コミックナタリーのインタビュー感想

「マンガのお仕事」マンガニュースサイトのお仕事 パート1
http://manganavi.jp/interview/job/20090605/

「マンガのお仕事」マンガニュースサイトのお仕事 パート2
http://manganavi.jp/interview/job/20090606/

「マンガのお仕事」マンガニュースサイトのお仕事 パート3
http://manganavi.jp/interview/job/20090607/


面白かった。興味深く読んだので引用しながら紹介したいと思う。

ただ、独自に見えるいくつかの原因があると思うんですけど、ひとつは、ニュースサイトって個人でやっている所が多いじゃないですか。そうすると個人の嗜好性が強く出るので、どうしても萌えにネタが偏りがちになると思うんですね。ボクらはそこをニュートラルに保ちたいと思うので、ボクらが特異というよりは、萌え偏重なネット界の方に偏りがあるのかなという気がします。

個人の嗜好性もそうですけど、後のインタビューに触れられるように萌え系、特に萌エロ系なネタはアクセス数が違うんですよね。個人でやってるとやっぱり何かしらの手応えが欲しくて、目に見えるのはアクセス数な訳です。感想のメールとかなんて全くといって良い程来ないし、そうするとアクセス数が増えるそっち系の方面にばかり行ってしまい、結局小さなパイを奪い合うという形になってしまうのが僕ら個人ニュースサイトの現状です。
ニュートラルに保つというのは存外に難しいものです。正直私も「へうげもの」とか「仁 JIN」とか「センゴク 天正記」とかどっちかというと硬派なネタもやりたかったりするのですが、従来の閲覧者の客層的に受けないだろうな、と萎縮しちゃったりしてるうちに今に至るという感じ。

しかもうちは会社としてやっている以上、取材元に裏を取る、掲載許可を取る、著作権的に問題のあることはしない、図版は勝手にスキャンするんじゃなくて必ず先方からもらう、という旧来からのメディアの儀礼というのを重んじています。

これも個人ではちょっと厳しい。スキャンとかは勝手にしまくるのが個人サイト。詳しくは後述。

もうひとつは、ガードされる。「ウチは情報は公式サイトに載せているので、それ以外は別に紹介してもらう必要はないし、図版を載せられるのは困ります」ということもあります。特に大手出版社さんには多かったですね。

やっぱりそう考えてる出版社があるんだなぁ、と。こういった考えを持つ出版社だからこそ自前のトコにしかWebコミックを置かないんだよなぁ。
ナタリーの場合は音楽業界で既に前例と成功例があるのが素晴らしいと思う。

―― ボクも最初にサイトをやり始めた時に思ったんですけど、マンガのネタってどこで仕入れるかというとその場所が無いんですよね。本当に情報ハブが無いんですよ。それぞれの出版社のサイトに情報があるといっても、何ヶ月も更新されないところがざらにあるじゃないですか。

そういえば昔はアフタヌーンは全く更新されないとかザラでしてね…(笑) 秋田書店は数年前から何も変わってなかったり。
昔は最後通牒さんが漫画家の個人サイトの掲示板までチェックしてて情報ハブとして凄く機能されてたのですが、更新がぱったりと止まってからは本当に無くなりましたからね。やはりそこらへんは個人の限界とか色々とあるんだろうなぁ、と。

やってて悔しいのは、ウチは「×月×日×時まで外に出さないでください」とかニュースの解禁日を指定されることが多いんですけど、個人サイトだと解禁なんか関係ないから出したい放題じゃないですか。図版だってスキャンしまくりで。あれには勝てない。

個人だと2chの流出っぽい画像をソースにして飛ばし記事書くのとか結構ありますからね。MOONPHASEみたいにタレコミとして情報が先々に出るトコとかもありますし。あと、スキャンしまくりは個人サイト間でも昔から物議を醸し出してる問題で、個人的な結論としては「スキャンには勝てない。でも自分は積極的にやりたくない」といったトコロ。
昔知り合いの漫画編集者に聞いてみたことがあるのですが「私はある程度なら宣伝にもなっておいしいというのはありますが、編集、漫画家によっては(スキャンとか)凄く嫌う人が居るのも確かです。千差万別ですね」と応えて頂きました。
余談ですがそういった事にもっと寛容な別の編集さんに「んじゃ大炎上とかはどうなんすか?」と聞いたら「んー、私でもギリギリアウト(笑)」という回答が得られました。(笑)

逆に「こいつらは解禁日を指定したらちゃんと守るメディアなんだ」と、そういう風に思ってもらいたいんですよね。「あなたたちの味方なんだよ。うまく使えば助けになるんだよ」というのをわかって欲しい。
最近、ようやく編集部の方々の中でも知名度が出てきて、「おっ、コミックナタリー読んでるよ。ちょうど掲載して欲しいと思ってる話があったところなんだ」と言ってくださる方も増えてきました。

でもまぁ、即物的なアクセスは得られなくても見えない継続的な信頼を得られるのは大きいと思うのでこのまま是非やって欲しいトコロ。

本当に面倒くさいんですよ。「コミックナタリーってどうやってネタを集めてるんですか?」ってしょっちゅう聞かれるんですよ。「企業秘密ですよね?」って言われるんですけど、全然企業秘密じゃないのでいつもお伝えしてるんです。
週に20誌くらいを買って目を通して、週に2、3回書店を回って単行本の帯をチェックして、あとは毎朝1600サイトくらい開いて閉じてるだけです。タブブラウザって100枚くらい一気に開けるじゃないですか。ばーって開いて「今日は(更新されて)無い!無い!」って見ていくだけ。それだけですよ。
「ああいう(コミックナタリーのような)のをやりたいんだよね」っていう方にはいつも教えてるんですけど、誰もやらないですね。

漫画好きなら本屋は毎日行くものだし新刊陳列棚も毎日当然チェックしてるんで何か親近感。ただ雑誌は人海戦術の方が強いだろうなぁ、とちょっと口惜しい。(笑)。それと巡回1600サイトは個人ニュースサイトやってる人たちにとってはそれほど意外ではないんじゃないかな。ただ非効率だな、とは思いますが。むしろ個人サイトは一日の長がある感じ。伊達に何年もサイト巡回やってないべ?RSS配信している出版社のサイトは少ないけど、アンテナとかWWWCとか駆使すれば比較的楽に済みます。私だと登録している個人のイラストサイトとかだと2000〜3000件くらいでしょうか。やったことない人には信じられないかも知れないけど、ここら辺は慣れというか習慣化すれば結構なんとでもなるもんです。

出版社からのニュースリリースが増えればもう少し楽にもなれるんですが。

現状、難しいですからねぇ。(特に秋田書店はチャンピオンRED除いて…)

サイトをやってみてすぐわかったんですが、エロの集客力というのは、ものすごいものがあるんです。パンチラの表紙を載せただけで、ページビューが跳ね上がる。でもウチはそこに手を出せないんですね。なぜかといえば、コミックナタリーは『のだめ(カンタービレ)』を読むような普通のOLさんに見てほしいと思ってるんです。OLさんが開いて、トップページにオッパイ、おパンツでは速攻でアウトですよ。

いやー、エロの集客力ってのは凄いですよ、ホント。うちのサイトでもエロ漫画のレビューとかは無駄に多かったりとかね。一度エロ漫画のレビューで「クリックすると全体図が」とかやったらとんでもないクリック率が出て「みんなに読んで貰えるような上手いキャッチコピーを考えなきゃ…」と頑張ってたのがアホらしくなりましたから。(笑)
実際アキバblogとかも昔に比べて18禁同人誌のネタとか増えましたからね。まぁ、それだけ凄いということです。ただ、ニッチな方面に行っちゃうので必ずどこかで頭打ちになって、パイの奪い合いになるのは明白なのですが…

―― その収益モデルって今後どうしていくんですか?


できることといったら、ひとつはニュース配信ですね。日々のニュース記事を月いくらかで売る。

これも個人では出来ない事だなぁ。個人でビジネスモデルってアドセンスとAmazonアソシエイトの複合技とかだろうけど、それで収益モデル立ててるトコなんて私が知る限り一人か二人くらいしか知らない。大抵の個人サイトは時給換算すると横島君以下です。むしろ幽霊時代のおキヌちゃん並みかと。
ふと思ったけど、出版社もmixiとかにニュース配信ならぬ漫画配信とかして採算採ろうとか考えてないのかな。勿体ない。

だからコミックでも、今コミックナタリー編集部のイチオシはこれ!っていうのは出さないつもりでいるんですよね。それをやるなら、例えばタレントさんが連載コラムで言ってるくらいで留めておきたいと思ってます。
あと、もうひとつはランキングをやりたいんですよね。マンガ界にはまだ音楽のオリコンに当たるランキングがないんですよ。
トーハン調べとか「TSUTAYA調べ」とか「有隣堂調べ」という個別のランキングはあるんですけど、オリコンみたいな「ようわからんけどとにかくこれがスタンダードです!」っていう総合ランキングって無い。その座が空いてるんなら、ほしいんですよね。
やっぱり何かでスタンダードを取らないと会社って続かないじゃないですか。

Pixivみたいに登録ユーザーが☆付けるとかしたら面白いんですけどね。出版社が掲載しているWebコミックの情報を集めてPixiv方式の集計取ってマンスリーランクとかやったら面白いなぁ、というぽわぽわした思いがあってWebコミックナタリーが欲しいとか以前書いた訳で。

ボクらも、結局はコミックナタリーを通じて知らなかった面白いマンガと出合うことが出来て、それで人生が楽しくなってくれればいい。なにより僕が面白いマンガと出会っていたいし。
ただ、もうちょっとメジャーなグラウンドへは行きたいですね。

これはよく判るなぁ。凄く良く判る。面白い作品を伝えたいし、伝えられたい。メジャーなグラウンドに出て行って、より多くの人に伝える機会が欲しいというのは本当によく判る。

だいたい世の中の人は合コンの一晩には1万円くらい平気で使うくせに、マンガに月1万円を払う人ってすごく少ないんですよ。
だから、せめて千円でいいので「コミックナタリーのせいで、今月千円余計にマンガに使っちゃったよ」って言ってくれる人が10万人作れれば、それが一番なんですよ。

そう! サイトやってて一番嬉しいのがこの手の反応! 「フランさんが紹介してたから買ったけどLandreaallって滅茶苦茶面白いですね!」とか言われたら「サイトやってた甲斐があった…」って思う訳です。個人のサイトだとそれが1000人も作れれば幸せなんだけど、10万人とか流石な野望だな、と。




コミックナタリーの中の人のインタビューですが、親近感とか共感できる点が多くて面白かったです。個人だから出来ること、企業だから出来ること、というのはやはり違うんだけど目指すトコロは同じなんだと判ったので今後個人サイトとコミックナタリーの様な企業サイトがWin-Winの関係を築けて行けたらと思います。