レビュー
どっちが安い? ティファールvsガスコンロ、トイレの温水洗浄機の電気代は!? ――自宅の節電を考える(その4)
500Wの電子レンジの消費電力は500Wではなかった!!
2021年2月12日 07:05
テレワークが長期化しそうなサラリーマンや自宅で仕事をしているフリーランスが気になる電気代。第1回、第2回は暖房費を、第3回はパソコン関連の電気代についてお伝えした。最終回はさまざまな家電製品の電気代を実測していこう。
電気代が10倍に!? 数か月で激変したエネルギー価格
電気ケトルvsガスコンロ、湯沸かしにかかるコストはほぼ同じ!?
電気ポット、お湯をよく使うのなら保温がお得
冬は電気代がかさむトイレの温水洗浄便座
24時間、365日稼働する冷蔵庫は設置環境で節電
500Wの電子レンジ、消費電力が実は980Wだった
炊飯器はまとめて炊くとお得?
テストで使用した温度データロガーやワットチェッカー
長期間のログが保存できるUSB温度データロガー
遠隔監視、湿度もクラウド保存できる機種も
Bluetoothワットチェッカーは便利だけど
電気代が10倍に!? 数か月で激変したエネルギー価格
最終回なので、これまで掲載した内容の変更点をお知らせしておこう。まずは第2回に記載した灯油の価格。筆者が近所のガソリンスタンドで昨年11月30日に購入した灯油は18Lが1332円で単価74円、今年1月12日は1530円で単価85円に上昇した。これにより1円あたりのエネルギーは118.2kcalから102.9kcalに減少、電気に対する比率は3.44倍から2.99倍に下がった。
灯油代も上がれば電気代も上がる。大手電力会社10社のうち北海道電力、沖縄電力、北陸電力以外の7社が3月の電気料金の値上げを発表した。値上げ幅がもっとも大きいのは中部電力。燃料費調整単価が2月の-6.17円/kWhが3月の-5.80円/kWhとなり、0.37円/kWhの値上げとなる。家庭の平均モデル(260kWh)では96.2円の値上げだ。液化天然ガス(LNG)が高騰し、LNG依存度の高い電力会社が値上げとなった。
電気料金の算出方法で、「燃料費調整は原油、液化天然ガス、石炭といった燃料の価格変動を反映したもので、5か月前から3か月間の価格が反映される」と記載した。12月のLNGの高騰が3月の値上げに影響したということは4月、5月も影響を受けるということだ。1月以降も高騰が続いているようなので、6月以降も電気代の変動に注意したい。
大手電力会社よりも深刻なのは新電力だ。第2回の記事で電力会社や電力プランは選択でき「低価格なプランに切り替えると電気代を減らすことが可能かもしれない」とお伝えしたが、12月中旬から始まった日本卸電力取引所(JEPX)の電力取引価格の高騰は1月には10倍以上の価格となった。どういうこと?
ザックリとした話しは、例えば11月までは5~10円/kWhで電力を仕入れ、20円/kWhでユーザーに販売していた新電力の会社の仕入れ値が1月には10倍以上になった。150円/kWhで仕入れた電力を20円/kWhで売れば大赤字。市場連動型プランで契約していたユーザーは電気代が10倍以上に跳ね上がるということだ。
リミックスポイントが1月12日に発表した「卸電力取引所(JEPX)の価格高騰にともなう電気料金に関する重要なお知らせ」に掲載されたJEPXの市場価格推移のグラフは衝撃的だった。
新電力の1社、楽天でんきは「新規申し込み一時停止の案内」を出すなど、各社が対応に追われている状況だ。LNGの供給不足は中国が石炭発電からLNG発電にシフトする影響もあって、長期化あるいは恒久化する可能性がある。大手電力会社はさらなる値上げへ、新電力の中には撤退が避けられない会社もあるというニュースも目にするので、電力会社の見直しは慎重に検討をしていただきたい。
加えて1月は複数の大手電力会社で電力使用率のピークが99%と、東日本大震災以降でもっとも危機的状況となったらしい。大規模停電の一歩手前だ。電気料金の値上げだけではなく、朝夕の電力が逼迫する時間帯のピークシフトも意識していただきたい。
以上が暖房コストや電気料金に関するアップデート情報だ。もしかしたら読者の皆さまは、筆者がメチャクチャ節電をしていると勘違いされているかも知れないが、筆者は計測好き、実験好きで「疑問を感じたら試してみたい」だけだ。ワットチェッカーを持っていれば節電ができるなら、体重計を持っている人は皆ダイエットできることになる。筆者宅にはUSB出力ポート付の体重計がある。一応ある。ちなみに最近クスッと笑ったCMは村田製作所の分解系編だ。気持ちは分かる。
前振りが長くなったが、今回は電気ケトル、電気ポット、トイレの温水洗浄便座、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器など家電製品の消費電力の計測結果を紹介する。電気製品は多くのメーカー、多くの機種が存在している。エアコンのように外気温(地域や季節)や部屋の断熱構造の影響を受けるものもある。よって、たまたま計測した製品の消費電力や電気代を掲載しているので、読者が使用する製品や条件によって値は異なるはずだ。それぞれの結果は参考程度に見ていただきたい。
電気ケトルvsガスコンロ、湯沸かしにかかるコストはほぼ同じ!?
会社勤めの頃はコーヒーサーバーなどがあり、いつでも無料でコーヒーが飲めていた人もいるだろう。家にいる時間が長くなり、自宅でお湯を沸かす機会が増えた人のために電気、ガス、どちらのコストが安いかを検証してみた。
筆者のオフィスは電気ケトルも電気ポットもなかったので、ライターの石川ひさよしさんから電気ケトル、INTERNET Watchの編集長から電気ポットをお借りした。電気ケトルはティファール製、電気ポットはナショナル(現:パナソニック)製、どちらもそこそこ年季が入った製品だ。旧製品も現行製品でも機種により最大消費電力に大小があったり、保温性能に差があるので参考程度に読んでいただきたい。
予備実験として、まずはマグカップ1杯分、水200ccを電気ケトルとガスコンロ+やかん(以下:ガスと表記)で比較してみた。水温は10℃、電気ケトルは自動でオフになるまで、ガスは笛吹きのやかんの音が「ピー、ピピー、ピー、ピーーー」と長く鳴ったところでコンロを手動で停止しガスメーターの数値を読み取った。ガスメーターの読み取りは前々回のガスファンヒーターと同様にプラネックスの監視カメラを利用した。
電気ケトルは1200Wほどで1分56秒。38.7Wを消費したので、電気代は1.0円となった。ガスは手動計測で2分間に0.007立方メートル(以下 m 3 と表記)を消費、ガス代は0.9円と時間・コストともほぼ同じとなった。電気代は25円/kWh、ガス代は122.94円/m 3 で計算した。
ちなみにガス代も電気代と同様に毎月変動し、筆者のオフィスが使用する東京ガスは、12月 125.26円/m 3 、1月 122.94円/m 3 、2月 123.56円/m 3 (0~20m 3 )となっている。
マグカップ1杯分の比較はほぼ同じとなり少々驚いた。ただし、ガスメーターの数字は最少桁の0.007m 3 なので、0.0065~0.0074m 3 までの誤差を含んでいる。もう少し計測精度を高めるため、1000cc=1Lの水で計測をしてみよう。電気ケトル、ガスとも2回計測。1回目で蓄積した熱を取るため水を入れて冷却、時間を空けて2回目の計測を行っている。
電気ケトルは1回目が118.8Wh、2回目が119.4Wh。平均119.1Whで電気代は3.0円。沸騰までの時間は5分58秒だった。ガスは1回目が0.024m 3 、2回目が0.023m 3 。平均0.0235m 3 でガス代は2.9円。沸騰までの時間は手動計測で6分14秒ほどとなった。かなり近い。ほぼ互角の接戦となった。
マグカップ1杯分200ccが1円で1000ccが3円と、水の量が5倍でコストが3倍になったのはエネルギーロスの差によるものだと思われる。電気ケトルは水だけ温度が上がるわけではなく、電気ケトル本体もかなり熱くなる。ガスにいたっては、やかんは勿論、コンロのバーナーやごとくは相当熱せられるし、室内に放出する熱も多い。
だが、200ccが1000ccになっても電気ケトル、やかん、ごとくなどに吸収される熱エネルギーは5倍にはならず(電気ケトル本体の温度は5倍にはならない)、加熱途中で吸収されるエネルギーロスは頭打ちしたと思われる。
電気ポット、お湯をよく使うのなら保温がお得
次は電気ポット。こちらは10℃、1Lの水を沸騰させ、そのまま98℃で保温。数時間後に保温温度を60℃に変更。さらに60℃で保温した状態から再沸騰させてみた。順番に消費電力を見ていこう。
電気ケトルはスイッチオンで即1200Wのフルパワーとなったが、電気ポットはスイッチオンでフルパワーの700W台となり、理由は不明だが十数秒で一瞬電力が下がり再び700W台で推移した。最大の消費電力が低めだったので沸騰するまでに時間は10分半と長め。この間の消費電力は123.8Whで3.1円となった。電気代に関しては電気ケトルと同等と考えてよさそうだ。
98℃で保温を続けると8時間の平均は41.6Whほどの消費電力となった。1時間の電気代は1.0円。保温温度を60℃に下げると消費電力は20.9Wh(4時間平均)となり、1時間の電気代は0.5円に抑えられた。室温は深夜から夕方まで暖房なしだったので10~15℃くらいだと思われる。室温で保温時の消費電力は上下すると思われるが、今回の条件では98℃保温の1か月の電気代は720円、60℃保温では360円となった。夜、お湯を使い切ったら夜間は使用せず、朝になってから新しいお湯を沸かすなど利用方法の工夫で電気代は下げられそうだ。
60℃で保温している状態から再沸騰させると700W台で5分間。消費電力は55.9Wh、電気代は1.4円となった。1秒ごとの細かな消費電力を見ると、保温は75W、25秒ほどの加熱が断続的に繰り返される。再沸騰は2回ほど加熱を停止しているが理由は不明だ。トータル5分ほどで沸騰した。
計測した(お借りした)電気ポットは2003年頃のもので、仕様を見ると98℃保温による年間総電気代は1万1100円と記載されている。当時の測定条件は不明。筆者は電気ポットと長年無縁だったので、象印、タイガー魔法瓶、パナソニックの製品スペックを調べると、現行品の多くは保温温度が98℃/90℃/80℃/70℃。湯沸かし時消費電力は700W~1300W。90℃保温の年間総電気代は6000円~1万5000円と幅がある。現在の年間総電気代の測定方法は日本電機工業会自主基準が採用され「室温23℃、湯沸かし2回/1日、再沸とう1回/1日、保温90℃で23時間/1日、365日/年間、電力料金27円/kWhで計算」となっている。
年間総電気代に幅があるのは、電力不要で保温ができる“まほうびん(=真空断熱)”と電気ポットを組み合わせたVE(Vacuum+Electric)タイプは保温性能が高く電気代が安め、電気だけで保温するタイプは電気代が高めとなる。
大雑把にみると、大勢で利用する場合は電気ポットがその都度お湯を沸かすより便利そう。1人でたまにお湯を沸かす人は電気ケトルかガスで都度湧かした方が低コストになりそうだ。別の視点で、電力需要の逼迫に対応したピークシフトを考慮すると、朝8~9時、夕方17~18時の電力需要のピークを避ける方法として、
- 電気ではなくガスを利用する
- 電気ポットの沸かすタイミングをピークの前に持ってくる
ことは有効だろう。例えば電気ポットは16時台に沸かして17~18時台は保温したお湯を利用すればピークシフトが可能となる。
冬は電気代がかさむトイレの温水洗浄便座
内閣府の消費動向調査の「主要耐久消費財等の普及・保有状況(2020年3月)」によると温水洗浄便座の普及率は総世帯で73%、2人以上世帯では80%を超えている。家庭だけでなくオフィスビル、ビジネスホテル、高速道路のサービスエリアなどのトイレにも広く普及している。
ちなみにこの調査では2人以上世帯の普及率はエアコン91%、パソコン77%、テレビ96%、レコーダー73.3%、FAX47.1%、タブレット41.4%、携帯電話94.5%、スマホ84.4%などとなっている。
温水洗浄便座には、お湯を温めておく「貯湯式」と、使う瞬間に加熱する「瞬間式」がある。貯湯式は製品が安くランニングコストが高め、瞬間式はその逆となる。おそらく多くの人が利用している温水洗浄便座は貯湯式で、(温度は違うが)温水を長時間保温する点は電気ポットと似ている。
温水洗浄便座の動作を「温水の加熱」「温水の保温」「便座の保温」の3つに分けて測定してみた。筆者のオフィスに設置された貯湯式の温水洗浄便座は壁リモコンで操作するタイプで、水を流すときも電力を消費するが、ごくわずかな電力なので無視した。
この時期、温水の加熱は時間は6分10秒ほど。消費電力は平均266.6Wで消費電力量は27.4Whとなった。1回分の電気代は0.7円ほどだ。
温水の保温は約270W、10~20秒ほどの加熱を繰り返す。加熱の間隔は一定ではなく数分に1回動作する。おそらく水温がしきい値まで下がるとその都度加熱をしているのだろう。
この保温状態を長時間のデータで見てみよう。次のグラフは17時から翌々日の10時まで、1時間ごとの電力量を記録している。夕方17時から翌日の朝9時までが温水の保温を続けた状態。朝10時台に温水を使用し再加熱。しばらくして温水の保温を停止、昼12時から翌日の朝9時までは待機電力やトイレの水を流すための電力だ。
温水の保温は赤矢印の17時間。保温のための電力がトイレの室温によって変化するのかは不明だがバラ付きは多め。この間の平均電力は10.4W。24時間に換算した電力量は249Whとなる。1日の電気代は6.2円、1か月では187円ほどだ。
青矢印は温水の保温を停止した状態。この間の平均電力は0.4W。24時間に換算した電力量は10.5Whとなった。1日の電気代は0.3円、1か月では7.9円ほどとなった。前述のとおり、筆者のオフィスのトイレはすべて電動なのでコンセントにつないでいるが、レバーで流すタイプであれば、コンセントを抜けばこの部分はゼロ円になる。
次は便座の保温。INTERNET Watchの編集長が「それ知りたい」というので、便座のふたを開けた状態と閉じた状態で消費電力にどれくらいの差があるかを実証してみた。
便座のスイッチをオンにすると52Wほどで数分加熱し保温状態へ。保温状態となった10分から180分まで、170分間の電力を便ふたを開けた状態と閉じた状態で比較してみた。開けた状態は22.2Wh、閉じた状態は19.1Whと差はわずか3.1Wh。1時間の電気代は0.56円と0.48円で0.08円の差となった。3.1Whの差がずっと続くか不明だが1か月の電気代は399.6円と343.8円となり便ふた開閉の差は55.8円となった。
個人的には便ふた開閉の差は気にならなかったが、便座を保温するための電力が、温水の保温より倍近い値になっていることは意外だった。温水のタンクは断熱しやすいが、便座はオープンな状態なので、トイレの室温が低いと放熱が多いということだろう。
季節による影響も見ておこう。前回の記事で紹介したように筆者はスマホの画像をすべてNASに保存しているので、数年分の画像からトイレの温水洗浄便座の電力を測定したスクリーンショットを探してみた。6月30日は11時46分39秒~11時49分38秒まで2分59秒。11月3日は7時47分00秒~7時51分14秒まで4分14秒だった。水を加熱して温水にする時間は夏はほぼ3分、秋は4分チョット、冬は6分チョットと、温水の夏の加熱時間は約半分だった。加熱時の消費電力はいずれも270Wほどなので、夏の電気代は半分と考えてよいだろう。
ザックリと温水洗浄便座の年間の電気代を計算してみよう。温水を常時保温、便座も常時保温、温水洗浄を1日1回、夏の消費電力は冬の半分とすると電気代は年間5340円。便座カバーを取り付け温水も便座も保温なし、待機電力なし、温水洗浄は1日1回都度加熱で使用すると年間187.5円となる。
さてどうするか。この温水洗浄便座に限らず節電は生活の質(Quality of Life=QOL)とのバランスが重要だ。例えば通勤前、遅刻ギリギリでトイレで6分待たされるのは苦痛だし、そもそも0.7円の節約のため遅刻しては本末転倒だ。一方でテレワークとなり、朝の時間にゆとりがあるなら使用するときに通電することは許容できるかもしれない。
QOLと生活パターンを考慮して、例えば1人暮らしなら寝る前に加熱、保温をして朝は待ち時間なしで使用。使用後にすべてオフにして通勤すれば電気代は3分の1くらいになるだろう。最も電力を消費する便座をオフにしても電気代は3分の1くらいになりそうだ。「いやいや月に数百円なら常時オン」も選択肢の1つだろう。機種や水温・室温によって消費電力は異なるが、運用方法を考える際の参考にしていただきたい。
24時間、365日稼働する冷蔵庫は設置環境で節電
冷蔵庫は夏にはエアコンに続く電気代の準主役となるが、室温が下がる冬は消費電力が減少する。冷蔵庫の消費電力と側面(放熱面)温度のグラフを見ていただこう。1つ目のグラフは今年1月に計測したもの。深夜0時から24時間、青の棒グラフが消費電力、赤の折れ線グラフは冷蔵庫側面の温度変化を表している。
①の部分を見ると6時過ぎから20分ほど消費電力(青棒)が80Wくらいで推移する。それに同期して冷蔵庫側面の温度(赤線)が上昇する。これはヒートポンプにより冷蔵庫の庫内から熱を吸収し、冷蔵庫の側面から放熱する動作を表している。冬は動作する時間が短めでグラフの青棒の幅が細い。細い部分は7~8分で動作が終了している。
2つ目のグラフは2018年の8月に計測したもの。グラフの青棒の幅が太いことから、動作している時間が長いことが分かる。1回1回の消費電力は冬の80Wより少し高めで85Wほど。30分以上の動作が頻繁に行われている。夏は室温が高いので、側面温度は20℃台で推移している。
冬の計測と比べ側面の温度変化(上下の振幅)が少なめなのは温度データロガーの設置方法が異なるためだ。夏の計測(2年前)は冷蔵庫側面に取り付けた吸盤フックに温度データロガーを吊り下げて設置。冬の計測(今年)は温度データロガーを側面にテープで貼り付けて(密着させて)設置したため、温度変化をより敏感に記録している。
冬も夏も消費電力が120Wほどに増えている時間がある②。消費電力が最も大きいのはこのときだが、冷蔵庫の側面温度は下がっている。消費電力が増えて、放熱がされていないことから、霜取りが行われていたと想像される。時間は不定期で概ね1日に1回程度だ。霜取りの間は冷蔵・冷凍が停止するようで、霜取りが終了するとすぐにリカバリーの動作に移り消費電力も側面の温度も上昇する。
24時間の消費電力は冬が626Wh、夏が1126Wh。25円/kWhで電気代に換算すると15.7円と28.2円となった。このデータでは夏は冬の1.8倍となっている。過去に計測した8月~9月(夏)の30日間、2月~3月(冬)の30日間の冷蔵庫の消費電力量は夏が39.8kWh、冬が19.8kWhで、電気代に換算すると夏は994円、冬は495円となった。ザックリ夏は冬の倍の電気代がかかる感じだ。
今回計測した冷蔵庫は350Lと中途半端なサイズ。おそらくファミリーサイズは400~500L、1人暮らし用は100~200Lが多いので、その中間的な大きさだ。オフィス兼住居を借りた際に、先々の転居を考慮して左右両開きが決め手で購入。カタログ上の年間消費電力は420kWh、ファミリー向けの現行品の年間消費電力は300kWh以下が主流なので、省エネ性能は低い。
夏の暑い時期、冷蔵庫の電気代は冬の倍となる。節電のポイントは放熱を妨げないこと。冷蔵庫の側面や上面を手で触ると放熱する場所は分かるはずだ。現行の冷蔵庫は左右の側面から放熱する製品が多いので、壁や食器棚などとの空間を広げると節電になる可能性が高い。
冷蔵庫の側面は広くて磁石が利用できるので、色々貼り付けている人もいるだろう。カレンダーやゴミ収集日の案内、子どもの学校関係の案内などの紙類。冷蔵庫側面収納グッズを利用するとさまざまなキッチン用品を貼り付けることができるが、場合によっては放熱を妨げることになるので注意したい。
冷蔵庫は消費電力がそこそこあり、24時間365日稼働する数少ない家電製品なので、電気代に影響する可能性が高い。夏、もし冷蔵庫の放熱部分がずっと熱い場合は、設置方法などを工夫して、熱い→冷たい→熱い→冷たいが繰り返されるようにすれば冷蔵庫の電気代を下げることができるはずだ。
500Wの電子レンジ、消費電力が実は980Wだった
外食がしづらいことや、巣ごもり生活で自炊をする人が増えていると聞く。電子レンジ・炊飯器、どちらも節電とは縁遠い家電品だが、瞬間的な消費電力が大きいので家庭内ピークシフトを考える上で、実際の消費電力を知っておくことは価値があると思う。
まずは、電子レンジ。現在、筆者が川崎のオフィスで使用してる電子レンジの最高出力はオート時で1000W。自分で設定できるの出力は800W、600W、500W、200W、100Wが選択できる。次のグラフは800Wから100Wまで出力を変更したときの消費電力だ。
スタートすると規定の出力に4~5秒で到達し、800Wは1350Wほど、600Wは1080Wほど、500Wは980Wほどで推移する。200Wと100Wは断続的な動作を繰り返す。200Wは590Wで5秒、100Wは570Wほどで2~3秒を概ね10秒間隔で繰り返している。
注目したいのは電子レンジに表示される出力はマイクロ波の出力で、電子レンジ自体の消費電力はそれより大きいという点だ。ブレーカーを意識して「電気ケトルが1200W、エアコンが1000W、電子レンジを500Wで加熱すれば30Aでも大丈夫」と思うのは間違い。電子レンジは500Wで使用すると1000W近い消費電力なので30Aに収まらない可能性が高い。ブレーカーを意識した家庭内ピークシフトを考える際、電子レンジは+500Wくらいを想定しよう。
各社のカタログや取扱説明書には最高出力時の消費電力が記載されている。確認すると最高出力が1000Wの機種は1450W、600Wの機種は1090Wなどと記載されているので、どの製品も概ね400W~500Wを足した値が消費電力と考えてよさそうだ。
炊飯器はまとめて炊くとお得?
炊飯器の消費電力を見てみよう。筆者が使用している炊飯器は東芝製で“売り”は真空保温という機能で保温時間が40時間と長いこと。ポンプでお釜内の空気を抜き、酸化を抑えていると思われる。まずは炊飯時の消費電力を見てみよう。
炊き方は「本かまど炊き」「早炊き」などいくつもコースがあるが、筆者は2番目に早く炊ける「そくうま」を常用している。今回は「そくうま」で2合と4合を計測してみた。
炊飯を開始するとすぐにポコポコとポンプが作動する音がして、お釜内の空気を抜く行程が入る。開始2分くらいから加熱が始まったようで、そこからはかなり複雑な動作が続き24分弱で炊きあがった。消費電力だけ見ると、900W、1200W、800W、700W、900W越えと目まぐるしく変化している。これが炊飯のノウハウっぽく、おそらくメーカー各社の炊き方の特徴があるのだろう。
4合炊きは、ほぼ同じ動きで炊きあがりまでの時間が4分長くなった。2つのグラフを重ねてみると、4合炊きの方が少し消費電力が高めとなっている。
それぞれの炊きあがりまでの消費電力量と電気代は2合炊きが193Whで4.8円、4合炊きが233Whで5.8円と量が2倍になって電気代は1.2倍なので、2合を2回炊くよりは、まとめて4合炊いた方が省エネとなりそうだ。もちろん炊きたてを食べるメリットもあるし、保温のための電気代も加算されるのでコスト以外も含めて判断すればよいと思う。
消費電力量 | 電気代 | |
2合炊き | 193Wh | 4.8円 |
4合炊き | 233Wh | 5.8円 |
炊飯器の最後は保温コストだ。保温に関しては2合と4合で明確な差は見られなかった。1時間の消費電力量は36.5Whほど、電気代は0.9円程度だった。
テストで使用した温度データロガーやワットチェッカー
編集長のFacebookを見るとテクノロジーに対する好奇心が旺盛だ。小学生の息子さんとのやり取りをみると親子そろって探究心の高さがほのぼのとしている。そんな編集長が検証用のハロゲンヒーターと電気ポットを持ってきた際に興味を示したのが今回使用した計測機器だった。あまり一般的なものではないので、ここで簡単に紹介しておこう。
筆者が節電の記事を初めて執筆したのは10年前。2011年の東日本大震災で計画停電が実施された頃だ。もう少しさかのぼると2006年に起業し水道光熱費が激増。リーマンショックの後に売り上げが激減し廃業の危機をむかえて水道光熱費を35%削減。震災直後に“自分にできることは”と考えそのノウハウを節電の記事にした。
当時の計測方法はワットチェッカー(瞬間値、累積値)と温度計を時計と一緒に動画撮影し、映像をコマ送りしながらエクセルに手入力してデータを作成した。面倒くさい、相当面倒くさい。
長期間のログが保存できるUSB温度データロガー
震災から10年間、節電の記事を書くことはなかったが、気になる計測器を見つけると購入し、気になる事象があると計測してきた。今回の計測で主に使用した温度計はUSB温度データロガーと呼ばれるもので最初に購入したのがRC-4、次に購入したのがRC-5。RC-4にはFLOUREON、RC-5にはElitechのロゴが記載されているが同じソフトを使用するので元は同じメーカーだと思われる。主な違いはRC-4が記録できるデータは1万6000、RC-5は3万2000と倍になっている。RC-4は外部センサーが付属しているが筆者は使用したことがない。
電源はボタン電池で数年は交換不要で使用できる。PCとはUSBで接続。データの取り込みは専用ソフトを使用し、データはエクセル、テキストファイルなどで出力し保存が可能だ。
設定も同じ専用ソフトを利用し、データの取り込む間隔は10秒~の任意の時間で設定が可能。RC-4でレコード・インターバルを10秒に設定すると約44時間。1分にすると約11日間、1時間にすると約666日間記録できる。RC-5はそれぞれ倍の期間が記録可能だ。
このUSB温度データロガーのメリットは価格と電池駆動。数年前、筆者の購入価格はどちらも2000円弱。現在、RC-5の上位機種が併売されていて、価格は少し高めとなっている。前述したように電池駆動なので、計りたい場所に設置すれば勝手に計測を続けてくれる。デメリットは遠隔監視ができないこと。本体のボタンを押すとその時点の温度は表示されるが、PCに取り込まないと温度の推移を知ることはできない。Bluetoothなどでつながっていて、スマホでサクッと温度変化が確認できるとうれしいが、価格を考えると高望みかも知れない。
遠隔監視、湿度もクラウド保存できる機種も
温度変化の遠隔監視ができる製品がプラネックスの「どこでも環境センサー」。Wi-Fiに接続して使用するセンサーで温度・湿度・気圧を計測し、クラウドに保存できる。
この製品のメリットは計測場所にセンサーを設置したまま、どこからでもPCやスマホでデータが確認できること。グラフ表示されるので、温度の変化もすぐに把握できる。湿度も計測できるので、乾燥などが気になる人には大きなメリットだろう。
設定画面を見ると、温度、湿度、気圧がしきい値に達するとメールで通知させることができる。夏に親が住む離れた実家の温度が30℃を超えたら通知する、といったことが可能だ。加えて、同社のスマートソケットとの連動ができる。農業の知識はないが、例えばビニールハウスの温度がしきい値を超えたら換気扇や送風機を稼働させる、などの連動もできそうだ。
デメリットはUSBによる電源とWi-Fi環境が必要なこと。電源が取りにくい場所ではモバイルバッテリーが欲しい。Wi-Fiは室内なら問題なさそうだが、設置場所によってはモバイルルーターなども欲しくなる。データは20秒ごとに記録されクラウドからCSVでダウンロードできるが、実測データを見ると筆者の環境ではインターバルが22~23秒ごとに記録されている。個人的にはインターバルを1分とか1時間とか、自分で設定ができた方が使いやすい気がする。保存期間も1か月で固定されているが、インターバルによって(データ量によって)期間が変更される方式にして、「1時間ごとなら1年間」という使い方ができるほうが望ましい。デメリットとは言えないが「どこでも環境センサー」の価格は4000円台だ。
Bluetoothワットチェッカーは便利だけど
電力の計測はBluetoothワットチェッカーを2台使用している。旧型は「REX-BTWATTCH1」、後継機の新型「RS-BTWATTCH2」は昨年2020年に発売された製品だ。以前使用していたワットチェッカーは瞬間の消費電力や累計の電力量を表示できたが、データを出力することができなかったので、温度計、電力系ともデータ取込できるようになったのは感動的だった。
旧型と新型を比較してみよう。新型の特徴は秒単位のデータがCSV保存できること。旧型はスマホの画面上ではリアルタイムの電力の推移をグラフや数値で見ることができたが、スクリーンショット以外に保存するすべはなかった。旧型でCSV保存できるのは1時間グラフ(分単位)、1日グラフ(時間単位)、1か月グラフ(日単位)の電力量だったが、新型はこれらに加えリアルタイムグラフ(秒単位)のCSV保存に対応した。
旧型にもメリットがある。まずは画面のデザインが見やすい。連載で掲載した背景が黄色のグラフは旧型のスクリーンショットだ。どちらも識別名が変更できるのだが、旧型はグラフのスクリーンショットに識別名が表示されるが新型はされない。計測から時間が経つと「このスクショは何だっけ?」となってしまう。グラフの縦軸の自動スケーリングも旧型が優れている。
旧型と新型のデータを見比べると、新型は解像度が低めで、微細な電力の取りこぼしが気になる。次のグラフは2台を重ねてつないで、その先のエアコンを稼働させたときのデータを切り出したものだ。横軸は分単位で、青線が旧型、赤線が新型。真実の値は分からないが、旧型(青線)の方が電力の変動に追従して滑らかなデータを記録しているように見える。
次はプリンター。スリープモードの微細な電力を計測すると、旧型は1分ごとの値が0.01W付近で細かく記録されるが、新型はほぼゼロが続き、20分に1回くらい0.3125Wという同じ値をポツリポツリの記録している。こちらも真実の電力は不明だが、微細な電力の計測では新型は信頼できない印象だ。
加えて新型の秒単位のデータは時間の欠落が発生する。01秒→02秒→欠落→04秒→05秒といった感じで60秒のデータを取ったのにデータ数は57個といった感じだ。電力量の計算をするときは合計を57で割って1秒平均値を出し、60倍して1分間の累積データとするなど、記録された時刻とデータ数を確認、変換する手間がかかった。
旧型にも不具合・不満はある。iOS14になってデータ転送時にアプリが落ちて、データ保存ができなくなった。Android端末を使用するか、iOS13以前のiPhoneを使用するかの選択で、筆者はデータ転送時だけ、昔使用していたiPhone 5を使用した。iOS14リリースから数か月経っているし、旧型はメーカーは生産終了、流通在庫のみなので、アプリの修正は期待できないかもしれない。
筆者が購入した価格はどちらも6000円くらい。安くはないが高くもない。色々不満はあるが、そこそこの価格でデータ出力ができる電力計がないので、現状は秒単位のデータが欲しいときは新型、微少な電力が計測したいときとスクリーンショットを残したいときは旧型と使い分けている。ちなみにBluetoothではなくWi-Fi接続ができるWi-Fiワットチェッカー「RS-WFWATTCH1」という製品も昨年発売された。ネットで情報を集めると秒単位のデータは欠落があるようなので、3台目の購入は見送りかなあと思っている。
温度計もワットチェッカーも測定精度に関しては不明だ。正しい20℃、正しい100Wなど基準となるものを持っていないので、相対的なデータと割り切っている。筆者が最初に勤めた会社は長さを計る計測機器のメーカーだったので、長さに関しては基準となるブロックゲージなるものが手元にある。10mmで精度はプラスマイナス0.00045mm以下なので計測器の校正に使用できるが、数十年間使用したことも必要性を感じたこともない。
前述のとおり、筆者は計測好き、実験好きなので温度や電力を計測する機器を購入しているが、体重計があってもダイエットができるわけではないように、ワットチェッカーがあっても節電にはならない。自宅のあの製品の電力を計ってみたいという人は、これらの測定器を参考にしていただきたい。
4回の連載で暖房コストやさまざまな電気製品の電力を計測してみた。実際には“やかんでお湯が沸かせる石油ストーブが好き”“ご飯は炊きたてが譲れない”など好みは人それぞれだ。暖房はコストの比較をしたが、別の側面で暖房の質の違いもある。実際「エアコンはコスパ最高」と書いたが、今この瞬間は石油ファンヒーターが稼働している。筆者の場合、クレジットカードもスマホ決済も使用しているが「後から請求書が来る電気代より先払いの灯油代は安心」という昭和ジジイ臭さが心のどこかにある。コストがすべてではないので、ご自身のQOLを大切にしながら、節電の参考にしていただきたい。