Culture Vulture

ライター・近藤正高のブログ

プロはサービス業、アマは工業……野球における企業の棲み分け

 先日、某社の編集者氏とプロ野球各球団の歴史や親会社の話をしていたときのこと。NPB所属のプロ球団の親会社に、ヤクルトや日本ハムといった食品会社をのぞけば製造業……たとえば、日本の輸出産業をリードしてきた鉄鋼や自動車、電機メーカーなどがないことに気がついた(広島東洋カープにはたしかにマツダ[旧・東洋工業]が出資しているものの、親会社ではない)。歴史を振り返ってもほぼ皆無に等しい。
 そのかわり、大手メーカーの多くは社会人野球のチームを持ち、都市対抗野球大会に出場している。たとえば、山田久志野茂英雄などを輩出した新日鉄しかり、古田敦也を輩出したトヨタ自動車しかり、落合博満を輩出した東芝しかり。
 これに対して、プロ野球球団の親会社の多くはいわゆる第三次産業(小売業やサービス業、それからときには「第四次産業」に分類される情報産業も含む)に属する。プロ野球黎明期にあいついで参入し、いまでは阪神と西武をのぞきすべて撤退してしまった電鉄会社や、新聞・テレビといったマスコミのほか、金融やIT企業、それからいまではなくなってしまったもののかつては松竹、東映大映と映画会社も球団を持っていた。
 こうしたプロ・アマチュアにおける企業の棲み分けというのは偶然なのか、それとも必然だったのか。やはり、堅実な経営を志向するきらいが強いであろう素材・機械工業の世界では、負担が大きい上に、見返りもあまりなさそうな球団経営は避けられた、と見るべきなのだろうか。たしかに、私鉄なら球場までの旅客運輸、新聞なら販促と、プロ野球球団を持つことのメリットはそれなりに考えられるが、工業ではあまりそういうことはなさそうだ。
 もっとも、そういう直接的な効果が近年になって急速に失われつつあるのも事実なわけで、企業とプロ野球の関係は根本的に見直されるべき時期を迎えているわけだけれども。