原文:http://afe-asie-nord.info/docs/CR_IRSN_juillet_2011.pdf
7月7日(木)に、在日フランス大使館により、『福島原発事故:現状と、環境及び住民に対する影響』と題された講演会、3つのセッションが開催され、総参加数は200名を超えた。
進行は、IRSNのオリヴィエ・イナール、ブルーノ・セサック。
本文書は、在日フランス大使館及びIRSNの協力のもとに作成された、3つのセッションの報告書である。
Q&Aまとめ
- 福島原発の状況
- 食物汚染
- 健康
- 子どもに関しての特殊リスク
- 環境
- その他
質疑応答
1.福島原発の状況
Q. 今後大きな地震がない限り、放射性物質の放出はもはやないと考えていいのでしょうか?
A. 敷地内で、風によって粒子が吹き上げられ、わずかに放射性物質が放出されることはあり得ます。再飛散は些細な規模に止まりますが、存在はします。しかし、飛散防止ゲルが散布されたことにより、粒子は地上にとめおかれ、再飛散の可能性は少なくなっています。加えて、汚染を、放射性物質ではなく質量としてとらえるならば、汚染は大変低いのです。例えば、チェルノブイリ事故によるヨウ素131の放出は、数百グラムにしかならないと考えられています。
Q. 原子炉の底にあるコリウム(訳注:メルトダウンによる原子炉内融解物)はどのような形態なのでしょうか。
A. かなりの確率で、コリウムは原子炉容器の底に移動したと思われます。その一部が容器外に流出した可能性もあります。しかし、現段階では、コリウムの形態が重要なのではありません。いずれにせよ、これらの容器近くの現場に入るには、かなりの長い間待たなければいけないでしょう。例えば、アメリカ合衆国のスリーマイル島事故では、約10年後にようやく立ち入りができたのです。
Q. 原子炉や使用済み核燃料プールに関して、未だどのようなリスクが存在するのでしょうか。
A. 3つの原子炉の燃料棒は溶解しました。使用済み燃料プールも未だ潜在的危険をはらんでいます。特にプールから水が流れ出した場合がそうです。その場合、放射性物質が環境に大量放出されると考えられます。
このようなシナリオを避けるために、支柱によるプール補強がなされました。以上から言って、使用済み燃料棒の撤去は優先課題です。
Q. 2号機の爆発は他とは違ったものだったのでしょうか。
A. 現在判明している限りでは、これも同じく水素爆発のようです。おそらく原子炉建屋の中で爆発が起こった場所が、1号機や3号機とは違ったところだったので、結果も違ったものになったのでしょう。
Q. 溶けた燃料を取り出す方法はあるのでしょうか。
A. スリーマイル島の事故では、燃料の一部が溶けたのが確認されたことで、溶解した燃料を取り出す方法が開発されました。取り出す技術は存在していますし、応用されることでしょうが、恐らく時間がかかるでしょう。
Q. 私たちの状況は、未だ事故後(ポストアクシデント)状況なのでしょうか。
A. 私たちは依然として事故後と呼べる時期にどっぷりとつかっています。詳しく言うならば、緊急段階(3月に放射性物質が大気中に放出された時期)と、今後数十年の“長期的”段階の間の過渡期にいるのです。この過渡期に、国土や住民の監視措置の実施、関連した事項の決定などがなされるでしょう。
2.食物汚染
Q. 加工食品で例えばパンですと、粉は輸入品ですが、製造工程で水、バター、牛乳などが加わります。製造者は、製品に害がないことを保証しているのでしょうか。
A. 製品の無害性については、実際には全く何とも言えません。現在、生鮮品で、販売・消費が禁止されるようなレベル以上にあるものは、非常に少ないと考えられます。このような条件からいって、これら“基本的”原材料から作られた加工品は、消費することに特に支障はありません。例えば、チーズの製造では、牛乳に比べて、放射性物質レベルが“低く”なります。これは周知の現象で、製造工程によるものです。
Q. 粉、砂糖、コーヒー、お茶、カカオ、またはマスタードのような輸入品、ケチャップ、パスタ、トマト缶などのような保存食品は、放射性物質の放出時に影響のあるところに保管されていた場合、汚染されることはあるのでしょうか。
A. 密閉された状態の食品(缶詰、超高温殺菌牛乳パック、PVCやガラス瓶)についてはリスクは皆無です。包装が汚染されることはあるかも知れませんが、中身はされません。実際、包装についた放射性物質は、中身を“変える”ことはできませんし、外側の包装と中身の間を汚染が移転するということは、無視して問題ありません。
Q. 食肉汚染の由来は何でしょうか。
A. 汚染されたわら(特に福島県において、事故時に外に置いてあった稲わら)が動物の飼料となり、汚染肉の原因となりました。
Q. 土壌では、高い放射性物質がまだ検出されているのでしょうか。
A. 現在、汚染は定着しており、かなりの程度はもはや移動はしません。純粋に原子力学の観点から言うと、ヨウ素(131)は、半減期(8日)のため、もはやほぼ測定不可です。反対に、環境中では、セシウム(134、137)や半減期の長い放射性物質は、未だかなり検出されています。われわれの知る限り、それらの健康に関する影響についての議論はまだされていません。論争の主な焦点は、微量の放射性物質についてです。医学的に言って、低線量被ばくによる明確な結果は得られていないので、この領域でははっきりとした回答がないのです。環境からの攻撃(化学的なもの、バクテリア、ウイルス、放射性物質など)に対して、全員が平等ということはないのです。同じ攻撃に対して、ある人は病気になり、ある人はなりません。各々が放射線防護やそれぞれの線量に気をつけなければならないということはありますが、技術的な観点からすると、リスク的には100mSv以下の量(の被曝)に対しては特定の指示はありません。
当初の放射性物質の堆積物に関連して、農業において植物中に放射性物質が濃縮されるケースはありえます。土壌のBq/m2と農産物のBq/kgの関係は、相対的に複雑です。いずれにせよ、堆積物による収穫物の根からの吸い上げは、時間とともに減少する傾向にあります。
Q. 最も汚染されている食品は何ですか。
A. 水や、現時点では米は大丈夫です。水道水も心配せずに飲むことができます(ただし福島周辺は例外)。リスクとしては、海産物、キノコがあり、これらの食品では、放射性物質が濃縮される傾向があります。
Q. 福島産の食品は避けるべきですか。
A. 一般的にいって、幅広く食品や原産地を選ぶことが大切です。そうすることによって、万一汚染されているかもしれない一定地域の食品を恒常的に摂取することを避けられるのです。食肉に関しては、汚染されたわらを摂取することにより肉が汚染されます。これら家畜が放射性物質を含んでいないわらを摂取することにより、自然に除染がなされます。
Q. 土壌の汚染を考慮して、ニンジンやその他根菜のような野菜は食べることができるのでしょうか。
A. 野菜の場合、放射性物質濃度の顕著な減少が確認されています。野菜に対する直接汚染の最初の段階は終了したのです(大気中への放出がもはやないのですから)。現在確認される第二段階として、根を介した汚染があります(土中から水を介して根に移転します)。この移転メカニズムは、当然直接汚染よりも影響は低いですし、大部分の農作物の汚染の減少の説明ともなります。
将来的には、土壌をカリウムを含んだ肥料で飽和させるという技術が考えられます。これは、チェルノブイリ事故の後にテストされたものです。実際、カリウムはセシウムの競合相手なのです。土をカリウムで満たすことにより、セシウムが今後実る植物に定着する能力を減少させられます。
Q. お米は危ないですか。
A. 5000Bq/m2(セシウム)以上の汚染がある土壌では、作付けが禁止されました(試験用の数区画を除いては)。しかしながら、放射性物質の転移という、フランスでもこの種の作物に関してはよくわかっていない現象を理解するためにも、米はあらゆる成長段階で調査されています。
Q. なぜ静岡の緑茶に放射性物質が存在するのでしょうか。
A. 茶葉についての研究は不足していますが、ある仮説が挙げられます。植物の組成自体をみると、沢山の葉があることにより、大気との接触面積が大きくなります。このため、植物が放射性粒子を最大限とらえてしまうのです。それに加え、製造過程で水分を蒸発させて茶葉を乾燥させることにより、放射性物質が濃縮されます。
このことを踏まえて、静岡産の汚染茶をIRSNでテストしたところ、1mSv摂取するのに、このお茶を3~4000リットル飲まなければならないという結果が出ました。
Q. 基準値を4倍超える魚を一尾食べるということは、基準値にある魚を4尾食べることと同じですか。
A. 被ばくの観点で言うと、確かにそうです。
Q. 食物の放射性物質基準は何を意味するのでしょうか。
A. 国際的には、一年間に摂取する食物の10%が基準値に達しているならば、一年後の最終的被ばく量は1mSv である、ということで基準が制定されています。
Q. 日本の食品検査は信用に足りますか。
A. リスクというのは、福島産の身元不明な食物や、より一般的に言えば、許可されている基準値以上の放射性物質汚染のレベルにある食物を食べることです。しかしこれは現段階では稀なことであり、人体の健康への深刻な危険は確認されていません。
フランスの、独立系放射性物質検査ラボACRO(*)は、日本産の食品を採取して測定を行いました。さらにIRSNでサンプルの一部を測定しました。結果は、日本の諸機関の測定結果と変わりないものでした。ですから、汚染管理の広範囲な不正行為というのは考えにくいと思いますが、エラーというのは可能性としてはあります。
(*)ACRO:Association pour le Controle de la Radioactivite de l’Ouest 西側放射性物質監視団体 http://acro.eu.org
Q. 一回で、健康に害のある量を摂取することはあり得ますか。
A. 現時点ではありません。現在測定されている汚染値は、通常の2~5倍です。このレベルに汚染された食物を、恒常的に大量に摂取しないと、健康に影響が出てくるまでにはなりません。
Q. 子どもの食事に関して特に用心するべき点はなんでしょう。
A. この領域においては、子どもたち親たちよりも放射性物質への感受性が高いということはあります。しかし、食物の販売・消費を取り巻く衛生的基準は、放射性物質による害という点では、もっとも厳しい状況を考慮して制定されたものです。このことにより、日本政府は、国民全体を保護し、また場合によっては特殊な値もカバーするような総合的な値を定めました。特に、飲料水がそうでした。水は、ミルクで育てている場合、乳児の栄養摂取において、重要な要素です。
感受性は、核種によっても違います。ヨウ素に対しては感受性は高いですが、セシウムに対しては低いです。
日本で続けて基準値越えの食物が発見されていることに関しては、食物の生産地の幅を広げること、そしてそれらが検査済みであると確認すること、という我々の勧告を改めて提唱します。この条件下では、放射線防護の点からのみいうと、子どもの食事を親の食事と別にする必要はありません。
3.健康
Q. 人間への影響から言って、mSv に対し、どのようなことが分かっているのでしょうか。
A. すべての人は一年に2~10mSvの放射を受けています。自然放射線や、いくつかの医療検査、原子力施設の日常稼働から非常にわずか(フランスでは1%弱)に受けます。しかし、これらの線量にはかなり差があり、居住地により大きく左右されます。フランスの首都圏でも、被ばく量の大きな差異があります。低線量被ばくの影響は、今日でもまだ研究途上です。住民の保護基準を定義づけるために、ある仮説(化学的には実証されていませんが、念のため適用されています)が立てられました。それは、それぞれの線量の相当の影響の確率があるということです。この確率は、1mSv近辺の量では非常に弱いものです。
Q. ヨウ素やセシウムを摂取することの危険性はどのようなものですか。
A. ヨウ素は主に甲状腺にたまります。また、同量では、ヨウ素のほうがセシウムよりも危険です。
セシウムは筋肉にたまりやすいものです。セシウムの健康への影響について、チェルノブイリ事故後、ベラルーシで行われた調査では、心血管や白内障を引き起こすことがありうる、としています。しかしこの調査は、厳密な科学的プロトコルを踏んでいないという点で、議論がなされています。現在、新しい研究(IRSNのEPICEプログラム)が、この件に関し、東欧で進行中です。こちらのリンクで、研究についての概要が見られます。
※訳注:EPICE=Evaluation des Pathologies Induites par une contamination au CEsium 137=「セシウム137被曝による疾病の評価」
Q. 東京の放射線量は低いですが、粒子の吸入は依然として危険ではありませんか。
A. 粒子が着地すると、そこに吸着し、はがれにくくなるという傾向があります。ですから放射性物質を吸い込む可能性は、事故後大幅に減っています。潜在的リスクの順番としては、まず、いくつかの地域に存在する放射性堆積物による直接被ばくが挙げられます。次に汚染食物摂取、最後に空気中の放射性粒子の吸入があります。
Q. 壊死を引き起こすくらいの被ばく量はおおよそどのくらいなのでしょうか。
A. 器官にもよりますが、おおよそ数シーベルト、つまり1000mSv以上の被ばくレベルになります。
Q. どのような過程を経て、ガンと低線量被ばくが関連付けられるのでしょうか。
A. いくつかのガン(たとえば前立腺ガン)は放射線被ばくでは引き起こされないということはわかっています。逆に、甲状腺がんは、被ばくに深く関係するものです。他のガンのタイプについては、原因が様々なために、関連付けはずっと難しいです。
4.子どもに関する特定のリスク
Q. 砂場で遊ばせることに、リスクはありますか。
A. IRSNでは、屋外活動後に手洗いを推奨していますが、それは放射性物質の皮膚への影響を避けるためではなく(確かに皮膚経由の被ばくもあり、我々の関心の中でもマイナーなケースなのですが)、意図せずに、手から口へ汚染が入り込むのを防ぐためなのです。
砂場で遊ぶ子供の場合も同様に、もっとも重要なのは、この汚染摂取です。
子どもにとっての汚染リスクは、セシウムやそのほかの核種を含んだ砂を繰り返し口に入れてしまうことです。東京の現在の汚染レベルでは、大量の砂を摂取しないと、健康への顕著な影響は出ません。セシウム134と137が混じった100Bq/kgの汚染砂を300kg以上摂取すると、1mSvの被ばくになります。
Q. 自転車で転んだ場合、気をつけるべき点は何でしょうか。
A. 現時点では、日本の道路に降下した放射性物質は、アスファルトにしっかりとくっついています。しかし、埃による一定の汚染も続いています。この埃に含まれる放射性物質レベルは、地上よりも低いです。これは、特に空中へ舞い上がるために、希釈されていくということがあります。
このアスファルトで子どもが転んだ場合、理論的には、その子供のたとえば膝と、微量の放射性物質を含んだ埃との接触はあり得ます。ただ、接触面が非常に狭いので、放射性物質量は全く取るに足らないもので、いかなるリスクもありません。
一方で、通常通り傷口の洗浄を行えば、これらの埃をより有効に取り払うことができます。
Q. 屋外でボール遊びをすることで危険はありますか。
A. 戸外でのボール遊びの場合、汚染された埃が空中へ舞い上がるために、放射性物質が移動するということがあります。私の考えでは、ボールというよりも子どもの動きによって、より多くの埃が空中へ浮遊すると思われます。
衛生上の影響から言うと、リスクは、どういうタイプの地面かということと、その地面が最初にどれくらいの汚染を受けたかということに関係してきます。埃は、地面がむき出しで乾燥している場合のみ、かなりの量が舞い上がります。空中に舞い上がることにより、放射性物質は地上から空気中に移り、線量は非常に希釈されます。空中に大量に浮遊する状況では(たとえば、乾燥した農地でトラクターを使用する場合)、地表では1Bqの線量が、空中では100万分の1に減ります。ボールの一部分に関しては、この値はさらに100分の1になります。
さらに、外部被ばくに比べて、汚染埃の吸入は、考慮の必要のない被ばく経路です。ですので、運動場の線量μSv/hが微量でしたら、埃を吸い込むことによる危険というのはほとんど皆無といえます。
5.環境
Q. ある時点から東京には放射性物質はないといわれていますが、これはどうとらえればいいでしょうか。
A. 確かに新たに放射線が蓄積することは起こっていません。しかしながら、放射線は残っています。ヨウ素に関して言えば、半減期が短いために現在では、もはや測定不能です。逆に、セシウム134と137は東京でもまだ測定されています(それぞれ半減期が2年と30年)。東側では、若干のストロンチウムも検出されました。
Q. なぜセシウムの検出状況は、日によって違うのでしょうか。
A. 事故後の非常時には、セシウムは直接蓄積しました。しかし、現在では、雨水の流れ、雪解けなどといった自然現象に伴い、蓄積物は移動しています。雪解けに伴って、川での放射線量がピークに達し、通常値以上の放射性物質が検出された鮭もいくつかでました。
水道水についても、放射性物質ピークが周期的にめぐってくるのが観測されています。このピークは、水処理場のフィルターに放射性粒子がたまり、そして放流されたことによります。
Q. ある一定量の汚染要素が地上に降った場合、そこの収穫物は何10年にもわたり汚染されます。セシウムは”増殖”しないので、土中のセシウム全体量は収穫期ごとに減るのでしょうか、それとも雨水が流れることにより、減少するのでしょうか。
A. 農地について言うと、新たに放射性物質が移動して来ない(大気による蓄積や水流等)のであれば、放射性物質核種の濃度は自然と減少していきます。これは放射性物質半減期(セシウム134で2年、セシウム137で30年)によるということもありますし、植物採取(当初の汚染濃度からすると、一般に効果は弱いですが)によるもの、雨によって地中に潜っていくこと、そして農業によるものでもあります。耕作というのは、耕された土の層では放射性物質が希釈されますし、肥料をまくことにより、耕作地を豊かにしながら、地中にセシウムと競合する要素を混じりこませることができます。このことから、当初放射性物質を受けた土地の収穫物に比べ、その後に続く収穫物のほうが、明らかに汚染度が低くなっていくでしょう。ですので、今後数カ月、数年の間で、植物由来の食物の汚染は減少していく傾向にあります。当初の放射線物質の堆積と関連して、農作物中に放射性物質が濃縮してしまうというケースもあります。現在、土壌のBq/m2と農作物のBq/kgの関係というのは、相対的に言って複雑です。いずれにせよ、放射性物質の堆積量が安定しているならば、今後続く収穫物の根からの転移というのは時間の経過とともに減少する傾向にあります。
Q. 地下水の汚染のリスクというのはありますか?
A. 地下水源は非常に深いところにあり、短期的には汚染のリスクはありません。土壌がフィルターの役割をして、放射線核種を持続的にひきとめておき、その間にも放射線量は減少していきます。数年単位で、水の質が保たれているか監視する体制が必要です。ただし、海への放出は問題ある汚染源です。
Q. 放射線測定器を使っていて、場所によって線量の高いところがあることに気がつきました。東京で避けたほうが良い地域はありますか。
A. 不均質性があることは確かです。都市ではよくみられる現象です(例えば、車の排気物による都市公害などは広く研究されているケースです)。また、転移(雨、流水)、放射線のたまりやすさ(泥の生成)の仕組みなども関係します。面積からすると、このような地域はもともと限られています(下水口、歩道等)し、被ばくという意味でも少量です。
Q. 水遊びについてはどのようなリスクがありますか。
A. 経口摂と比較すると、水遊びは主な被ばく経路とは言えません。また、海や川にたまっている放射性粒子は、拡散されます。ですから放射性物質レベルは、迅速に落ちていくでしょう。ただ、湖や池などにたまっている水は、放射性粒子を捕え、底に蓄積していくリスクがあります。
6.その他
Q. 事故後の被ばく量の指標値に関して、IRSNの果たしている役割とは何でしょうか。
A. フランスにおいては、事故後の状況管理を準備する作業において、行政当局、特にフランス原子力安全当局(ASN)のもとで技術サポートをしています。このような住民保護のための作業中に出される提案(これは現在進行中のプロジェクトで、フランスの規制ではまだ認可されておりませんが)は、放射線防護の国際的決定機関、特にICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に基づいており、IRSN独自のものではありません。フランスにおいては、事故後状況という分野での見解策定には、透明性が求められ、原子力開発者、省庁、IRSN、ASNだけでなく他の人々にも開かれています。この作業を指揮監督するために委員会が設けられ、市民団体(ACROなど)のメンバーが在籍しており、進行中の研究について監査権を持っています。この作業に参加することで、そこで作成されるものに完全に同意しているというわけではありませんし、ACROがいくつかの点について、同意しかねるということもあり得るわけです。
※訳注:ACRO = Association pour le Contrôle de la Radioactivité de l’Ouest = 西フランスにおける放射線監視のための協会。独立系研究所。
Q. 放射性物質測定結果は信頼できるものですか。
A. 日本では、IRSNはフランス大使館(訳注:東京都港区南麻布)の屋根でのみ測定をしています。ですので、そのほかの測定はすべて現地の機関に任せられています。しかし、測定は簡単に実施できるので、データが広範囲に偽造されれば、恐らくすぐにわかってしまうでしょう。
Q. 放射線測定をするのにお勧めの機器はありますか。
A. ありません。しかし、こういった機器は高価であり、一般的には個人というよりも自治体が購入するものである点にご留意ください。
Q. アルファ線はガンマ線よりもより危険ですが、シーベルトとかベクレルということだけが話題に上がっています。これらの測定結果は本当に信頼できるものなのでしょうか。
A. シーベルトというのは生物に対しての影響を指し、異なった影響、異なった放射タイプ(アルファ、ベータ、ガンマ、X)を統合しています。製品販売に関する規格は放射タイプで、つまり放射線の危険度の違いで、区分けしています。
Q. なぜフランスと日本で、放射性物質基準値が違うのでしょうか。
A. チェルノブイリ原発事故後以降、違いが生じました。事故により、基準に対してより安全性が求められるようになり、フランスでは年間5mSvから1mSvになったのです。
欧州での食品販売基準は、EUの加盟国でチェルノブイリから遠方で生活しており、経口摂取でのみ被ばくの可能性のある消費者を保護するために、制定されました。日本の場合、経口摂取且つ他の経路でも被ばくのある可能性のある地域の住民を保護するという目的のため、基準は厳しくなっています。
Q. ”自然放射性物質”というのはどういうことなのでしょうか。
A. 自然放射性物質というのは、人間の活動とは別個に、環境中にある自然界の放射性物質のことです。地中環境からきているテルル放射(土や岩に含まれるカリウム、ウラン、トリウム)と、空や宇宙から来る宇宙放射線に区別されます。
Q. 自然放射性物質と事故から来る放射性物質は、比較可能でしょうか。
A. 外部被ばくに関しては、この二つは同じです。しかし経口摂取や、放射性粒子の吸入による内部被ばくについては違います。
Q. 事故直後の時期で、自宅待機、というのは根拠あることだったのでしょうか。
A. 福島周辺地域に、放射性物質が通過していったときについて言えば、完全に正当な判断だったと言えるでしょう。しかし、東京ではその必要はなかったといえます。
更に医療に関する情報を希望される方のためにIRSNのサイト上で連絡窓口を設けています。寄せられた質問はIRSNの医師に送られます。
またACROのホームページでは、定期的に測定結果が掲載されています。
http://acro.eu.org
※ このレポートの翻訳はTwitterでの呼びかけに応えて頂いた読者の方によって行われ、当ブログ運営者が校正を行ったものです(全ての文責は当ブログ運営者にあります)。ご協力に改めて感謝いたします。また、他の読者の方からも広くご協力を受け付けています。ご興味のある方はこちらの記事をお読みください。
興味深く読ませていただきました。
>日本政府は、国民全体を保護し、また場合によっては特殊な値もカバーするような総合的な値
とありますが、日本の放射性物質に対する「暫定基準値」は驚くほど高いもので、外国からも多数の批判が寄せられていると聞いております。
1キログラムあたりのベクレル値が
放射性ヨウ素:
野菜類(根菜、イモ類を除く)で2000以上
飲料水、牛乳・乳製品で300以上、乳幼児用粉ミルクなどは100以上
放射性セシウム:
飲料水、牛乳・乳製品で200以上
野菜類、穀類、肉・卵・魚その他が500以上
私は子どもを持つ親ですが、チェルノブイリでの健康被害の例や食品の国際基準に照らしてもこれは子どもに適切な値とは思えません。
何を根拠に「子どもの食事を親の食事と別にする必要はありません」とお考えなのでしょうか。お聞かせ願いたいと存じます。
ご質問をありがとうございます。IRSNの医師への質問ということで、翻訳チームからIRSNに質問を投げてみます。
ただし、先月この同じ説明会のスライド資料を別途翻訳した際に、日本と欧州委員会の基準値の比較表がありました(下記リンク参照):
https://genpatsu.files.wordpress.com/2011/07/situation-7-juillet-2011-012.png
>当該記事リンク
IRSNから上記図と同様の回答が返ってくる可能性があることを記しておきます。
※ 他の読者の方にも誤解がないように記しておきますが、このブログでは翻訳者の私見を述べている訳ではなく、日本発以外の情報源を日本語で紹介するために諸メディアや機関の記事を翻訳しているに過ぎません。ですのでここで紹介している記事の内容の正否については読者の方にご判断頂くしかありません。