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ECとメーカーの未来をデータで探る

実はBtoCよりBtoBのほうがEC向き?特に重要な“信用性”の訴求ポイント4つを紹介

 徐々に国内のEC化率が向上する中、注目を集めているのがBtoB-ECの可能性です。株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト 本谷知彦氏が、データを基に日本のEC市場を解剖する本連載。今回は、BtoBがECに向いている理由と、成功のために押さえておきたいポイントを紹介します。

前回の記事はこちら

本来のBtoB-ECの可能性を数字で理解する

 2022年における物販系BtoC-EC市場規模は、約14兆円です。一方で、企業間取引、すなわちBtoB-EC市場規模は約420兆円と、単純計算でBtoC-ECの30倍となっています。これが、「BtoB-ECにはチャンスがある」と言われる所以です。

 ただし、表面的な数字の規模の大きさに惑わされないよう気を付けたいところです。約420兆円と巨大な市場であるのには、明確な理由があります。

 経済産業省が発表したこの数値は、EDI(Electronic Data Interchange)と呼ばれる企業間の電子的な受発注の売上高となっています。かいつまんで説明すると、原材料の製造から加工・組み立てによって完成した製品が一次卸、二次卸を経て小売にわたる一連のサプライチェーンの中で、それぞれの企業間の電子取引の売上が都度計上されているのです。つまり、製造から小売に達するまでの間に、二重、三重と売上高が積み上がり、見た目上は市場規模が大きくなります。

B2B-EC市場規模・EC化率の推移と注意点
BtoB-EC市場規模・EC化率の推移と注意点 出典:経済産業省「電子商取引実態調査」

 EDIは、請求書の処理をはじめ「企業間取引の事務作業を電子化したもの」と表現したほうが良いでしょう。そのため、EDI=BtoB-ECとも言い切れません。

 EDIとは別に、BtoB-ECには、オフィスで使用するPCや什器、工場で使用する工具、介護で使用する介護用品など、企業が本業を行うにあたって必要となる部材をEC販売するケースがあります。私は、これを「EDI型」BtoB-ECに対し、「小売型」BtoB-ECと呼んで区別しています。

 小売型BtoB-ECの代表的なサービスとして、「ASKUL」「たのめーる」「モノタロウ」が挙げられます。それぞれの売上高は、ASKULが2024年5月期で約4,091億円、たのめーるが2023年12月期で1,981億円、モノタロウも同時期で約2,434億円です。なお、これらの総合小売やメーカーを含めた小売型BtoB-EC市場規模はまだ2兆円程度で、EC化率は企業間の商取引全体の約7%だと私は推計しています。伸び代が大きいのです。

 企業の買い物は、実店舗・EC・FAX・メール・LINE・電話・販売企業の担当営業経由と、多様な手段があります。驚くかもしれませんが、実際のところ、令和の時代になってもFAXによる注文が未だに多いのが現状です。2022年時点で、企業のFAXの利用率は43.7%、受発注書のやり取りに利用しているケースは49.0%という統計もあります。

業務におけるFAXの使用状況およびその用途(2022年)
業務におけるFAXの使用状況およびその用途(2022年) 出典:一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会 CIAJ画像情報ファクシミリ委員会「【報告書】ファクシミリに関する調査(2022年)」

 個人による実店舗での買い物は、商品の実物を見たり、店舗の雰囲気を感じたりと楽しい体験でしょう。しかし、企業の場合、必要な商品の調達はあくまでも仕事です。感情体験は、購入の意思決定に大きく影響しないと考えられます。

 代わりに求められるのが購入手段の効率性です。FAXが未だ現役なのは、それがその企業や担当者にとって効率的なやり方とされてきたからかもしれません。今までのやり方を変えるのに抵抗がある企業もあるでしょう。

 しかし、実際にはFAXよりもEC販売のほうが効率的に取引を進められる手段であるはずです。BtoCよりもBtoBのほうが、よりEC向きではないかと私は考えています。

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この記事の著者

株式会社デジタルコマース総合研究所 代表取締役 ECアナリスト 本谷知彦(モトタニ トモヒコ)

シンクタンク大和総研にてITの主任研究員、金融システム系コンサルタント等を経て、2013年より国内外の産業調査・コンサルティング業務にシニアコンサルタントとして従事。2017年担当部長兼チーフコンサルタントに就任。EC業界のスタンダードな調査レポートとなっている経済産業省の電子商取引市場調査を201...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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