グリーンヒル/古谷実

グリーンヒル(1) (ヤンマガKCスペシャル)

グリーンヒル(1) (ヤンマガKCスペシャル)

怠け者大学生、関口がある日であった女の子に一目惚れしてバイククラブに入るところからはじまるお話。基本的には、そのクラブのメンバーを中心とした連作短編のような構成になっている。
『ヒミズ』や『シガテラ』に行く前の、ギャク漫画家としての古谷実タッチが残っている作品でもあるんだけど、この『グリーンヒル』は軽そうに見えるからこそ重い。『ヒミズ』で潜る寸前の逡巡、拘泥に満ちた作品だと思う。
作品中でもっとも悲惨な人物として描かれるリーダーは、日々訪れる「イヤなこと」を忘れて、開き直っているように見える。「これはもーしょーがない! 守るモンないからね!! もちろん得るモン激減するけどね〜!!」そんなふうに、開きなおりつつも「サクの中に入りたいのに入れない」ともがくリーダーとは逆に、関口は自分のことを「サクの外に出られない臆病な子羊だ」と考える。どうやら長いらしい人生に対し「要するにだ オレが思うに人類最大にして最強の敵は“めんどくさい”だ」ということを悟り、立派な大人になりたいなぁーと本気なんだか冗談なんだかわからないような態度で呟く。
この関口と彼女の関係は、『シガテラ』での南雲さんと荻野くんに続いていて、荻野はちゃんと「つまらない大人」になった。そう考えると結局古谷実はあっちもこっちも拒否しているのかもしれない。

ヒマで腐りかけてる奴に限って「人生」とか「生きる目的」とか大そうなことを考えちゃうだろう?

という言葉はそのまま自分自身に対するツッコミのようで、でもじゃあその目的って何なんだよ、というところを古谷実はずっと描いてるんじゃないかと思う。「そんなものはない」って、もう『僕といっしょ』で描かれてたけども、そうやって逃げ場を潰していくモグラたたきのようなとこが、読んでいてすごいなと思うとこでもあり、恐ろしくもある。

グリーンヒル(3) (ヤンマガKCスペシャル)

グリーンヒル(3) (ヤンマガKCスペシャル)

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「ヒミズとシガテラ」id:ichinics:20050917:p1