“「反反ワクチン派」の「医療クラスタ」” は “「心因性」という言葉を気のせい、詐病、大げさなどの意味で使って「全体の公衆衛生のために犠牲になってくれている少数の人」を侮辱” したのか?
はてなブックマーク経由で見かけました。
「反反ワクチン派」の「医療クラスタ」が「心因性」という言葉を気のせい、詐病、大げさなどの意味で使って「全体の公衆衛生のために犠牲になってくれている少数の人」を侮辱したのは忘れないラジよ。
— PsycheRadio (@marxindo) 2021年2月6日
「反反ワクチン派」の「医療クラスタ」が「心因性」という言葉を気のせい、詐病、大げさなどの意味で使って「全体の公衆衛生のために犠牲になってくれている少数の人」を侮辱したのは忘れないラジよ。
↑このかたの意見は、分解して検討すると、
このようです。上の2つは、何らかの性質によって括られた集団を指し、3番目と4番目は、用語を不適切な意味で用いたと批判し、5番目で、特定の人びとを不当に扱った、と批難しています。
こういう意見がある場合、
- その括りかたは適切か
- 具体的にどのような発言があったのか
- 括った集団を指して批判するのは妥当か(その集団の傾向を適切に表わしているのか)
これらを検討するのが肝腎です。反反ワクチン派
と医療クラスタ
とあるので、ワクチンの害を指摘する人びとを批判し、かつ医療職である、というのが条件でしょう。どちらも曖昧(と言うか、括れる範囲が広すぎる)ではあります。
いずれにしても、具体例が無いと話にならないので、twitterのリアルタイム検索で、ワクチンや心因性、気のせいなどで調べてみました。もちろんこれは、網羅的な調査や、傾向や代表性が適切に反映されたものではありません。取り敢えず、そういう集団の成員と言えそうな人はどんな発言をしていたか、というのを拾いました。
「心因性を」を「気のせい」とか「心の持ちよう」とかって翻訳するバカ共が、子宮頸がんワクチン副反応「被害者」を担ぎ上げて利用するもんだから、精神医学的評価をされずにほったらかされてるように見えてしょうがねぇ。
— ながし (@Pnagashi) 2014年6月12日
「心因性を」を「気のせい」とか「心の持ちよう」とかって翻訳するバカ共が、子宮頸がんワクチン副反応「被害者」を担ぎ上げて利用するもんだから、精神医学的評価をされずにほったらかされてるように見えてしょうがねぇ。
↑SCD+ADHDの小児科医・児童精神科医。専門領域は虐待医療と発達障害。
(twitterプロフィールより。以下、プロフィール関連の引用は同様)のかた。明らかに、心因性のものを気のせいとする意見に強く批判的です。
子宮頸がんワクチンだけどさ、別に専門家側は気のせいなんて言ってないんだよね。心因性=気のせいみたいな誤解が広まってるんだけど。
— シトリィ (@sitry001) 2014年1月21日
この誤解はワクチン副反応だけにとどまらず、多くの人を苦しめるよ。
心因性の病気は社会的要因の影響を強く受けるから。
周囲の無理解偏見が悪化させるよ
子宮頸がんワクチンだけどさ、別に専門家側は気のせいなんて言ってないんだよね。心因性=気のせいみたいな誤解が広まってるんだけど。 この誤解はワクチン副反応だけにとどまらず、多くの人を苦しめるよ。 心因性の病気は社会的要因の影響を強く受けるから。 周囲の無理解偏見が悪化させるよ
↑検査技師
のかた。検査技師を医療クラスタなる集団に含めて良いのか何とも言えませんが(その表現を使う側が定めるべき)。こちらのかたも、別に専門家側は気のせいなんて言ってないんだよね。
と書いており、心因性を気のせいとしていない意見です。
「疾患鑑別、因果関係を明確化」できないからといって、それを切り捨てようとする行為自体、単なる思考停止なので、どうぞ思考停止しないで下さい、という願いです。ワクチン行政関係者、マスコミ、政治家さんへ。心身症は体の異変であり、医学で使用する心因性=気のせい的な意味じゃーないよ。誤解!
— 禁煙ポンスケ (@janeway_tlr2) 2014年10月22日
心身症は体の異変であり、医学で使用する心因性=気のせい的な意味じゃーないよ。誤解!
↑循環器内科医師
のかた。ワクチン行政関係者、マスコミ、政治家さんへ
と書いている事から、それら対象へ、心因性は気のせいとは違う、のをきちんと理解するよう促している意見と読めます。
続き)むやみにワクチンのせいにしてしまうのは被害者(と周囲の人達)の苦しみを更に深めるだけだろう。その際に何度でも言っておきたいのは「心因性=気のせい」ではないという点だ。心因性でも、症状そのものは間違いなく存在する。なので本人の苦しみも本物なのだ。そこを理解せずに(続く
— PseuDoctor (@_pseudoctor) 2014年12月17日
その際に何度でも言っておきたいのは「心因性=気のせい」ではないという点だ。心因性でも、症状そのものは間違いなく存在する。
↑医師・博士(医学)・病理専門医
のかた(PseuDoctorさんです)。PseuDoctorさんは、こういう部分への指摘をきっちりなさるかたなので、当然この種の問題にもそうです。
心因性反応を「気のせい」と明言した公的機関は、東京新聞こちら特報部だけ(だと思う)。/明確な証拠がないからと、これだけの症状の多さを、「心理..「『なんでここまで心因性を否定したいのか?』 ~子宮頸がんワクチン副反応をめぐ..」 https://t.co/CkTEg1XYGE
— 宮原篤 / 書籍「小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK」@9月21日発売 (@atsushimiyahara) 2016年3月21日
心因性反応を「気のせい」と明言した公的機関は、東京新聞こちら特報部だけ(だと思う)。
↑小児科専門医・国際渡航医学専門医・臨床遺伝専門医。
のかた。これは、togetterへのコメントです↓
このtogetter自体が、心因性なる語の用いかたの難しさを議論しているものでもあります。
リアルタイム検索で見つかったのはこれくらい。ワードを絞り過ぎたので、あまりヒットしませんでした(広げるとヒットし過ぎて見つけにくいので)。もし、「反反ワクチン派」の「医療クラスタ
で「心因性」という言葉を気のせい、詐病、大げさなどの意味で使って
いるような具体例が見つかれば、教えてください。
調べていて、このような意見を見つけました↓
反反ワクチン派の皆さんはこんなことはなかったと歴史修正しようとしてるけど、村上璃子氏とその取り巻きはそうだったよね。 https://t.co/K7O9ZtQoqG
— usi4444 (@usi4444) 2021年2月7日
反反ワクチン派の皆さんはこんなことはなかったと歴史修正しようとしてるけど、村上璃子氏とその取り巻きはそうだったよね。
ここで、HPVワクチンに関して積極的に情報発信をおこなってきた村中璃子氏(引用文は原文ママ。後ほど訂正されています)が、実際にそのような発言をした、と指摘しています。加えて取り巻き
も、と言っていますが、これは全く具体的メンバーが解らない表現なので、ここでは放っておきます。
私は、村中氏がかなり強い表現を使う事もある論者だというのは知っているのですが(このブログで批判した事もあります)、氏が、「心因性」という言葉を気のせい、詐病、大げさなどの意味で使って
いるような憶えは無かったので、改めて調べてみました。
↑これは、村中氏と開沼博氏(社会学者)との対談記事です。ここから引用します。
"身体化"は心の病気ではなく、心をきっかけとした身体の病気です。しかし、当初、多くの医師が口にした"心因性"という言葉が、心の病気、気のせいというイメージを抱かせました。そうやって傷ついた少女や母親たちには、ワクチンによる脳障害だと断じる医師たちが「いい先生」に見えてしまう。そして、新しい病気を発見したと主張したいハンス派の医師たちにとっても、彼女たちは欠かせない存在であり、共依存するわけですね。
↑これは村中氏の発言部分。この文を見ると、明らかに、心因性を気のせいと言っていない意見である、と読めます。身体化
の概念を用いている事、心因性が心の病気、気のせいというイメージを抱かせました。
と言っている事、などからそう判断出来ます(イメージを抱かせたと言っているのだから、それは実際と乖離しているとの指摘と読める)。村中氏の意見総体をどう評価するかは措いて(引用文にも気になる表現はあります)、心因性なる語にどのような意味付けをしているか、の部分に絞って見れば、気のせいなどとは言っていないでしょう。もしかしたら、意見の変遷があったり、別所で違う主張をしている可能性もありますが(これは単なる可能性であって、蓋然性の高さの話ではありません)、それであれば、ここでそう言っている、と具体的に示すべきでしょう。
このように、私が調べた限りでは、明確に「心因性」という言葉を気のせい、詐病、大げさなどの意味で使って
いる、「反反ワクチン派」の「医療クラスタ」
と看做せるような人の発言は見られませんでした。存在するが見逃しているのかも知れません(かなり広範囲にわたるような括りかたなので、分母は大きくなる)。
もちろん、実際にそういう例が挙げられたとしても、それを敢えて、「反反ワクチン派」の「医療クラスタ」が
と表現して良いのか、はまた別の問題です。これは集団の傾向を表すような言いかたですし、数例の実例が挙げられたとしても、そこから傾向など言えません。もし、別に全体的にどうこう言っているのでは無い、との話であれば、じゃあ何故、わざわざ大まかにしか括れないような表現をして、具体例を挙げて個別に批判していく、という事をしないのか、と指摘出来るでしょう。なにしろ、「全体の公衆衛生のために犠牲になってくれている少数の人」を侮辱
とまで言っているのであるから。これは、相当に強い批判的表現です。きちんと、具体的にこの人がこのように発言している、と言わないと、「反反ワクチン派」の「医療クラスタ」
に属するのではないか、と考える人からの納得は、到底得られないでしょう。
2021年2月8日追記
改めて書いておきます。私は、そんな発言をした人はいないと主張していません。探していけば、恐らく見つかるでしょう。括りかたが曖昧で大雑把だから、取りようによっては分母がものすごく大きくなる。そこには色々な意見を持つが含まれて行きます。だから、存在はするはず。乱暴な事を言う人もいるでしょう。そういった意見は、個別に批判すれば良い。
私が言っているのは、括って評価出来るようなものかという事です。派もクラスタも、それ自体が集団を指す言葉なのですから。