積極財政とは、中央政府や地方公共団体の財政政策の形態の1つである。反対語は緊縮財政である。
本記事では中央政府の積極財政について述べる。
プライマリーバランスを赤字にして政府累積債務を増加させつつ政府購入や消費を増やす財政政策のことを積極財政という。
プライマリーバランスを赤字にして政府累積債務を増加させるということは、国民貯蓄を減らすということである。閉鎖経済の国なら投資の減少と実質利子率の上昇が発生し、大国開放経済の国なら投資の減少と純輸出の減少と実質利子率の上昇と実質為替レートの下落が発生し、小国開放経済の国なら純輸出の減少と実質為替レートの下落が発生する。閉鎖経済の国や大国開放経済の国ならクラウディングアウトとなる。
プライマリーバランスが均衡していて限界消費性向MPCが0.7で限界貯蓄性向MPSが0.3の国があるとする。1兆円の国債を発行して1兆円の政府購入をすると国民貯蓄が1兆円減るし、1兆円の国債を発行して1兆円の減税をすると消費が7000億円増えて国民貯蓄が7000億円減るのであり、プライマリーバランスを赤字にするこれらの政策は国民貯蓄の減少の効果が大きい。しかし1兆円の増税をして1兆円の政府購入をすると消費が7000億円減ってくれるので国民貯蓄が3000億円減るだけで済むし、1兆円の増税をして1兆円の減税をすると国民貯蓄が全く減らずに済むのであり、プライマリーバランスの均衡を保つこれらの政策は国民貯蓄を減らす効果が小さくて済む。詳しくはクラウディングアウトの記事の『財政政策の4形態の比較』の項目を参照のこと。
大国開放経済の体制でありつつ積極財政を行っている国の代表例は、アメリカ合衆国である。
アメリカ合衆国は世界最大の軍事大国であり、軍事面での政府購入が大規模に行われ、積極財政が恒常的な国である。恒常的な積極財政の結果として実質利子率が高い国になっている。そして実質利子率が高いので米国行きのキャリートレードが発生しやすく、ドル買いが行われやすく、ドル高が恒常化している。
2022年に勃発したウクライナ戦争のあとはドル高が進み、自国通貨高(名目為替レートの下落)と輸入の容易化(実質為替レートの下落)が常態化している。
1980年代のロナルド・レーガン政権の頃は積極財政を大規模に行い、スターウォーズ計画とも言われるようなSDIというミサイル防衛計画を実行して軍事面の政府購入を増やし、所得税の減税をして消費を増やし、実質利子率を引き上げてドル高を作り出し、実質為替レートを引き下げて純輸出のマイナス(貿易赤字)を作り出した。この1980年代のアメリカ合衆国の財政は財政赤字と貿易赤字という「双子の赤字」が特徴的だったが、これは積極財政の典型である。
アメリカ合衆国は1980年代のロナルド・レーガン政権の頃から2020年代の現在に至るまで「強いドルは国益にかなう(A strong dollar is in the national interest.)」という考えが根強く、実質利子率の高さと自国通貨高を歓迎する勢力が一定の力を持ち続けている国である。このことから「アメリカ合衆国は積極財政を支持する勢力が強い国だ」ということができる。
閉鎖経済の国や大国開放経済の国において積極財政を必要とするときとは、その国の生産設備が十分に充実し、クラウディングアウトを故意に起こして過剰投資の発生を防ぐ必要に迫られたときである。
日本において1965年以降はプライマリーバランスが赤字状態で積極財政といえるものになったが、それ以降の日本は生産設備が充実した先進国であり、積極財政をしてクラウディングアウトを起こさないと過剰投資が発生する危険のある国になっていた。
日本において1987年以降に特例国債の発行を減らし始め、1991年から1993年までになると特例国債の発行をゼロにまで抑制していた。このときの日本は生産設備が充実した先進国であったのに緊縮財政を実行した。こうした緊縮財政は理論どおりの結果となった。過剰投資が発生して住宅の価格が急上昇してバブル景気となり、1990年から株価が急落してバブル崩壊となり、銀行が大量の不良債権を抱える状態となって長期の不況に突入した。
閉鎖経済の国や大国開放経済の国において積極財政を必要としないときとは、その国の生産設備が減少して投資を増やす必要に迫られたときである。
日本において1964年までプライマリーバランスが均衡状態で緊縮財政といえるものだったが、その当時の日本は生産設備が揃っていない発展途上国であり、投資を増やす必要に迫られた国だった。
積極財政を円滑に行うためには、政府が国債を発行して金融市場から資金を借り入れつつ金融市場において中央銀行が国債を買いオペする体制を構築しなければならない。つまり、国家全体が通貨発行益(シニョレッジ)を得られるような体制にしなければならない。
そのためにはドル化や通貨同盟といった体制を採用せず、政府の影響を受ける中央銀行が発行する不換銀行券を自国通貨として採用する必要がある。
さらに、カレンシーボード制を採用せず、中央銀行が買いオペすることを解禁する必要がある。つまり為替相場制度は「カレンシーボード制を採用しない固定相場制」か変動相場制のどちらかを採用せねばならない。
不景気が発生して負の需要ショックが起きて総需要が減って実質GDPが減ったとき、積極財政をして政府購入や消費を増やして正の需要ショックを起こして総需要を増やして実質GDPを増やすことがある。これを景気刺激という。
景気刺激に対しては批判が常に付きまとう。その批判とは「景気刺激をして需要ショックを起こすと短期において実質GDPを上昇させるが、長期において不利な供給ショックを発生させて物価が上昇しつつ実質GDPが元の水準に戻っていくことを阻止できない」というものである。これを自然率仮説という。
そうした批判に対し、景気刺激に対する擁護も常に行われる。「景気刺激をして需要ショックを起こすと短期において実質GDPを上昇させる。そして、長期において有利な供給ショックを発生させて不利な供給ショックを一部打ち消し、実質GDPが元の水準に戻っていくことを抑制し、実質GDPを元の水準よりも上昇させる」というものである。これをヒステリシス(経済学)の仮説という。
掲示板
22 ななしのよっしん
2024/12/22(日) 00:54:25 ID: Wag84Ltr2Y
税金をとった以上は(再分配というより)公共財や著しく外部性が高いものを提供するべき
(再分配するために税金を取るというわけではない)
23 ななしのよっしん
2024/12/23(月) 15:47:51 ID: 6C1xjKZahy
財務省は国民を苦しめるために増税してる
とか言って暴れまわってる奴って、どういう人生歩んできたんだろうな
純粋にどんなパーソナリティなのか気になるわ
24 ななしのよっしん
2024/12/23(月) 19:58:35 ID: kpzJlTnMS4
求人票20万って書いてあったら20万そのまんまで一切天引きされず全部額面通り寄越せ程度しか思ってなさそうではある
消費税とかそれこそ老人とか障害者とかの働かない人間でも払う税金(なので国家的にはタダの無駄めし食いにさせない生かす動機繋ぎの側面もある)=労働者らが払わないとあかん税を緩和してる側面もある
&間に複数層の企業挟むな!とかも挟まなかったらコストエゲツナイ&その分他の企業の負担がえげつないor手取りは凄いけどその分超絶激務になるんだよな…
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最終更新:2025/01/11(土) 08:00
最終更新:2025/01/11(土) 08:00
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