僕は食品会社の営業部長。ウチの会社において役員と社員を識別するのは超簡単。パーテーションだ。デスクの周りをパーテーションで囲われているのが役員なのだ。だから、上半期の締めで先月(9月)おこなわれた役員会の後、エレベーターで会った役員から「キミには期待しているよ」と言われたり、僕の席の周りに梱包されたパーテーションが運び込まれたりしたので、「ついに取締役…」と武者ブルったのはここだけの話である。10月1日朝に臨時朝礼の実施が通達された。下半期を迎えて新たな人事体制の発表があるとのことであった。武者震いブルブル。
10月1日、1週間ぶりの出社。少し早めに会社に行ったら、僕のデスクがなくなっていた。「これが、かのサントリー社長の提唱する45歳定年制…」と血の気が引いた。営業部の島を見渡せるポジションにあった僕のデスクは、営業部の島に組み込まれていた。しかも西日がバチバチ当たる窓際。嫌がらせか。僕のデスクがあったポジションには、パーテーションに囲まれたデスクが置かれていた。直後の朝礼で、僕の上に営業部門を監督する取締役営業本部長を置くことが発表された。営業本部長、営業部門のトップである。僕の役職と仕事は変わらない。けれど、なんだろう、この降格感。気の毒に思われているのか、同僚も目をあわせようとしない。
どうやら先日の役員会で社長派と専務派との争いが激化した結果らしい。社長派ではない僕を社長派と思いこんでいる専務派と、僕が社長派ではないことを熟知している社長派とのあいだで勃発した何らかの係争において、「じゃあ営業部長のうえに役員設置で手を打とう」という謎の合意がなされたそうだ。専務派からみれば社長派から一本取った感を得られ、社長派からみれば痛くもかゆくもないという双方にとってメリットのある落としどころである。僕、生贄じゃん。きっつー。
問題は新たに営業本部長となった取締役で、ずっと総務畑を歩いてきた営業のエの字も知らない、髪をアイパーでキメた70代で、耳が遠いうえ、初っ端から「営業のことはまったくわからないからわかるように説明してくれ」「立場上報告は聞くけれども実際の責任者は君だからね」と言われて絶望している。歴代の取扱注意上司は「俺は営業のプロ。アマの意見は聞かない」「顧客ごと木っ端みじんにしてやる」「腹を切って話し合おうや」と言うような人間失格かつ能力皆無であっても、営業畑を無為に突っ切ってきたという謎の自信をベースにした営業マンとしての誇りを押し出すタイプだったのだが、今回の営業本部長は営業という仕事に対するこだわりややる気がゼロであるため、非常にやりにくい。2日しか仕事をしていないけれど、報告や連絡をしようにも、パーテーションの向こう側で「営業の話はわからないよ」「今、じゃないとダメ?」「うまくいきそうな話だけ進めて。ダメそうな話は止めておいて」「キミが実質的には営業の責任者だよ」「報告は怠らないで」「報告は必ず書面で」と言うばかり。まともに対応してくれない、暖簾に腕押し状態。先が思いやられる。つか、めんどくせえ。
しかし、僕のことをよく思っていない一部上層部が意図せず、僕の嫌がることを的確にやってきているのがムカつく。半期だけに社長に反旗を翻すのは勝手だけれども、無関係の僕を巻き込まないでほしいものである。あと、窓際席、西日アツすぎ。(所要時間19分)
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