法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season23』第6話 薔薇と髭の夜明け

 NPOを利用してマネーロンダリングをおこなっていたコンサルタントが殺されていた。利用されたNPO関係者として文句をつけにいったヒロコママはそのまま行方不明になっていた。
 苦学生としてNPOの世話になっていた高校教師の遺留品が現場に残されており、ヒロコママは彼をかばっているのだろうと杉下右京は推理する。そこに十年前の強盗事件もからんで事態は二転三転する……


 岩下悠子脚本。細部のリアリティに無理を感じたところはあったが、ピンバッジが落ちた経緯を中心にかなり複雑な推理が展開されて、人間関係の根幹にもトリッキーな犯罪がしかけられていて、人工的なミステリ回としてはよくできていた。
 今回はいくつかの亀山なりの推理が杉下の推理を加速させる意味をもっていて、犯人側とあわせて「相棒」のドラマとして完成していることにも感心した。特に根幹にいる若者ふたりの不思議な縁は、誤解を恐れずにいえば良質なボーイズラブを見ているような気持ちになった。


 過去に強盗をおこなった犯人コンビの正体が二転三転して、その犯人の一方だったコンサルタントが殺された事件の印象も変転していく。
 そして殺人事件をあつかったミステリではひとつの定番パターン*1を、高校教師のプロフィールにあわせてアレンジして、意外な人間関係を展開していく。もう少し説得力を足す描写はほしかったが*2、過去の職業と現在の職業からして学習能力が異常に高いキャラクターとはわかるし、過去の不思議な行動が伏線になっているので、架空性の高いミステリ回のトリックとしては許せる。
 そうしておこなったことは愚かな罪だが、善意のひとかけらが介在したことで、逆に致命的な罪は背負わずにすんだ。微妙な比率の良心と犯罪の重みにあわせた結末が描かれ、勧善懲悪の娯楽作品らしい見やすさがあった。本人の責任ではない問題に足を引っぱられたキャラクターもいるが、それを社会が助けようとする前向きなドラマになっている。

*1:ネタバレをさけるため、象徴的なタイトルの作品をリンクだけする。

*2:たとえば、その過去についていた仕事で知的な会話についていくため、もともとそれなりに勉強もしていたとか。あるいは点数配分の関係で、二次はそれほど高得点でなくても問題なかったとか。