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なんでそんなにゲーム業界に入れるの?

なんでそんなにゲーム業界に入れるの?~DEA式ゲーム制作者養成手法~

なんでそんなにゲーム業界に入れるの?~DEA式ゲーム制作者養成手法~

某所で以前に「DEA(デジタルエンタテインメントアカデミー)」というゲーム業界向け学校の存在を知って、興味があったので読んでみました。
DEAはすでに2008年の卒業生を送り出したあと閉校しています。
デジタルエンタテインメントアカデミー - ウィキペディア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%86%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%A2%E3%82%AB%E3%83%87%E3%83%9F%E3%83%BC

本を一読した感想として、DEAは多くのゲーム会社の出資を得て、業界の即戦力になる人材を育成する学校を経営した実例としてとても貴重な存在だなあと思いました。ただ、ずいぶんと美化されて書かれている気はしました…。


帯には「これは、現在の教育制度に対する挑戦状だ!」とあります。帯の文句というのは出版社側が販売促進のために考えてつけるもので、著者の考えが反映されているとは限らないのですが、なんだかずいぶんと一方的な言い分のように感じました。
もともと文科省の教育制度は合わないと言って独自路線を歩んだことが、良い結果としては業界に即戦力を提供できることにつながり、悪い結果としては大学化を困難にし、DEAの閉校を招きました。
本のマンガのラストや本の最後の方に載っている「閉校の理由」を読むと、まるでDEAの大学化を許さない教育制度が悪いかのようにとれますが、それは当初からの方向性の違いなので仕方がないのでは。


「閉校の理由」の一番目には「少子化」が挙げられています。高校を卒業してすぐ入学する生徒が減ってしまったのだそうです。
ゲーム業界への抜群の就職率を誇りながらなぜ入学希望者が減ってしまったのでしょうか。


上記のURLのWikipediaの項目内にかかれており(注:2009/5/4の時点)、本の中でも触れられていますが、DEAでは「向いていない」学生には退学を進めていたそうです。
つまり優秀な学生しか卒業できず、当然優秀な学生は就職が決まりやすい。高い就職率は学生のふるい落としの結果でもあるのではないでしょうか。
また、DEAはいわゆる「専門学校」ではないため卒業しても専門学校卒の資格(専門士)は取れません。2年間通ってなんとか卒業しても、もしゲーム会社に就職がきまらなければ何も残らない。ずいぶんリスキーです。


DEAの方針はあまりに業界のほうを向きすぎて、入学希望者のニーズからかけ離れています。
ゲームスクールに入学しようかどうか迷っている高校生の気持ちになって考えてみると、まだ自分にはゲームを作る能力がないし、適正もまだわからないから、まずスクールに行きたいと考えているわけで、学校側がついてこれない学生はふるい落とすという態度だったら不安を感じて入学をためらうでしょう。もしついていけなかった場合、最悪卒業だけして違う道を目指す、など考えるなら他の専門学校、短大、4大のほうが将来の選択肢があります。それにこれらのゲームスクール以外の学校にいってもゲーム会社に就職できる可能性はあります。


DEA側がゲーム業界の即戦力を育てるためについてこられない学生は去ってもらうという態度ならば、とても学生を集めて学費で経営をまわしていくことはできない。その姿勢を貫くのだったら、出資元のゲーム会社がDEAを自社の新卒研修所とみなすくらいの方針で運営費用を丸抱えすればよかったのでは。
出資元のゲーム会社がそれをせず、DEAがなくなったのだとすれば、結局はゲーム業界がDEAのような学校をそれほど必要としていなかったんだろうと思う。
非難の矛先を向けるのは文科省じゃなくて、ゲーム業界じゃないのでしょうか。