Photo: Ali Smith / Eyevine

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リベラシオン(フランス)

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Text by Karyn Nishimura

世界中が新型コロナウイルスに苦しめられた2020年の終わり、仏紙「リベラシオン」が村上春樹にインタビューをおこない、その内容が日本でも話題になった。コロナが小説家という仕事に与える影響から、日本の社会や政治、科学、芸術にいたるまで、多岐にわたる貴重なインタビューの全文をお届けする。

コロナは村上作品にどう登場する?


──村上さんにとって2020年はどんな年でしたか。

やっぱりコロナのことしか思い出さないですね。僕は小説家なので家でずっと一人で仕事をしていて、生活自体はそんなに変わらないけれど、周りの空気はずいぶん変わっているし、それはひしひしと肌に感じますね。

でも仕事がしにくくなったわけではありません。これまでと同じです。逆にずっと家にいて、仕事はずいぶん捗りました。僕の場合、(小説家という)職業柄、一人でいることには慣れているし、特に苦痛ではない。普通の人は、一人になるのは人によってはすごく辛いかもしれない。それは気の毒です。

──コロナ禍は、仕事の内容に影響を与えていますか。

それは出来上がってみるまでわからないですね。たとえば小説を書いて、出来上がって読んで、ああやっぱりこれはコロナの年に書いたものだと思う、そういう影響はあるかもしれない。それはでも、あとになってみないとわからない。

コロナ禍での経験を直接のマテリアルとして使うか、あるいはメタフォリカル、シンボリカルに使うかという選択をすることになるわけですよね。

それは自然に決まっていくことで、決まるまでにたぶん時間はかかります。僕の感じたことを、いったん自分の意識の底の方まで沈めて、もう一回浮き上がったものを見てみないとわからないです。そういうのはある意味では、小説家というか、物語を書くことでしかできないことだと思う。大事なことなので簡単に結論は出ない。

ずっと「日本」を描き続ける理由


──村上さんは海外に滞在した経験が多いにもかかわらず、多くの小説の舞台は日本です。なぜでしょうか。
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