三重・名張事件の三者協議で検察が新たな主張
無実の死刑囚・奥西勝さんが再審(裁判のやり直し)を求めてたたかっている三重・名張毒ぶどう酒事件。差戻し審を審理する名古屋高裁刑事第2部で5月28日、初の三者協議(裁判所・弁護団・検察)がおこなわれ、検察は突然、犯行に使われた毒物に関してこれまでの主張を留保し、新たな主張をおこなうことを明らかにしました。
05年、名古屋高裁刑事第1部は、犯行に使われた毒物から、奥西さんが使用したとされる農薬・ニッカリンTに含まれる成分が検出されなかったとの弁護団の毒物鑑定を採用し、「自白」は信用できないとして再審開始決定を出しました。これに対し、同高裁刑事第2部は06年、鑑定よりも「自白」を重視し再審開始を取り消しましたが、今年4月に最高裁は「科学的知見に基づく検討をしたとはいえず、その推論過程に誤りがある疑い」があると判断。「原決定を取り消さなければ著しく正義に反する」として取消し決定を破棄し、審理を名古屋高裁に差し戻しました。
検察はこれまで、毒物の成分は検出されにくいものだという主張をおこなってきましたが、この主張を留保し、検出された成分は弁護団の主張とは別のものだ、という新たな主張を突然おこない、ニッカリンTとぶどう酒の再製造を製造会社に依頼するよう裁判所に要請しました。
前提となる毒物の成分は、最高裁まで検察も認めてきたからこそ、弁護団は主張・立証を積み重ねてきました。弁護団は検察の主張を厳しく批判し、自らの立証が破綻したら、根拠も示さず別の主張をおこなう、このような証拠あさりは許されない、再鑑定は審理の引き延ばしを図るものだと強く抗議しました。
7月20日までにこの検察申立ての文書が提出されることになっています。
〈抗議先〉名古屋高等検察庁 〒460―0001 愛知県名古屋市中区三の丸4―3―1 TEL052(951)1581
救援新聞 2010年6月15日号