エタノール(Ethanol)とは、酒類に含まれ、実験や消毒液に利用されるアルコールである。エチルアルコール(Ethyl alcohol)、酒精とも。
エタノールは、酒類、消毒液、トイレの消臭剤などに含まれているアルコール。中学理科の蒸留の実験などに登場する。消毒には、水で薄めて濃度70~75w/w%程度(76.9~81.4vol%)としたものが使用される。
化学式は「C2H5O」だが、化学的性質を示して「C2H5OH」、エチル基を表すEtを用いて「EtOH」とも書かれる。常温常圧では無色の液体で、揮発性がある。引火性もあり、取り扱いには注意が必要。内燃機関の燃料として使用された例もある。
代表的なアルコールであり、一般にアルコールといえばエタノールを含有する酒類を意味する。ビール、チューハイ、ウォッカ、焼酎などの酒に含まれており、酩酊や泥酔の原因となる。ただし、アルコールにはメタノール、グリセリン、キシリトールなども含まれるため、アルコールがすべてエタノールという解釈は間違いである。また、メタノールの飲用は失明のリスクがあるだけでなく、腎臓などの内臓にも悪影響があり、死に至る危険もあるため絶対に飲んではならない。
20歳を超えれば嫌でもお酒を口にすることもあるだろう。しかし、他人に飲酒を強要するのは絶対によくない。その理由を科学的論理で説明してみる。
体内に摂取されたエタノールは酸化される。酸化されるとアセトアルデヒドという物質になる。実は酔いには2種類あって、気分の高揚や眠気などいわゆる酩酊の症状はエタノールが原因で、吐き気・目眩、頭痛、顔が赤くなる、などいわゆる悪酔いの感覚はこの物質が原因なのである。飲んで時間が経つと酔いが冷めて悪酔いの症状が増してくるのは、エタノールが減ってアセトアルデヒドが増えるから。この物質はさらに体内で酸化され酢酸という物質になり無害となる。酢酸は所謂お酢のことと思ってもらってよい。
酒に強い、アルコールに強い、などとよく言われるが、実はほとんどの日本人はアルコールそのものを分解する能力は個人差こそあれ持っている。飲んだ次の日になっても気分良く酔っている人がほぼいないのを見れば分かる通り。しかし、このアセトアルデヒドを酸化し無害の酢酸にする能力は遺伝的で人により大きく異なる。これが、一般に言う酒の強さである。
お酒に強い人というのはアセトアルデヒドを酸化する能力が優れているので酔いにくい。逆に弱い人は酸化する能力が劣っているため、アセトアルデヒドが蓄積しやすく悪酔いしやすいのだ。日本人などモンゴロイドの多くは悪酔いしやすい体質の人が多く、欧米人や南九州人、一部の東北人などは酒に強いと言われている。
ややこしい事に、急性アルコール中毒はエタノールそのものが原因。エタノールの効果は麻酔に似ていて、大量に摂取すると人体の機能が止まってしまう。そのため、悪酔いしにくい=酒に強い人でも一度に大量の酒を飲むと急性アルコール中毒で死亡する危険がある。むしろ、なまじ酒に強い人ほどアセトアルデヒドによる悪酔いが少ない分だけ中毒の危険が高い。どんな人でも飲み過ぎは厳禁である。
なお、俗に「お酒に慣れると強くなる」と言われているが、その効果はごくわずかしかない。一方、麻酔と同じようにエタノールはだんだん効きにくくなるので、無理に飲むとアルコール依存症になったり、エタノールだけ効きにくくなってアセトアルデヒド耐性はないまま=鍛えるほど楽しく酔えず悪酔いしかしない、という最悪の情況にもなりうる。
貴方が仮に鍛えて飲めるようになったのなら、それは元から適性があっただけ。適正がない人間に飲ませるのは拷問に等しい。
お酒を飲む人も飲ませる人も、これらを心の片隅において楽しく飲みましょう。
※エタノールの酸化反応は下に記述してあります。ただし、生体内の代謝とは異なるので参考程度に。
なお、厚生労働省は「健康日本21」において、“節度ある適度な飲酒量”を純アルコールで一日20g程度としている。しかし、この日本の基本飲酒量は諸外国と比較して高いため、近年は1ドリンク=10gという基準量が提案されているとのこと。以下に各酒類の1ドリンク量を引用する。[1]
アルコール依存症の治療薬は4種類ある。そのうち、従来より用いられてきたものは「抗酒薬」と呼ばれる薬剤で、ジスルフィラム(ノックビン®)、シアナミド(シアナマイド®)が該当する。これら抗酒薬は、アセトアルデヒドを酸化する酵素アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)を阻害し、二日酔いのような症状(吐き気や頭痛など)を引き起こす。抗酒薬服用中は飲酒によってこうした不快な思いをすることになるため、心理的に断酒しやすくなる。
そのほか、2013年に承認されたアカンプロサート(レグテクト®)は飲酒欲求を軽減させ、2019年に承認されたナルメフェン(セリンクロ®)は飲酒量を低減させる効果がある。
妊婦が妊娠中にエタノールを摂取すると、体内で生成したアセトアルデヒドが胎児に成長遅延や精神機能低下を引き起こす。さらに、アセトアルデヒドは胎児への体の異常を引き起こす。従って、妊婦の方は気をつけてください。
エタノールはOHをもつので水素結合が出来る。このことは分子量の割に高い沸点を示す原因となっている。分子量の近い物質と比較するとよくわかる。(ジメチルエーテルの沸点が−23.6℃に対してエタノールの沸点が78.4℃)
水と混合すると混合前の総体積より体積が減少することがある。これは水とエタノールが互いに分子間の余分な間隙を埋めあうからである。体積の減少の仕方はモル分率に依存する。
エチレンと水を硫酸触媒中で反応(求電子付加反応)させることにより合成できる。
C2H4+H2O → C2H5OH
エタノールはクロム酸H2CrO4と反応(Sn2反応とE2反応を含んだの多段階反応)させると、アセトアルデヒドになり、さらに酸化させると酢酸(エタン酸)になる。
クロム酸を用いると一気に酢酸にまで酸化してしまうのでアセトアルデヒドを合成するには好ましくない方法である。
そこで用いるのがPCC(Pyridinium ChloroChromate)である。PCCの化学式は(C5H5N+H)・ClCrO3-である。以下の反応はジクロロメタン(CH2Cl2)を溶媒とする。
C2H5OH → CH3CHO
硫酸などの酸触媒を用いてOH基を活性化させると反応を起こす。エタノールは第一級アルコールなのでE2反応を起こしエチレンを生成するか、Sn2反応を起こしてジエチルエーテルを生成する。
エタノールに濃硫酸を触媒とし、130~140℃に加熱すると、Sn2反応が優先しジエチルエーテルが主生成物となる。
2C2H5OH → C2H5OC2H5+H2O
エタノールに濃硫酸を触媒とし、160~170℃に加熱すると、E2反応が優先しエチレンが主生成物となる。
C2H5OH → C2H4+H2O
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最終更新:2024/12/23(月) 23:00
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