読書記録

読書記録

36冊目 社会科授業のユニバーサルデザイン 著者 村田辰明 東洋館出版社 2013

授業のユニバーサルデザインとは、「学力の優劣や発達障害の有無にかかわらず、すべての子どもが、楽しくわかる・できることをめざし、教科における工夫、様々な子どもへの配慮を駆使して行う通常学級における授業のデザイン」(第13頁)のことを言います。

 

そして、それを社会科授業でも実現していこうというのが本書の主眼です。

 

本書で紹介されてる視点は、授業が上手いと言われている先生の多くが自然に実践されていることであると思います。

 

例えば、「どんな工夫をしていますか?」という問いから、「おにぎりの数を増やすのはいつだと思いますか?」という問いに変えることで、思考すべきことを「焦点化」する工夫が紹介されてたり、写真資料等を見せる際、一部を隠したり、一部を拡大・縮小したり、間違いをあえて作ったり「視覚化」の工夫をすることで、注目させたい部分に目を向けさせられたり、一工夫で子どもたちの学習への意欲が変わってくるだろうな、という指導技術が紹介されています。

 

また「子どもが所持している社会的見方・考え方を、他の社会事象に重ねてみること」(第98頁)と定義されている「スパイラル化」という視点を、自分はとても大切にしていて、一度学習した知識が、次の学習では活用すべき見方・考え方となっていくよう、単元構成を工夫しています。

 

社会科の授業実践の書籍は、どうしても「教材」が中心になることが多いです。

 

しかし、一番大切なのは、目の前の子どもたち。

 

子どもたちの困り感に目を向け、様々な子どもたちに配慮しながら授業を行っていこうという視点は、これから必須になる視点であると思いますし、社会科の授業者に欠けがちな視点であると思います。

 

特に中学校社会科の教師には欠けているなぁと思うことが少なくありません。

 

授業中にポカンとしている生徒がいる。

 

その生徒が分かるために、発問を「焦点化」する必要があったのか、資料の「視覚化」を分かりやすく行う必要があったのか、理解した事項を説明し合うなど「共有化」を図る必要があったのか、何度も学習を繰り返す「スパイラル化」を行っていく必要があるのか。

 

考えれば考えるほど、必須の観点であると思います。

 

ユニバーサルデザイン的な視点での授業の構想は、絶対に持っていなければいけない視点であるなぁと、改めて感じました。