血の瞬発力。
デビュー時にはその良血ゆえに注目を集めるものの、
ダイイチルビーの本当の力が開花するのには
5歳まで待たねばならなかった。
父トウショウボーイ、母ハギノトップレディの血は、
ゆっくりと力を貯え、恐るべき瞬発力を育てていた。
スプリンターとして、一気にその実力をみせつけた'91年。
漆黒の馬体を波打たせながら差す、その名牝馬の姿は、
血統が織り成す最上のドラマとなった。
ダイイチルビーとは、日本の元競走馬・元繁殖牝馬。超一流血統の「華麗なる一族」として牝馬でありながら安田記念・スプリンターズSと牝馬ながら牡牝混合GIを2勝した名牝である。
主な勝ち鞍
1991年:安田記念(GI)、スプリンターズステークス(GI)、京王杯スプリングカップ(GII)、京都牝馬特別(GIII)
※当記事では、ダイイチルビーの活躍した時代の表記に合わせて、特に記載が無い限り年齢を旧表記(現表記+1歳)で表記します。
この記事では実在の競走馬について記述しています。 この馬を元にした『ウマ娘 プリティーダービー』に登場するキャラクターについては 「ダイイチルビー(ウマ娘)」を参照してください。 |
父トウショウボーイ 母ハギノトップレディ 母父サンシー
先述の通り母は「華麗なる一族」と称された優秀な母系の一族に属しているが、その中でも特に優秀な成績を収めており、デビュー戦での芝1000mの日本レコード57秒2(当時)、桜花賞とエリザベス女王杯の牝馬二冠制覇、古馬となっても重賞の高松宮杯を制するなど11戦7勝の成績を上げた名牝である。
父は産駒が走ると分かるやいなや皆導入当初の不人気の掌を返した大人気種牡馬であり、種付けをするには抽選をくぐり抜けなければならなかったが、見事その抽選に当たったためトウショウボーイ×ハギノトップレディという当時のファンからすれば夢の配合が現実のものとなったのである。
ところが夢の配合で生まれたダイイチルビーの脚には奇形があった。「奇形さえなければ確実に高値で売れる」とされるトウショウボーイ産駒、ましてや名牝ハギノトップレディとの仔での脚の奇形には牧場スタッフも(´・ω・`)とならざるを得なかった。
しかし動きの良さが伊藤雄二調教師に見いだされて、無事買い手もつき、名門厩舎の所属でデビューすることになった。
脚の奇形もあって慎重に4歳デビューとなったダイイチルビー、しかし伊藤師のにらんだ通り才能は確かなものがあった。デビュー戦で5馬身差の圧勝。しかし4歳のダイイチルビーは運が味方しなかった。桜花賞出走を目指し桜花賞トライアルに登録したものの除外、条件戦圧勝後に登録した桜花賞も除外となった。
・・・後の活躍を考えれば、最も距離の合う1600mの桜花賞に出れなかったのはあまりにも痛手であった。忘れな草賞では2着、おなじく2000mのオークストライアル(GII)でも2着とこれまでの快進撃に暗雲が漂い始める。それでも血統の良さからオークスでは2番人気に支持されるが出遅れた上に直線でも見せ場なく5着敗退。
オークスの敗因は出遅れのせいと見られたため、エリザベス女王杯トライアルのローズステークス(GII、2000m)ではオークス馬エイシンサニーを抑えて1番人気に支持された。・・・がそこで見せた競馬は、何の見せ場のない5着惨敗。
さらにフレグモーネを発症したダイイチルビーは4歳秋を全休することとなってしまった。そんな間に武騎手もダイイチルビーから離れて行ってしまった。
しかし、伊藤師はこれまでの競馬からある結論を下していた。
「この馬は1600mまでがベストの馬だ」と。
武騎手に振られたダイイチルビーの鞍上は河内洋騎手に決まった。5歳での復帰戦はオープン戦の洛陽S(もちろん1600m)である。
ところが、ここで伊藤師も思いもかけないダイイチルビーのもうひとつの才能が発揮されたのである。このレース、ダイイチルビーはテン乗りの影響からか出遅れてしまったのである。落胆するダイイチルビーの馬券を買ってた人たち。ところが直線に入ったダイイチルビーの末脚は出色のもので勝ち馬にわずか半馬身というところまで追い詰めたのである。父も母も先行馬ということで出遅れたオークス以外では先行させていたのだがそれは実は間違いで、ダイイチルビーの本当の適性脚質は後方からの末脚一気だったのである。
ともあれ、自らの適性距離と適性脚質を知ったお嬢様はまずは京都牝馬特別(GIII、1600m)で末脚の威力を確かめるべく出陣。上がり3ハロン34秒3で他馬を切って捨てての快勝である。中山牝馬特別(GIII、1800m)ではやや距離が長かったか3着に敗れたが、ここで陣営は牡馬との対決、京王杯SC(GII、1400m)から安田記念への参戦を決めた。前年のマイルGIの覇者が現役を退いており、新たなマイル王者を求めている状態である。そんな中、前哨戦の京王杯SCでは見事に末脚一気を決め快勝。1000m57秒8というハイペースの利もあったといえ、2着との差が1馬身3/4というのではぐうの音も出ない完勝である。
そして本番の安田記念。まだGI馬の金看板のあるバンブーメモリーが1番人気。ダイイチルビーは2番人気である。ここでダイイチルビーは出遅れてしまうが、レースが京王杯SC以上にハイペースになったためにさほど大きな影響にはならずレースは進んだ。
ハイペースで先行馬がバテて後退する中、バンブーメモリーは依然として馬群の中、10番人気の伏兵ダイタクヘリオスが先頭に躍り出る。
しかしその時、大外から華麗なる宝刀がダイタクヘリオスを、バンブーメモリーを、全ての馬を切って捨てていた。ダイイチルビーの末脚が、全ての馬を交わしてゴール板に飛びこんでいたのである。2着ダイタクヘリオスから1馬身1/4差の快勝であった。
ダイタクヘリオスの粘りも、バンブーメモリーの誇りも切って捨てた華麗なる一族の末脚。それは一族の歴史に加えられた新たな1ページであった。
さて、こうしてGI馬となったダイイチルビーであるが、ダイイチルビーにはもう一つ、大きな試練があった。それが「母仔三代高松宮杯制覇」。もし今の世ならダイイチルビーのホームと言える1200mなのだが当時の高松宮杯は4歳時負け続けた2000m。しかし記録がかかっている以上逃げるわけにもいかない。
しかし、ここで立ちはだかったのは安田記念でダイイチルビーの2着に敗れたダイタクヘリオスだった。この馬は折り合えば2000mでもそれなりの実力を発揮できる馬であり、直線一騎打ちとなったが最後はその辺の差が出たのか鼻差及ばず敗戦となった。
このころからダイタクヘリオスとダイイチルビーでの周辺では、「ダイイチルビーはダイタクヘリオス相手だと実力を発揮する」と噂されるようになった。馬柱で2頭が並ぶことも手伝い、実際、馬なり一ハロン物語ではそういう設定の漫画が登場してしまった。
高松宮杯敗戦の傷を拭うには、得意距離のマイルCSでダイタクヘリオスを叩き潰し、真のマイル(女)王の座は誰かを証明するのみである。
こうしてまずはステップレースのスワンS(GII、1400m)にすすんだダイイチルビー。しかし直線で伝家の宝刀が炸裂するかと思われた直前、それ以上の末脚でダイイチルビーごと切って捨てた馬がいた。ケイエスミラクルである。勝ちタイム1:20.6は当時のレコードタイムである。ケイエスミラクルは外国馬ながら三流血統の馬とされ安馬であったが、血統的にはこれから大流行する血統の馬であり、また2度の競走生命の危機を乗り越えたという話題性からも、ダイイチルビーのライバルとしては十分な相手であろう。既に3度目のレコードタイムを記録したこの若武者の登場で馬券師からもダイイチルビー陣営からも俄然本番に向けて燃えあがってきたのであった。
そして迎えた本番のマイルCS。叩き2走目での上昇を見込まれた点と、ケイエスミラクルには1600mはやや長いかとされた点から、1番人気はダイイチルビーの手に。
しかし、マイルCSでも安田記念と同様ダイイチルビーは出遅れてしまった。しかも安田記念の時と違い、前があまり競り合わずハイペースにならない。さらにケイエスミラクルのマークにも合うという多重苦が襲いかかる。1番人気の宿命とはいえ、何とも厳しい立場である。
しかし、それらの多重苦を華麗なる一族の伝家の宝刀で断ち切り、執拗に絡むケイエスミラクルもかわしようやく「馬群」の先頭に立った。
しかし、あの「馬群」の先に「あの馬」がいた。4コーナーであっという間に「馬群」を置き去りにしていき、ダイイチルビーの華麗なる一族の伝家の宝刀を持ってしても届かないほどの差をつけたダイタクヘリオスである。
結局、ダイイチルビーは2馬身半差の2着に敗れた。
マイルCS後、ダイイチルビーはスプリンターズS(当時は12月開催)の参戦が発表された。ダイタクヘリオスが有馬記念参戦となった以上、相手はケイエスミラクルただ一頭である。ただ、1200mは実はダイイチルビーには未知の距離であり、ケイエスミラクルには得意距離である。さらに出遅れ癖もあったダイイチルビーは1番人気をケイエスミラクルに譲った。
心配された出遅れもなく無難なスタートを切ったダイイチルビーだが、レースは超ハイペースで進んだため、後方待機のダイイチルビーとしてはもってこいの展開である。
そして4コーナーでいよいよ進出を開始したとき、事件は起こった。
ケイエスミラクルが脚に異常を発生して下がっていくのである。
ダイイチルビーはそれに巻き込まれかけるも上手く交わして進出、あっという間に他の馬を交わしてスプリンターズSを制覇、当時としては牝馬が牡牝混合GIを2勝したのは初の出来事である。
ケイエスミラクルは診断の結果、粉砕骨折、予後不良で安楽死となった。
この結果、6歳以降も現役生活を続けることになったダイイチルビーであるが、その後の成績は奮わず引退。公式にはフケ(発情)がでてしまったのことであるのだが、ファンの間では「ケイエスミラクルの故障がショックだったのでは」と考える者もいたのだとか。
ダイイチルビー、ダイタクヘリオス、ケイエスミラクル。この3頭の数奇な運命の物語は後の競馬ファンにも語り継がれていくのである。
ダイイチルビーはもちろん「華麗なる一族」の後継として繁殖牝馬としても期待されたが、初仔としてダイイチシガーを出したもののその後は不振。周辺ではダイタクヘリオスとの仔も期待されたがゲーム内での再現(ファーストサフィー)のみにとどまった。
トウショウボーイ 1973 鹿毛 |
*テスコボーイ Tesco Boy 1963 黒鹿毛 |
Princely Gift | Nasrullah |
Blue Gem | |||
Suncourt | Hyperion | ||
Inquisition | |||
*ソシアルバターフライ Social Butterfly 1957 鹿毛 |
Your Host | Alibhai | |
Boudoir | |||
Wisteria | Easton | ||
Blue Cyprus | |||
ハギノトップレディ 1977 黒鹿毛 FNo.7-e |
*サンシー Sancy 1969 鹿毛 |
Sanctus | Fine Top |
Sanelta | |||
Wordys | Worden | ||
Princess d'Ys | |||
イツトー 1971 黒鹿毛 |
*ヴェンチア | Relic | |
Rose o'Lynn | |||
ミスマルミチ | *ネヴァービート | ||
キユーピツト | |||
競走馬の4代血統表 |
掲示板
21 ななしのよっしん
2022/09/21(水) 10:39:18 ID: iBAZQfWkuF
謎のダイタクヘリオスsageと語り口調を修正してみました。
問題があれば戻します
22 ななしのよっしん
2023/05/20(土) 14:19:19 ID: +nhLtW0yLu
オークス一着馬エイシンサニーの鞍上が岸滋彦騎手(ダイタクヘリオス主戦)やん…なんの因果であろうか
23 ななしのよっしん
2023/06/17(土) 12:34:05 ID: ykZN0FRTN4
戦績見ると、脚質とペースの因果関係のお手本みたいな戦績しとるね
91安田→ハイペースを末脚の爆発力でなで切り勝利
91マイルC→スローペースでヘリオスに逃げ切られる
91スプリンターズ→超ハイペースで先行したケイエス故障、ルビーは末脚勝負で差し切り勝ち
92安田→ハイペースを先行して末脚不発の惨敗
急上昇ワード改
最終更新:2025/01/25(土) 19:00
最終更新:2025/01/25(土) 18:00
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