ある日おじいさんは怪我をした雀を助けて手当をしてやりました。子供が居ないものですから、おじいさんは雀をたいそう可愛がっておりました。
しかしある日、おじいさんが家に帰ってみると雀の姿がありません。心配しておばあさんに尋ねると「大事な洗濯のりを食べてしまったから、舌をハサミでちょん切って追い出しましたよ。」と言うではありませんか。
心配になったおじいさんは人づてに雀を探し回り、やがて雀のお宿に案内されました。雀はおじいさんに感謝とお詫びを伝え、歌や踊りでもてなします。そしてお土産として大小2つのつづらを差し出しました。
「私は年寄りだから軽くて小さなつづらにするよ」と小さなつづらを家まで持って帰ってみると、中には金銀財宝、サンゴや宝珠の玉などが入っていました。それを見たおばあさんは「大きなつづらにはもっと良いものが入っているに違いない」と雀のお宿に押しかけ、挨拶もそこそこにお土産を求めます。
大きなつづらを持ち帰ったおばあさん。待ちきれずに開けてみると中から毒虫や毒蛇、一つ目小僧に大入道などの魑魅魍魎が溢れ出すように現れたではありませんか。これにはおばあさんも真っ青です。
その後「欲張ったり無慈悲な行いをするものではない」とおじいさんに諭され、すっかり懲りてもうそのようなことはしないと誓ったのでした。
この物語の一応の主人公。雀を山で拾ってきて介抱し飼い始める。どうにも気が弱いきらいがあるようで、舌をちょん切って雀を追い出したおばあさんを叱ったり言い返したりせず黙ーっているパターンの話が多い。たぶん雀もおばあさんに無断で飼い始めた。つづらも単に安易な選択肢を選んだだけじゃないのか。そういう所だぞ。
彼の気弱っぷりによっておばあさんと雀との三角関係が形成されたようなものなので、その点でもこの物語は彼が居なくては成り立たなかったと言えるのではないだろうか。
一応のメインヒロイン。おばあさんが気づくほどの量の洗濯のりを食べたのだから雀にしてはとんでもない大食いキャラといえる。
彼ないし彼女がつづらの準備に関わっていたかは定かではないが、雀のお宿のメンバーが突然の来客に例のつづらを用意したのだろう。
「舌を切られたはずなのに、再会時に困っている様子もなく人語を話す」「雀のお宿という謎の施設に関わっている」などの不審な点があり、単なる雀ではなく何か超自然的な存在のようだ。ただし作中ではそのあたりは深く言及されない。
サブヒロイン。見方によってはメインヒロインといえるかもしれない。おじいさんとは正反対で、欲望に正直で激しめの性格をしているようだ。割れ鍋に綴じ蓋。雀のことを隠し立てせず「舌を切って追い出しましたよ」などと堂々と答えるあたり、ある種真っ直ぐな人である。
話のパターンによっては大きなつづらの中にいた毒虫や魑魅魍魎に食い殺されたりする。
レアキャラ。話のパターンによっては居たり居なかったり、複数人いたり、狐が化けたものだったりする。家畜を洗った汁や糞尿などを何杯か飲み干せば教えてやろう、と謎の試練を与えてくる。アバッキオかお前は。
おじいさんはこれを経てお宿を見つけ、おばあさんは道を知っているからと拒否して自分でお宿にたどり着く。一種の呪術的な要素か単なるキャラ付けかはいまいち分からないが、別にこの人が居なくても話は成り立つし、居たとしても大して面白くならないためかカットされることが多いようだ。
このお話の大変有名なポイント。結果としておじいさんの選んだ小さなつづらには金銀財宝が、おばあさんの選んだ大きなつづらには魑魅魍魎が詰まっていた。
なぜ雀はつづらを2つ用意したのか、もし2人の選択が違っていたらどうなるのか?など読み手として気になる要素が満載であるため、いろいろな考察が可能である。
大きなつづらは魑魅魍魎、小さなつづらは金銀財宝で固定。結果としておじいさんとおばあさんは信条からそれぞれの選択肢を選んだ。雀は一種の信頼と確信、あるいは試す意思を持って2つのつづらを差し出したことになる。
おじいさんが大を選べば欲をかいたため恩を仇で返された結果となり、おばあさんが小を選べば雀から差し出された贖罪と和解の機会を掴んだことになる。
金銀財宝を大きなつづらに詰めれば大出費、大入道や一つ目小僧を小さなつづらに入れるのは難しいだろうから、雀にとってみれば合理的な判断といえよう。
おじいさんに差し出されたつづらは大小どちらも金銀財宝、おばあさんに差し出されたつづらはどちらも魑魅魍魎。どちらを選んでも2人の迎える結末は大きく変わらない。
雀はおじいさんには恩返し、おばあさんには仕返しの意思を明確に持ってつづらを用意したことになる。おじいさんに金銀財宝を大小のつづらで用意したのは、持ち帰りやすさと物量に柔軟性をもたせたかったためだろう。スーパーの鮮魚コーナーに魚一匹と切り身がそれぞれ置いてあるようなものである。
おばあさんに対して大小のつづらを用意したのは、おじいさんへの土産の形式に沿ったものだろう。ただ、小さなつづらを持ち帰った場合は家までたどり着くとおじいさんも被害に遭う可能性がある。
資料によってはつづらが重くなって運べなくなる、自然につづらが開くといった展開も確認できるため、小さなつづらにもこういったトラップが用意されているのかもしれない。
金銀財宝と魑魅魍魎、どちらの可能性も同時に存在し、つづらを開けて中身を観測することでその中身がランダムに確定する。大小どちらを選ぼうと関係ないため、結果としておじいさんはラッキー、おばあさんはアンラッキーなだけだったことになる。
雀は日頃の行いがここに出ると考えていたのかもしれないが、シンプルに1/2の確率でどちらかに決定するのなら特にそういうことは結果に関係しない。おじいさんに魑魅魍魎が当たる可能性があるつづらを知ってか知らずか渡したことになる。
大小どちらのつづらも誰が開けるか、いつ開けるか(話のパターンによっては、つづらを渡されるときに「自宅に帰るまで開けないように」と注意されるものがある)、あるいはどんな心持ちで開けるかといった要素によって中身が決定する。
つづらがおじいさんのような善人だと判断すれば金銀財宝、おばあさんのような業突く張りなら魑魅魍魎となる。「大小どちらを選ぶか」というのは多少加味されるだろうが、これもどちらを選んでも2人の結末は大きく変わらない。
雀はつづらにすべての判断を委ね、結果としておじいさんとおばあさんはつづらにその人間性や生き様などを判断されたことになる。
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最終更新:2024/12/26(木) 21:00
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