連座とは、連帯責任である。
ある犯罪や悪事を犯した時に、それ自体に関わっていなくてもその人物と利害関係ないし血縁関係にあった人間に、同等ないしそれに準ずる処罰を加えること。血縁関係の場合は縁坐と呼ぶが、慣用として連座が用いられることも多い。
いわゆる連帯責任ともいうべき制度で、特に血縁に基づく縁坐については儒教思想の流れを汲んで血を強く意識する中国や朝鮮、ベトナムなどで盛んに運用され、唐代や明代に施行された律(刑法)でも謀反の罪については唐代では16歳以上の父子を斬り、15歳以下の子女や兄弟姉妹、祖父母の財産を没収するとしており、明代においては更に厳しく16歳以上の当人の祖父母から孫まで同居していれば全員死刑にするという過酷な処罰がなされた。我が国でも江戸時代までは縁坐(連座)に基づく処罰が運用されている。現在でも北朝鮮では犯罪者の三親等に渡って処刑・強制収容所送りにしていたり、韓国では親日派(日本統治時代における対日協力者)の子孫から財産を没収する法律が存在している。
当然現代においては如何に家族といえども別個の個人であるため縁坐は廃止されているが、利害関係に基づく連座制は公職選挙法の規定に存在している。
民法714条では責任無能力者が事件や不法行為を起こした際に、保護者や監督者が損害賠償を支払わなければならないとしているが、これは仕組みとしては自身には免責されていることと、そもそも血縁でなくても保護・監督する立場にあれば損害賠償が発生するので連座や縁坐とは見られることはない。
これら以外でも、ローマ帝国では二代目の皇帝ティベリウスが反乱を企てた近衛兵の将軍・セイヤヌスを一族皆殺しにした例があるし、中世のドイツではジッペとよばれる血縁集団があり、ジッペの構成員がなにか問題を起こした時は全員で賠償責任を負うような慣習法が存在したとされており、日本や中国でなくてもそのような例は存在する。
日本における連座制は大宝律令に始まるとされ、そこでは特に重い謀反・謀叛・大逆・私鋳の4つの罪に対して科せられるとしていた。鎌倉時代の御成敗式目や、戦国時代の分国法にも同様の規定が設けられていた。
御成敗式目の連座に関する項目は第10条・第11条・第17条に存在しており、
第十条
一殺害刃傷罪科事、 付父子咎相互被應否事
右或依當坐之諍論、或依遊宴之酔狂、不應之外若犯殺害者、其身被行死罪、並被處流罪、雖被没収所帯、其父其子不相交者、互不可懸之、次刃傷科事、同可准之、
次或子或孫於殺害父祖之敵、父祖縦雖不相知、可被處其罪科、爲散父祖之憤、忽遂宿意之故也、次其子若欲奪人之所職、若爲取人之財寶、雖企殺害、其父不知之由、在状分明者、不可處縁坐第十一条
一、依夫罪過、妻女所領沒收否事
右於謀叛殺害并山賊海賊夜討強盗等重科者、可懸夫咎也、但依當座之口論、若及刃傷殺害者、不可懸之第十七条
一、同時合戰罪過父子各別事
右父者雖交京方、其子候關東、子者雖交京方、其父候關東之輩、賞罰已異、罪科何混、又西國住人等、雖爲父雖爲子、一人參京方者、住國之父子不可遁其咎、雖不同道、依令同心也、但行程境遙音信難通、共不知子細者、互難被處罪科歟
かいつまんでいえば、第10条は人を殺したら仮に口喧嘩の延長でも死罪ないし流罪に処し、財産も没収するとし、特にその理由が先祖の敵など宿縁によるものならば、父や祖父母の財産も没収すると書かれている。これは親族による争いを未然に防止する狙いがあったと考えられる。
第11条には、謀反や殺人並びに夜討ち・強盗などの重罪ならば妻の所領も没収すると定めているが、口論によるやむを得ない殺人ならばそれには及ばないと書かれており、第17条には、同じ合戦で父子で敵味方に別れた場合にはどちらも処罰すると書かれている。
この御成敗式目の規定は長く武家の法律のテンプレになったため、長くこの精神を受け継いだ条文が残り続けた。
江戸時代中期になり、徳川吉宗の時代になると『公事方御定書』という御成敗式目や分国法を見たうえでの大幅なブラッシュアップがなされた法典が整備されるようになった。
これはいわゆる疑わしきは罰せずのような配慮する事項が設けられたり、親子間の縁坐を原則としてやめるよう求めるなど先進的な条文が多くあった。しかし、御定書上巻の40条には主人(奉公人が店主を殺すなど)殺しや親殺しについては連座の可能性を残す条文が書かれているので全面廃止とはならなかった。
江戸時代においては安土桃山以前のような拡大した縁坐や連座制は縮小されつつあったものの、やはり特に親殺しなど封建社会の秩序を揺るがしかねないものについては厳しく処せられる傾向が残り、その延長線上で連座制が残り続けた。
このような血縁に基づく刑事罰は明治に入った1882年に(旧)刑法が施行されたことで完全に廃止された。
(総括主宰者、出納責任者等の選挙犯罪による公職の候補者等であつた者の当選無効及び立候補の禁止)
第二百五十一条の二 次の各号に掲げる者が第二百二十一条、第二百二十二条、第二百二十三条又は第二百二十三条の二の罪を犯し刑に処せられたとき(第四号及び第五号に掲げる者については、これらの罪を犯し禁錮以上の刑に処せられたとき)は、当該公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(以下この条において「公職の候補者等」という。)であつた者の当選は無効とし、かつ、これらの者は、第二百五十一条の五に規定する時から五年間、当該選挙に係る選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)において行われる当該公職に係る選挙において公職の候補者となり、又は公職の候補者であることができない。この場合において、当該公職の候補者等であつた者で衆議院(小選挙区選出)議員の選挙における候補者であつたものが、当該選挙と同時に行われた衆議院(比例代表選出)議員の選挙における当選人となつたときは、当該当選人の当選は、無効とする。
(組織的選挙運動管理者等の選挙犯罪による公職の候補者等であつた者の当選無効及び立候補の禁止)
第二百五十一条の三 組織的選挙運動管理者等(公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(以下この条において「公職の候補者等」という。)と意思を通じて組織により行われる選挙運動において、当該選挙運動の計画の立案若しくは調整又は当該選挙運動に従事する者の指揮若しくは監督その他当該選挙運動の管理を行う者(前条第一項第一号から第三号までに掲げる者を除く。)をいう。)が、第二百二十一条、第二百二十二条、第二百二十三条又は第二百二十三条の二の罪を犯し禁錮こ以上の刑に処せられたときは、当該公職の候補者等であつた者の当選は無効とし、かつ、これらの者は、第二百五十一条の五に規定する時から五年間、当該選挙に係る選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)において行われる当該公職に係る選挙において公職の候補者となり、又は公職の候補者であることができない。この場合において、当該公職の候補者等であつた者で衆議院(小選挙区選出)議員の選挙における候補者であつたものが、当該選挙と同時に行われた衆議院(比例代表選出)議員の選挙における当選人となつたときは、当該当選人の当選は、無効とする。
第二百五十一条の四 国又は地方公共団体の公務員、行政執行法人又は特定地方独立行政法人の役員又は職員及び公庫の役職員(公職にある者を除く。以下この条において「公務員等」という。)であつた者が、公務員等の職を離れた日以後最初に公職の候補者(選挙の期日まで公職の候補者であつた場合の公職の候補者に限り、参議院比例代表選出議員の選挙における候補者たる参議院名簿登載者で第八十六条の三第一項後段の規定により優先的に当選人となるべき候補者としてその氏名及び当選人となるべき順位が参議院名簿に記載されているものを除く。)となつた衆議院議員又は参議院議員の選挙(その者が公務員等の職を離れた日以後三年以内に行われたものに限る。)において当選人となつた場合において、次の各号に掲げる者が、当該当選人のために行つた選挙運動又は行為に関し、第二百二十一条、第二百二十二条、第二百二十三条、第二百二十三条の二、第二百二十五条、第二百二十六条、第二百三十九条第一項第一号、第三号若しくは第四号又は第二百三十九条の二の罪を犯し刑に処せられたときは、当該当選人の当選は、無効とする。
すなわち、当選人と一定以上の関係にあるものが選挙犯罪によって刑に処せられれば、その選挙で当選した本人が違反をしていなくとも当選が無効になるのである。公民権停止についても同様の効果が及び、刑の失効後5年、違反が買収だった場合は10年間立候補が不可能になる。
ただし一律にではなく例外もあり、当選させないないし、立候補資格を失わせようとする目的で、対立する候補者からのおとりだったり、寝返りであった場合は立候補禁止と復活当選の無効に限って免責されるとされている。もちろん比例復活当選に限るので、選挙区そのものの当選無効は免れない。
また、問答無用で当選無効になるわけではなく、その選挙違反の事件を最後に担当した裁判所から、その候補者に対して判決が下った通知が会った時より30日以内に限って、立候補禁止や当選無効にはあたらないことを確認する訴訟を高等裁判所に提起する機会が設けられている(しない場合は30日後に確定)。
当選無効の場合は小選挙区選挙ならば繰上補充で次点の人物が当選するが、それ以外の場合は再選挙となる。
この規定を巡っては何度か公務員の選定・罷免権を定めた憲法15条1項や、他人の行為によって責任を問われないとする憲法31条に違反するとして違憲訴訟が起こされている。
特に1994年の公選法改正で、連座制の対象を従来までの選挙事務所に直接関係した人物に限らず、秘書にまで拡大した拡大連座制を巡ってはその定義をめぐって最高裁まで争う事例がでてきた。
しかし、連座制そのものに対する違憲訴訟についてはこれまでの判例において、全て合憲であるとして訴えが退けられている。その理由として「犯罪行為は選挙に大きな影響を与え、それによる投票人の意思は必ずしも自由な意思とはいえない」(最判昭和37年3月14日)、「公職選挙法は公明かつ適正な選挙を行うべく制定されたものなので、買収により投票人の意思を不純化して勝ち得た当選を保持させるべきではない」(最判唱和49年2月26日)などとしている。
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最終更新:2024/12/23(月) 11:00
最終更新:2024/12/23(月) 10:00
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