「希望は戦争」を読んで考えた3

次に悪質なのが、「クビが飛んでも動いてみせる。それがフリーターに与えられた自由ではないですか」(鎌田慧)という、現状に甘んじて沈黙せよとは言わないまでも、我々はその手伝いをするつもりはない、勝手にやれという突き放した言論である。赤木が反論しているように、フリーターに代表される弱者は、そもそも闘うための社会的基盤を全く欠いた存在である。「クビが飛んで」しまえばたちまち生活に困窮する彼らに与えられた自由とは、一体何だろうか?彼らの主張は、小泉政権下で構造改革を進め、リベラル知識人が事あるごとに批判する経済学者竹中平蔵の持論「若者には貧しくなる自由がある」と全く同じではないのか?よもやフリーターを「自由な働き方をしている人」と勘違いしている訳ではないだろうが、弱者の味方を自称するにしては、赤木らの置かれた状況に対しての理解が余りにも不足しているのではないだろうか。

以上は、反論する価値の無い論外の主張であるが、赤木の主張に対しては、他にも様々な反論が寄せられているが、残念なが、本人を納得させるものは一つもなかったようだ。次節では、その他の知識人の反応とそれに対する赤木の反論を取り上げ、そこから見える赤木の持つ思想の特徴について検討して行きたい。

4.「99%」という幻想
「俺たちは99%だ❗️」
アメリカで数年前に始まった、通称「ウォール街占拠デモ」でよく使われたアジテーションである。「99%」とは言わないまでもなく、社会的地位の下から99%を指す。このフレーズから規定されるデモの性格は、もちろん階級闘争しかない。大多数の貧しい人々が手を取り合い、ウォール街に象徴される特権階級と対峙する。この運動の盛り上がりには、赤木のような立場にある者にとっては一見、希望に見える。実際、「大多数の連帯」に希望を見出す言説も多い。時期こそ前後するが、若松孝二(2012年死去)はフランスで行われた若者たちによるデモを引き合いに出しながら、「お前たちも、立ち上がれ」と呼びかける。

次回に続く

下は赤木さんと同じく「ロスジェネ」世代の作家、雨宮処凛さんの著書。一貫して弱者の立場から社会問題を鋭く斬っています。深刻な話題も文章力で上手くカバー。重い問題を軽ーく読むことができる、大変お勧めの本です。

生きさせろ!難民化する若者たち (ちくま文庫)

生きさせろ!難民化する若者たち (ちくま文庫)