ペサパッロ(pesäpallo)とは、フィンランド語で野球(英: baseball → pesä (=nest, home ≒ base) + pallo (= ball))または野球のボールを意味する言葉であるが、専ら野球をフィンランド式にアレンジしたフィンランド式野球(Finnish baseball)またはそれに使われるボールを指す。
ペシス(pesis)の略称でも親しまれているフィンランドの国技の1つであり、フィンランド国内では1万5,000名以上の競技人口がある他は、お隣のスウェーデン(フィンランド語からの直訳でブーボッル(boboll)と呼ぶ)とエストニアを始めとしてスカンディナヴィア系住民の多いドイツ語圏(ドイツ・スイス・オーストリア)・オーストラリア・カナダ(北オンタリオ州)でそれなりに競技されている。
野球から発展した競技ではあるが、ルールや競技場の形式などが大幅に変化しており、ほとんど別のスポーツと言っても良く、元の野球の方は単にベイスボッル(baseball)と呼ばれることが多い(昔はアメリッカライネン・ペサパッロ(amerikkalainen pesäpallo, つまりアメリカ式ペサパッロ)と呼んでいた)。
一見「三角ベース」のようにも見えなくもないが、守備配置や走塁法がかなり独特である。ちなみに北欧には他にも「コの字ベース」な野球派生型球技(スウェーデン語でブレッンボッル(brännboll)、ノルウェー語でスローボッル(slåboll)、デンマーク語でロンッボルド(rundbold))が存在する。
ペサパッロは1910年代に「砥石」(タハコ)の愛称でも知られる元陸上競技選手のラウリ・ピヒカラ(Lauri "Tahko" Pihkala:「ピカラ」とも)が考案したものとされる。野球には専用の球場が必要だが、フィンランドにはそもそも野球場がない。そこでタハコはサッカー場でも野球を行えるように野球とフィンランドの伝統的な球技を組み合わせたペサパッロを考案した。
最初の試合は1920年にヘルシンキで行われ、1922年に最初の公式試合・フィンランド選手権大会が開催された。
1952年のヘルシンキオリンピックでは公開競技としてペサパッロが実施された。
ペサパッロがフィンランドで普及した理由はアメリカの野球が投擲力や走力を高めることを知り、世界で戦うためのスポーツの基礎を作るために普及したという説と、1940年前後のソ連との冬戦争及び継続戦争の際、軍事訓練として普及したという説がある。
ペサパッロ競技場![]() 水色(■):ベースエリア ピンク(■):バッターボックス 青(■):ホームプレート 赤矢印(■):進塁方向 |
まず、なんといっても球場の形が違う。サッカー場などの長方形のグランドを使って試合を行うために、ペサパッロの競技場も長方形になっている。扇形で無いためにフェアゾーンはかなり狭い。
試合は4イニングスの前半ピリオド、後半ピリオド(前後半戦)を行い、4イニングの合計得点が多い方にピリオドポイントが1点入る。このピリオドポイントを多く獲得したチームが勝者となる。延長戦(スーパーイニング)は1イニングのみ行う。
スーパーイニングでも勝敗が決しなかった場合は、「スコアリングコンテスト」というサッカーのPK戦のようなものを行う。スコアリンクコンテストとは、三塁に走者を置いて5人の打者が何人の走者をホームインさせることが出来るかを競うものである。
塁の位置も違っており、普通の野球でいう三塁方向に一塁がある。その為か左打者は少ない。二塁は普通の野球でいう一塁方向。三塁は一塁の奥にあるという普通の野球に慣れきった日本人にとってはイミフな状態になっている。ちなみに、塁間は徐々に長くなっていく。(三角ベースじゃ)いかんのか?
審判は本塁審・一塁審・二塁審・三塁審・外野審(一番奥のバックラインにいる)の5人。一塁審が主審となっている。
なお、ペサパッロには普通の野球でいう白いベースが無く、半円状のベースエリアに入った時点でアウトセーフが判断される(全ての塁で駆け抜け可)。本塁には白い円形のプレートがあるが、これはストライク・ボールの判定をするためのものであってベースではない。三塁ランナーは三塁から出ている白線に片足をおいて陸上のスタートの体勢から走塁しなければならない。
塁上ではフォースプレイとなっており、タッチプレイは塁間でしか認められない。そのため、クロスプレイが見られない。投手が投球する前に三塁走者が飛び出すと本塁上でのフォースアウトになってしまう為、その時点で問答無用でアウトとなってしまう。
また、帰塁は認められない。フライの場合は野手が捕球するまでに帰塁しなければならない。帰塁できないとウンデッド(後述)となってしまう。一塁・二塁走者はリードを取ることが可能で、投手は走者の牽制に力を入れなければならない。
ペサパッロには柵越えによるホームランが無い。バッターボックスから見て一番奥の線を越えるとファールになってしまう。その為、打球のコントロールが非常に重要になってくる。また、バントやヒットエンドランが多用される。
ランニングホームランはあるが、三塁に到達して1点という謎仕様になっており、ランニングホームランを放った打者をチームメイトが三塁で喜び迎えるという不思議な光景が見られる。ランニングホームランを放った打者はそのまま走者となり、一塁の外側を廻って本塁に無事生還することが出来ればもう1点が入る。
ちなみにボールは物凄くよく弾むのでフェアゾーンから簡単に出ていってしまう。その為球場外との仕切りのフェンスがない球場ではどこまでもボールが跳ねていってしまい、野手がファールゾーンに入ってひたすら追い続けるという光景が見られることもある。また、イレギュラーも非常に多い。
ペサパッロの守備位置![]() |
守備につくのは野球と同じく9人であるが、中堅手がいない代わりに遊撃手が左右2人に分かれており、投手・捕手・一塁手・二塁手・三塁手・左遊撃手・右遊撃手・左翼手・右翼手という構成になっている。
捕手は打者に一番近い所で守っており、危険であるが守備の要である。捕手はバント処理や、牽制球の中継にも大いに役割を果たす。
ペサパッロでは守備のカバーが重要になってくる。例えば、ランナーが居ない場合、一塁手は前に出て、三塁手が一塁近辺を守り、左遊撃手が三塁近辺を守るなど、状況によってかなり極端なシフトを取る。
ちなみにフィンランド語では、右遊撃手・右翼手はそれぞれ「二塁遊撃手」「二塁外野手」のような言い方をし、左遊撃手・左翼手もおなじく「三塁遊撃手」「三塁外野手」と呼ぶ。また投手と内野手は野球の用語とは異なる呼び方をする。
投手は野球のようにマウンドから打者に向かって投球するのではなく、打者と向かい合うように立ち、本塁上でボールにグローブを被せた(野球でいうセットポジションのような感じ)状態から真上にトスを揚げる。ボールは投手の頭上1m以上に投げなければならない。
この投球はホームプレート上に落ちた場合ストライク。ホームプレート外に落ちた場合ボールの判定となる。投手は守備の際、本塁を守る必要があり、フィールディングについては野球でいう捕手のような役割を持つ。また、一塁、二塁の走者の牽制も大事な役割である。
ボールの判定が出ると、打者はその時点で一塁への進塁権が認められるが、すぐに塁に出ないで打ち続けることも出来る。同じ打者に2つボールを与えた場合、一番先頭の走者の進塁権が認められる。3つ連続でボールを与えた場合、打者は一塁を経由して二塁へ進塁することが出来る。
打者はフェアでも必ず一塁に走塁しなければならないわけでなく、良い当たりを放つまで打撃を続けたり、フェアの打球を放っておいて走者を進塁させておくことが出来る(クリケットに似ている)。ただし打球はストライクとなっており、3球のストライクでアウト(三振)となってしまう。ファールでも三振である。
ウンデッド(英語: wounded フィンランド語: haavoittunut/ハーヴォイットゥヌト)とは、フライを捕球されたことにより走者の権利を失った状態のことで、ウンデッドとなった選手は即座にベンチへと戻らねばならないが、アウトにはカウントされない。
フライを打った打者はウンデッドとなり、走者は捕球されるまでに飛び出したまま帰塁出来なければウンデッドとなってしまう。なお、ウンデッドとなっても先の塁に転送されてフォースアウトとなってしまわないように、次の塁にはたどり着かなければならない。
フライになってもアウトにはならないため、攻撃側には積極的にヒットエンドランが出来るという利点がある。足が遅い走者や打者ががわざとウンデッドを狙うこともあり、その場合守備側は故意落球をして防ぐこともある。
ウンデッドが続き、得点が入らずに打者が1巡した場合は、アウトカウントにかかわらずチェンジとなる。
ジョーカー(英語: joker フィンランド語: jokeri/ヨケリ)とは各チームに3名居る打撃専門の選手のことである。ユニホームは他の選手と別のものを着用している。制度としては代打と指名打者の合わせ技に近く、1イニングに2人まで起用でき、イニングが変わると再度起用できる。
ジョーカーは他の打者の間に起用され、例えば1番打者と2番打者の間に起用した場合、
1番打者 → ジョーカー → 2番打者
のような打順となる。チームで打撃のいい選手がジョーカーとなる場合が多い。
フィンランドには幾つかのプロペサパッロリーグがあり、国民的スポーツとなっている。最もレベルが高いリーグの「スーパーペシス(Superpesis)」には男子12チーム、女子11チームが所属し、日夜熱い戦いが繰り広げられている(成績が悪いと一つ下のリーグのユッコスペシス(Ykköspesis)に降格させられてしまう)。
大きな大会にイタ・ランシ・オッテル(Itä-Länsi-ottelu:東西対抗戦)がある。各ペサパッロチームから選手が選抜されるオールスターゲームのようなものであり、男子は1932年から、女子は1961年から毎年開催されている。
世界的な人気を誇るフィンランドのシンフォニック・メタル・バンド「Nightwish」が地元・キテー(Kitee)のプロペサパッロチーム「Kiteen Pallo -90」と提携契約を結び、テーマソングを提供したことからもペサパッロのフィンランドでの人気の高さが伺える。
ヘルシンキオリンピックで公開競技として実施されたもののフィンランド以外ではまともに普及しているとは言えない。フィンランドの近隣国のスウェーデンやエストニアなどではそれなりに競技人口があるらしい。また、ドイツやオーストラリアなどではフィンランドからの移民がプレーしており、少しばかり競技人口があるらしい。日本では北海道フィンランド協会がサークル活動を行なっている。
1992年にヘルシンキで開催された第1回ペサパッロワールドカップではフィンランド、スウェーデン、エストニア、ドイツ、オーストラリア、日本が参加し、フィンランドが王座に輝いている。
1996年の第2回大会はフィンランドのヒュヴィンカーで開催され、フィンランド、スウェーデン、エストニア、ドイツ、オーストラリア、日本が参加。フィンランドが王座に輝いた。
2000年の第3回大会はオーストラリア・メルボルンで開催され、フィンランド、スウェーデン、オーストラリア、ドイツが参加した。この大会では男子・女子・混合の試合が行われたが、すべてフィンランドが優勝している。
2003年の第4回大会はスウェーデン・セーデルテリエで開催。フィンランド、スウェーデン、オーストラリア、ドイツが参加し、男・女・混合全てフィンランドが(ry
2006年の第5回大会はドイツ・ミュンヘンで開催。いつものメンツが参加し、男・女・混合全てフィンランドが(ry
2009年にフィンランド・ポリで開催された第6回大会はいつものメンツに加えスイスが参加。男・女・混合全てフィンラ(ry
という訳でペサパッロの今後の世界的な普及に期待である。
2012年10月10日から13日にかけて、オーストラリア・ゴールドコーストにて第7回ペサパッロワールドカップが開催される予定である。参加チームはフィンランド、オーストラリア、欧州選抜の3チーム。果たして栄冠はどのチームに輝くのか!?
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最終更新:2025/03/08(土) 00:00
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