裏側本の裏側

先日お知らせしたように、今回の新刊本はキンドルのセルフ・パブリッシング(著者が自分で出版する自費・自己電子書籍)という形で出しました。

昨夜は瞬間風速的にですがランキングトップとなっていました。さっそく多くの方に読んでいただいているようで大変うれしく思います。


下記のような感想も頂きましたが、私自身「夜に原稿を仕上げてアップロードし、朝起きたら、もう売られていた」というのは、ホントにすごい機動力だと思いました。



ちょうど一年くらい前、アマゾンがキンドル端末の日本での販売予約を始めました。その後、書き手が直接、出版を手掛ける KDP = Kindle Direct Publishing が、日本でも可能になると発表されました。

その時「2013年には、KDP本を出そう!」と決めました。将来、KDPを利用して本を出すことはほぼ確実だったので、初年に一冊だしておき、売上等のデータを取得しておくことが重要だと思ったからです。

また、ほんとーに、私のような(技術的な)知識の無い人でも自力で本が出せるのかも、確認しておきたいと思いました。結論としては、「可能だけど、それなりに大変でござるよ」って感じです。

★★★

タイミングとしては、最初から、今年の前半ではなく後半に出すつもりでした。売れ行きが「スマホやタブレットの普及数に規定される」ことは火を見るより明らかだったので、ちょっとでも遅いタイミングのほうが、多くの方に読んでもらえると思ったからです。

内容的には、「ネットでしか売らなくても問題がないもの」にしようと考えました。今回の本は「ブログ運営の裏側」について書いたものですが、そんな本を“私のブログを読んだことがない人”が買うとは思えません。つまり、紙の本として書店で売る意義が大きくないトピックなのです。

反対にいえば、“紙の本で出す意義があるトピック”=“ブログ読者以外にも手に取ってもらえそうなトピックの本”については、従来通り、紙の本でも出していく予定です。

★★★

アマゾン以外で売らないのは、アマゾンの独占販売にすればロイヤリティの選択肢が増えるのと、「どうせ大半がアマゾンで売れるのに、他のところにまで登録するのはめんどくさいから」です。

あと、「やっぱり紙で読みたい」という人もいるだろうと思って調べてみましたが、アマゾンのプリント・オン・デマンドは出版社でないと使えないらしいのであきらめました。

★★★

価格設定に関しては、いろいろ実験的に考えています。京セラ創業者の稲盛和夫氏は「プライシングは非常に重要な経営判断」とおっしゃっていますが、これには私も超同意。プライシングは資本主義の要です。


今、電子書籍の価格は、
1)紙の書籍が電子化された場合に、紙の書籍の定価の 8割程度に設定される
2)最初から電子書籍として出された本が、99円とか100円に設定される
3)著作権切れの作品や、書籍ではなく事実上の「営業パンフレット」が無料書籍として配布されている
と、3つの価格帯の本が混じっています。


1)商業出版
2)自費出版
3)公共財産 & 広告チラシ
と言ってもいいかな。


1)の例としては・・・
phaさんの『ニートの歩き方』は、紙の本が 1659円で、キンドルが 1200円

堀江貴文さんの『ゼロ』は、紙の本が 1470円で、キンドルが 1045円
ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく

ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく

  • 作者:堀江 è²´æ–‡
  • 発売日: 2013/11/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
私が先日出した本は、紙の本が 1365円で、キンドルが 1100円です。

ただしアマゾンはこれらの電子書籍価格をセールで半額にすることも多く、実質的には 600円程度で買っている人も多いと思います。

それ以外では、メルマガの料金設定(一ヶ月に 600円から 800円程度)も参考にしました。今回の本の文章量は、紙の本の 6割から 7割程度であり、メルマガだと 2ヶ月(8本)分くらいの量に当たると思います。


いずれにせよ、100円の電子書籍を出す気は全くありませんでした。今、紙の本と変わらない価格でオリジナル電子書籍を売れる人は極めて限られています。

“ちきりん”は明らかにそのうちの一人なので、ちゃんと(?)それにチャレンジしないとあかんでしょ、って思ったからです。

だから( 900円台という)価格帯を最初に決めたうえで、その価格に見合う内容とするため、これまで開示したことのなかった内容まで踏み込んで言葉にしました。

おかげさまで売れ行きは順調ですが、果たして紙の本を出す場合と比較してどこまで到達できるのか、興味深いところです。

★★★

この 9年間、ブログ運営はいろんな判断の連続でした。文章を書くことには何の苦労もなかったけれど、こんなたくさんの人が読むサイトの運営は、全く未知の領域だったからです。

あちこちに頭をぶつけながら、手探りでやってきたその経験を、なんらかの形で残しておきたいと思い、今回の本が出来上がりました。


私は“書き手”として成功したいと思ったことはありません。憧れのように「有名になりたい」「作家になりたい」と感じたこともありません。手に入れたいと考えたものは別のものでした。

よく「ちきりんは恵まれてるから」「才能があったから成功した」と言われます。でも私が強いのは、「自分が欲しいモノと欲しくないモノ」が、きちんと理解できているという点にあるんです。

今回の本を読んでいただき、そのことが伝わったらいいなと思います。



そんじゃーね!

★「Chikirinの日記」の育て方 ご購入はこちらから


★iPhone, iPad, Android端末で読みたい方は、こちらのページをご覧ください