脅しの道具としての「孤独死」

昨年の暮れに、「30~40代がいずれ迎える「大量孤独死」の未来」という記事がちょっとした話題になりました。 千葉県のマンションに住む60代の男性は、孤独死してから半年間にわたって発見されなかった。男性の傍らには、犬と猫7匹が一緒に息絶えていたという…

「童貞差別」の背景と「対人性愛の特権性」

少し前に、「童貞」をいじる(揶揄・侮蔑の対象とした言論活動)ことはセクシュアルハラスメントにあたるのか?という問題がインターネット上で話題になりました。 発端は、フリーライターのはあちゅう(伊藤春香)氏が過去に自身が受けたセクハラ・パワハラ…

『倒錯の偶像』と思想家がもたらす女性蔑視

墨東公安委員会氏の記事に対して言及した前回の記事に対して、墨東公安委員会氏から次のようなお返事をいただきました。 さて、烏蛇さんのご指摘は、小生が「『萌え』文化の本質はミソジニーである」という主張をしており、それは飛躍である、ということかと…

「萌え」文化はミソジニーの発露なのか

オタク文化、特に漫画・アニメオタクの人たちによる「萌え絵」の文化は、これまでもしばしばミソジニー(女性憎悪)、特に男性のミソジニーと結び付けて語られてきました。今回取り上げる墨東公安委員会氏の記事も、以前からよくある論旨の一つだと言えます。…

「弱者男性論」によるフェミニズム批判と「社会運動の公正性」

「フェミニズムが弱者男性を弾圧・抑圧している」という議論とそれへの反論が話題になっています。この議論そのものは以前からみられるものですが、大きく話題になったのはこのまとめからでしょうか。途中までの流れは司馬光氏の記事にまとめられています。 …

天賦人権説(あるいは自然権)の否定は何が問題なのか?

衆議院選挙を間近に控えて、自民党の憲法改正案が話題になっています。 その中で、自民党の参議院議員片山さつき氏の次の発言が特に問題になりました。 国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人権論をとるのは止め…

散弾銃的「ミソジニー非難」についての謝罪

今回は謝罪です。ずっと非モテや格差論やジェンダーの話に取り込まれていた - はてな匿名ダイアリーに対する私のブックマークコメントとTwitterでの発言について。(※コメント自体は削除しています) こういう回路で、いじめの経験とミソジニーは繋がってい…

「幸せ」という実体が語られるとき

昨日、話題のアニメ映画『映画けいおん!』を観に、数年ぶりに映画館に行ってきました。私は映画に限らず、テレビアニメや小説や漫画や演劇などを見ているときにも割と簡単に泣いてしまう性質なのですが、今回もフィルム上映時間の半分くらいで既に泣いてい…

インターネットは、他の何かの代わりじゃない。

このところ、完全にネット上での活動がTwitterに移ってしまって、放置状態が続いている当「烏蛇ノート」ですが、とあるブログの文章に刺激されて久しぶりに書いてみようと思いました。 僕は悲しい。とても悲しい。 インターネットで生じている事実が事実とし…

「臆病さ」の背後にみえる「恋愛の規範性」

前回の記事と関連して、転叫院氏が「草食系男子」に関する話題に言及しておられる記事が面白いので、ちょっと取り上げてみます。 本当のところこの21世紀に起こっているのは、リスクが可視化されたことによって、男性の側に自己防衛する選択肢が与えられた、…

「草食系男子」の他称性と差別性

お久しぶりです。 俺にとってセックスって、もう30年近く「自分の薄汚ねえ欲望で女の肉体を汚す行為」でしかなかったんだよ。だから、俺の性欲の対象は、相当に早い時期から二次元にしか向かわなかった。このへん烏蛇さんだったかな、自分の性欲について似…

「恋愛放棄」にまつわる個人的な話

お久しぶりです。 最近更新が滞りがちなのはネタがないのではなくて、書こう書こうと思いつつ、うまくまとまらないままネタばかりが溜まっていっているという状況なんですが、書けるものからぼちぼち消化していきたいと思います。 今回はその、これまで何度…

「非モテ論議」と語りえぬ欲望

前回・前々回の記事に関してあれこれ考えている間に、大野氏のところをはじめ色んなところで取り上げられて話題が広がっているようです。ここで一旦、ここまでの反省も含めて話を整理してみたいと思います。 まずは、大野氏の記事を受けてのshinpants氏の記…

「非モテ論議」の傾向と対策(2)/「酸っぱいブドウ理論」の陥穽

前回の最後で、私は次のように書きました。 「非モテ」であるかないかに関わらず、「なぜ恋愛したいと思うのか」を今一度、自分自身に問うてみては如何でしょうか? この一文を書いた時点で私が想定していたツッコミは「そういうお前はどうなんだ」というも…

「非モテ論議」の傾向と対策

気付いたら二ヶ月以上放置状態でした。 この間ネットから離れていたわけではなく、ナツ氏のところの記事(「幼児的全能感の檻に入って出たがらない大人コドモ」と「『ベルセルク』が女性にウケる理由(わけ)」)にコメントしたり、シロクマ氏を囲むオフに参…

「社会的弱者論」を考えるための基礎

ナツ氏のところのコメント欄で、以前の「非モテ弱者論争」に関連した話になっています。この議論に関しては以前「意味のある問題設定とは思えない」と述べてスルーしたんですが、「非モテ」に関する議論の中で「弱者」概念が極めてルーズに扱われている現状…

「非モテ」の苦しみとは何か?

前回「クリスマス粉砕デモ」に参加してみての雑感を述べてみたわけですが、その中で「非モテの共通利害など存在しない」と述べたことに対し、益田ラヂオ氏から次のような反応がありました。 rAdio Commented 俺はまず自己利益。それでついでに「同志」の支持…

「クリスマス粉砕デモ」雑感

久々の更新になります。 長いこと放置していましたので、年末・年始にかけてしばらく集中して更新していきたいと思います。放置状態となっていた掲示板でのイカフライ氏との議論もエントリ化する予定です。 さて、今回は、先日参加してきた革命的非モテ同盟…

恋愛という概念装置(3)/ロマンが「恋愛」を殺す

古澤克大氏のところで、イカフライ氏と議論が続いています。最初は「戦争を悪と規定すること」が話題だったはずなのですが、途中からなぜか「非モテ」の話にすり替わっています。 議論自体の流れとは直接関係ないんですが、このエントリの中で、こちらでも触…

恋愛という概念装置(2)/あなたと私の「かけがえのなさ」

今回は、前回とはちょっと違う話をします。 まずは、以前の私の記事「『恋愛』の耐えられない軽さ」に言及されている海燕氏の記事から。 たしかに、恋愛の相手は「だれでもいい」。もしあるひとと恋愛しなければ、べつのひととするだけのことである。 だが、…

恋愛という概念装置(1)/二つの恋愛文化

しばらく放置していてすみませんでした。掲示板での議論については、論点を再整理しようともしたのですが、あまり上手くいかないので諦めました。個人的に、「非モテを社会的弱者とみなすべきか否か」という問題設定自体に意味があると思えない、というのも…

「意味の変容の場」としての「非モテ」

過去の「非モテ」という言葉のネット上での変遷については、以前「『非モテ』の変質と電波男」で述べた通りなんですが、今回はこれを「現在の『非モテ』の意味」と重ね合わせながら改めて見ていきたいと思います。 まずは、件の記事での「非モテ」の説明を再…

背後にある「恋愛についてのフレーム」問題

一つ前のエントリの書き直しです。(前エントリはあまりにピント外れだったので削除しました。) 森岡正博氏の「モテ論」をめぐる前回までの話について、掲示板での議論を踏まえて再度まとめてみることにします。 森岡氏の元々の命題は、このようなものでし…

「非モテ」に「モテへのアドヴァイス」が無効である理由

前回の記事について、muffdiving氏から詳細な批判があったので、お応えしていきます。 まず先に言うと、muffdiving氏の批判は基本的に正しいです。前回の記事はちょっと「非モテ」側に寄って読み込み過ぎだったので、その点を指摘されるのは尤もなところです…

モテへのアドヴァイスは成立しない

「モテ」に関する森岡正博氏の新たなエントリに対して、あの「もてない男」の小谷野敦氏が言及しておられるようです。 私の言うモテとは、次のことである。「モテるとは、自分のほんとうに好きな一人の女から特別な好意を寄せられることである」(←ここ変更…

愛の許し

モテのパラダイムシフトの話の続きなんですが、森岡氏の「モテ定義」からは離れます。 森岡氏の言う「恋人として大切にする」ということが不可能だとするならば、「非モテ」にはどんな選択肢が有り得るのか。今回はそんな話から始めてみることにしましょう。…

「モテのパラダイムシフト」について(2)

前回の記事に対して森岡氏から特に何も反応がないようなので、話を先に進めます。まずは、森岡氏による「恋人として大切にする」という言葉の意味を考えてみましょう。 前回の記事に関して、ブックマークコメントでこんな指摘がありました。 PANZIG 非モテ …

「モテのパラダイムシフト」について

前々回に予告したイカフライ氏への言及が残ってますが、その前に一つ「非モテ」関連の話題を取り上げます。 「非モテ」すなわち「恋愛パートナーが存在しないことに悩んでいる人達」に関しては、「気の持ちようの問題だ」という意見がしばしば見受けられます…

ネット議論の信頼性についての補足

予告していた話題です。 まずは加野瀬氏へお答えする前に、kikunosuke_a氏の最後の記事に少し触れておきます。 私の「問題意識」は、最近起きたわかりやすい問題で表現すれば、「あるある大事典2納豆ダイエットデータねつ造の結果、納豆が売り切れる」のと…

とりあえず復帰報告

私生活の方でゴタゴタしていて、かなり間が空いてしまいました。約1ヶ月半ぶりの更新になります。 そういえば、去年の3〜4月頃も1ヶ月くらい間が空いてたんですね。 とりあえず今回は、今後の更新内容の予定などを簡単に記しておくことにします。 「議論の信…