サービスや事業運営が儲かる。ハードよりソフトに投資すること」。

 また、ゾーニングで地域への投資の環境整備をすること、市民相談窓口の設置、地域・市民の意見の合意形成、ステークホルダーのネットワークづくり、啓蒙活動と人材育成の必要性などの要点を列挙した。

 最後に、「なぜ、日本では(太陽光発電に利用できる屋根のデータを調査して)屋根手帳を作らないのか。また、省エネは我慢大会ではない。快適な空間を作るため、エネルギー効率を上げるための技術なのだ」と主張。「すべては、志(こころざし)次第だ」と述べて、講演を締めくくった。

まだまだ法規制の整っていない日本の再エネ

 質疑応答に移り、「自然エネルギーによる発電を、京都で行うとしたら何がポイントになるか」という質問が寄せられた。ラウパッハ=スミヤ・ヨーク氏は「京都の冬は寒い。エネルギー効率という点から言えば、まず建物の断熱性を上げること」と述べた。さらに、「特に、風力を見直すべき。日本では風力発電に抵抗があるようだが、これは不可欠な発電方法だ。日本人は(風車が並ぶ)景観を問題にするが、電柱や鉄塔が並ぶ景観については無視する」と話した。

 参加者が「太陽光発電設備は減価償却が悪い。水力は水利権の壁などいろいろと法律の制約があり、企業が参入できない。風力発電も、建築基準法の高さ制限などの改正が必要だ」と、民間が簡単に参入できない実態を指摘した。

 司会者が「できない理由はたくさんあるが、それを並べていても進展はしない」と応じ、ラウパッハ=スミヤ・ヨーク氏は「ドイツでも風力発電に対して鳥の被害が指摘され、環境保護団体などによる大きな反対運動もある。また、騒音よりも影が問題になっている」とデメリットも言い添えた。

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「「省エネは我慢大会ではなく、エネルギー効率を上げる技術だ」 〜講演 ラウパッハ=スミヤ・ヨーク氏」への1件のフィードバック

  1. 渋谷 より:

    直接内容には関係ないコメントです。
    内容は、良かっとおもうが、声が聞き取りにくかった。工事のような周りの雑音もあった。
    氏の講演を改めて、聞き直したいです。

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