何度も一緒に旅行できるということ

1週間、一緒に旅行できるパートナーって、すごい貴重だと思うんですよね。 1週間、一緒に旅行した直後に、「また来年も一緒に旅行したい!」と“両方が”思える人って、家族だろうと友達だろうとなかなか見つからないんじゃないでしょうか。

というのも、旅行って時間価値と金銭価値という、ものすごく貴重なふたつのリソースが制限された環境での、「時間&お金配分ゲーム」だからです。


たとえばパリに 1週間、旅行するとします。パリにいられる期間は 1週間しかありません。ひとりは美術館に行きたい、もうひとりはお買い物に行きたいとします。

いつも住んでる街なら、お互いに「じゃあ今週は美術館に行こう! んで、来週は買い物につきあってね!」みたいなことが可能です。譲り合って、順番にお互いの趣味につきあえばいいでしょ。


だけど、旅行期間は有限です。そんなに何回も来られるわけじゃない。長くても 1週間とか 10日です。ひとつの都市に限れば、せいぜい 2日ほどってことも多い。

特に期限を意識することのない通常の生活に比べて、旅行中は時間価値がすんごい高いんです。だから、(たとえ夫婦であったり親友であったり親子であったりしても)相手に合わせる負担感が、通常の何倍にも大きくなる。

でも、旅行中に「じゃあ、あたしは買い物に行くから、あなた美術館に行ってくれば?」みたいにバラバラに動き始めると「一緒に旅行をする意味ってなに?」的な疑問も生じたりします。

なかには夫婦でも、「片方は旅行が嫌い・片方は行きたいところがいっぱい!」だったりすると、あるタイミングから「ひとりで行ってきていいよ」みたいになるコトにもなります。別に仲が悪いわけではなく、両方それでハッピーだったりする。
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(↑妻は途上国や遺跡が好き、夫は途上国嫌いのため、妻がひとりでツアーに参加し始めたとのこと)


時間価値に加え金銭価値の違いも、他の遊びに比べ、旅行ではより明確に対立します。

「12時間以上かかる場所に行く時、20万円を余分に払ってビジネスクラスで行きたい」と思う人と、「新婚旅行でもないのに、そんなお金出すの、もったいなすぎるでしょ!?」と思う人が一緒に旅行するのは、プラニングの段階から大変です。

若い時の方が一緒に旅行する人を探しやすいのは、若い時はたいていの人が貧乏なので、価値観が違う人でもみんな「エコノミークラスの一択」しかないからです。飛行機にしろホテルにしろ、年齢が上がるとともに選べる選択肢が増えるので、価値観の違いが表面化し始める。


ホテルも一泊 3万円を問題ないと思う人と、あり得ないくらい高いと思う人がいます。

それは貧乏か裕福かって問題だろって?


違うんですよ。3万円だしてタブレット買うとか、3万円でスーツ買うとかは「全くもったいなくない」と思う人の中に、「一泊のホテルに 3万円はありえない」と思う人と、「 3万円のホテルいーじゃん、タマには贅沢したい!」と思う人がいるんです。

基本的に旅行中の出費というのは、「快適さにいくら払うか?」というものばかりです。モノや具体的なサービスに払われるのではなく、「心地よさ、快適さ、楽さ、スムーズさ」への対価だから、人によって価値観がより大きくぶれるんです。


それと、旅行というのは使うお金がイチイチが可視化されるという特徴もあります。家で暮らしてても、1日あたりの固定資産税とか、1日当たりの電気代や水道代なんて意識しないでしょ。1日何円の住宅ローン払ってるとか、計算したことあります?

月に 7万円のローンを払ってて、そのうち 3万円が利子なら、毎日 1000円、一週間で 7千円の利子を払ってるわけです。だけど、そんなの誰も意識しない。

でもそれを「宿泊費が一泊いくら」って言われると、非常に明確に「ソレ、お金の使い方として意味がある?」っていう判断が突きつけられるんですよね。だから価値観の違いも可視化されちゃう。


★★★


最後に旅行中って、寝てる時間をのぞき 1日 14時間くらい同じ人と(数メートルの範囲内で)一緒に行動することになります。

普通、同じ人とこんな長い時間ずううっっっと一緒ってあんまりないんですよね。夫婦でレストランを経営してるとか、そういう場合だけじゃないかな。


一緒に住んでて、ふたりとも仕事が休みの日曜日だって、朝から晩までずっと一緒に行動したりしないでしょ。ひとりでパソコンに向かってたり、ちょこっと近くまで出掛けたりするじゃないですか。

家族って、実はそんなに長い時間一緒にはいないんだよね。例外は生まれたばかりの子供と母親くらいです。子供だって一定の年齢になれば学校に行ったり友達と遊び始め、家族であっても一緒にいるのは夜と週末だけだったり、週末だって、どちらかが買い物にでかけたり、一緒にいてもリビングと別の部屋にわかれてたりする。


ところが旅行中って、朝ご飯も昼ご飯も夜ご飯も一緒に食べるんですよね、一週間とか。。。。しかも、せいぜい 40平米くらいの空間でずっと一緒にいることになる。距離にして数メートルの範囲に、1日中× 1週間、一緒に過ごす。

今はスマホがあるからだいぶマシ(同じ部屋にいても、それぞれが別の世界に入れるよう)になったけど、それでも一緒にいる時間と空間の密度は、日常生活とは比べものにならないくらい高いんです。

てか、「スマホがなかったら大変すぎ。スマホ無しでこの人とずっと一緒にいたら、そんな長い時間、いったい何を話せばいいの?」って人もいると思う。


そういう状況で、“両方が”「全く喧嘩しない」 + 「内心でもむっとしない」 + 「内心でもうんざりしない」 っていうのは、相当に価値観があい、遠慮無くなんでも言える関係性の人じゃないと難しい。

ちなみに、片方だけが「めっちゃ楽しかった!」と感じており、もうひとりは「・・・」って時や、「相手が楽しかったならそれでいいや」って思ってくれることはよくあります。でも“両方が”同じように楽しかったと感じられる関係ってのは、ほんとに貴重なんです。

だから、一週間一緒に旅行してもストレスがなく、「また行こう!」ってすぐに思える人が見つかったら、ほんと大事にしたほうがいいし、そういう人が見つかるなら・・・


ってことを、マーケット感覚を働かせて考えてると・・・・いろいろ思いつくでしょ?


そんじゃーね!


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