法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season23』第8話 瞳の中のあなた

 視覚障碍者のランニングを助けるため伴走をおこなうクラブに入った亀山が、伴走途中に何者かに刺される。伴走していた女性は視覚のかわりに嗅覚がすぐれており、犯人からマニキュアの除光液の臭いを感じたという。
 その臭いはペンキによるものと杉下は考えた。女性が視力をうしなった原因だった過去の強盗殺人の直前、現場の家屋にラクガキがなされ、塗装業者が出入りしていたのだ。そして女性が視力をとりもどす手術がおこなわれる……


 視覚障害の発生と回復によって人々が混迷する、川﨑龍太脚本のミステリ回。過去にも特殊な身体的特徴をルールとしたトリックをしかけたことがあり、脚本家としての作風なのかもしれない。
 伴走クラブという珍しいボランティアが描かれたり、強盗殺人の現場として特殊な状況のため見たことのないロケ地が登場したり、映像面では全体的に新鮮味があった。
 とある男は犯罪に加担しつつも同情すべき背景も描かれ、感動的な結末に流れかねないところを、被害者の女性がはっきり拒絶する展開が痛ましくも好ましい。最終的に憎みきれないと吐露するものの、男の身勝手さを理性では糾弾すべきと女性が結末で考えているところも良かった。


 しかし不思議なのが、結局ラクガキの犯人は不明のままなこと。
 犯人が塗装業者という推理から、家の様子をさぐるためにラクガキをしたという真相ではないかと思ったし、それゆえ塗装業者を紹介した隣家の住人が怪しいとも思ったが、隣家の住人は意図せず危険な男を呼んで協力することになっただけだった。
 どう考えても隣家の住人が犯罪を主導して、ラクガキの掃除を口実に塗装業者に下調べさせた真相のほうが全体の構図がきれいにおさまると思うのだが。