Everything you've ever Dreamed

ただの日記です。それ以上でもそれ以下でもありません。

こづかい値上げ交渉の下準備について僕がやったこと全部話す。

僕のお小遣いの額は月19,000円。この額は奥様の強固な意思によって、広瀬アリス(姉)と広瀬すず(妹)の関係が絶対に広瀬アリス(妹)広瀬すず(姉)にならないのと同じように、絶対に変わらないという絶望から改訂を諦めていたが、突如彼女の頭の中で閃いた「今月は夏休みだから特別」という理論によって、今月はさらに減額されて17,000円とされてしまった。神は残酷だ。この額には、出勤日の昼食代、飲み代、趣味にかかる額(プロ野球観戦、書籍、ゲーム代)が含まれている。胃薬代や紳士用尿漏れパッド代も含まれている。17,000円への無慈悲な減額により、節約は避けられなかった。しかし、節約は思うようにはいかなかった。なぜなら僕はすでに贅沢からは何万光年の距離をとって生きていたからである。所有物を最低限度に抑えているため「こんまりメソッド」で人生が向上する余地すらない地獄を生きているのである。節約が難しくなっている大きな要因のひとつが「立場」である。たとえば部下と軽く飲みに行っても、割り勘というわけにもいかない。だってオラは部長だから。部長としての立場・体裁・メンツ、ストレスによる慢性的な胃痛、股間に尿漏れの痕跡、それらを維持したり回避したりするための費用は削れない。股間に尿漏れの痕跡をのこした上司の話を、ニョロニョロ尿路から尿漏れしている上司の訓示を、真顔で聞く部下は存在しない。飲み代も削れない。昨今、飲み二ケーションは滅びつつあるが、人望と信頼のある上司には部下からの「ちょっと今夜時間ありませんか」があるものだ。それは断れない。断ってしまったら「あいつは人情味のない冷血仕事マシンwith尿漏れ」と酷評され僕の評価は地に落ちる。節約のため、一時は、真夏の陽射しを活用して尿漏れパッドを使用後乾燥させて再利用する構想も考えた。しかし、会社の屋上で人目を避けるようにして尿漏れパッドを干している己の姿、生乾きの尿漏れパッドを装着するムズムズ違和感を想像しているうちに、虚無的厭世的な気分になってきたため、構想は永遠に凍結した。同時に百均の格安ガーゼを利用したハンドメイド尿漏れパッド製造計画も空しさを理由に永久凍結とした。結論からいえば、僕に残されている節約策は、昼食代を極限まで削減する方法のみであった。さいわい50歳になる僕は、中高年特有の胃腸の弱さを発揮、酷暑による夏バテも加わり、ランチを食べたくても食べられない状況にあった。頑張ってもパン2個が限界。あとはチョコバー。昼食代はナチュラルに削減された。また、懸念していた部下からの「ちょっと今夜時間ありませんか」もなかった。人望がなくて良かった。女性からの意味深なシャワーが予測されるお誘いもなかった。男性的魅力が衰えていて良かった。こうして僕の真夏の節約大冒険は大成功に終わったのである。僕が血と涙と残尿を流して出費を削ったのはすべてケーキを買うためである。2024年7月27日の夕べ、僕は、日々お世話になっている奥様に感謝を込めて、血と涙と残尿の結晶であるケーキを買って帰るのだ。相手の気持ちをあたためてから、こづかい増額の交渉をはじめるのだ。チーズケーキ、ショートケーキ、モンブラン、豆大福。砂糖とクリームの宝石たち。ケーキを買って帰る夜道、甘党の奥様の笑顔が浮かんだ。

「ケーキ買ってきたよ」「どうしたの?急に」「結婚記念日だから」「誰の?」と彼女は言った。そして、洋菓子屋のかわいい箱の中にある宝石のようなケーキたちを確認すると、まだおこづかいの額には余裕があるみたいね、と悪魔のように呟き、来月以降の減額続行を示唆したのでございます。(所要時間20分)