法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』父の日にアドベン茶/キライなテストにガ~ンバ!

「父の日にアドベン茶」は、空き地にみんなが集まって、父の日のプレゼントに悩んでいた。一方、のび太は家で何もせず、そんな息子に野比父は冒険心をもつよううったえるが……
2008年に映像化*1した後期原作をリメイク。野比父が秘密道具で苦難にあうパターンのエピソードを、父の日にあわせて細部をアレンジした。
氏家友和コンテで、冒頭のジャイアンが打ちあげた丸めた紙が野比家にあるチラシに変わったところは、今敏監督が多用していたワイプ演出。
よく泥棒の大捕り物が展開される原作に治安の悪さが指摘されがちな『ドラえもん』だが、今回のアニメはひとりの強盗から覆面姿の集団になるあたり原作以上。
ビル建設現場においてクレーンの上昇を誰も監視せず、野比父が建材ごと吊りあげられてしまう場面も、原作が描かれた時代ならともかく現代では違和感があった。テンポの良い原作と違って、高所の緊張感を重視した表現は良かったのだが。

アニメオリジナルで父親が本当に望んでいたことが明かされる結末が、最後の最後で原作どおりになったのも微妙。今回くらいは原作どおりに冒険嫌いになった後に、家族にすすめられて考えをふたたび変える……くらいやっても良かったかな。普段は原作どおりに回帰してほしいと思ってはいるが。


「キライなテストにガ~ンバ!」は、デートに行きたいドラえもん、テスト勉強をやめたいのび太、ジャイアンリサイタルから逃げたいスネ夫の心の葛藤を秘密道具で実体化していくが……
単行本に長らく未収録だった原作を2005年以降に初アニメ化。まったく記憶に残っていなくてアニメオリジナルストーリーを見ているような印象があった。
小倉宏文監督コンテは今年数回目だから驚きはないが*2、丸山宏一作画監督はかなりひさしぶり。単独では「ロボット雪だるま」*3、共同でも「地球製造法」*4と、どちらにしても一年以上前になる。
本編ではケンカする小さな黒白ドラえもんがコミカルでかわいい。長く葛藤するのび太はバックをとりあったり、スネ夫がバックドロップで決着したのをジャイアンがトレスしたり、プロレスっぽい見せ場になっているのも面白い。
そして結末の味わいは本当に独特。最終的に欲望が勝ったことで本体が堂々と外出していきつつ、良心は残って弱々しくも勉強をつづける。それを見守り育てようと決意するドラえもん。葛藤するのび太視点ではじまりながら、教育するドラえもん視点のドラマとして終わる構成の転換が珍しいし、問題そのものは何ひとつ解決していないのに前向きな結末なところも滅多にない。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:イメージBGを普段より多用しているだけでなく、ポケモンショック以降は少なくなった点滅演出を背景にいれこんでいる珍しさが目を引いた。

*3:hokke-ookami.hatenablog.com

*4:2020年話数単位ベストテンにも選んだ。 hokke-ookami.hatenablog.com