スポンサード・シティ(新型企業城下町)のススメ

最近、コンパクト・シティとかスマート・シティという言葉をよく聞きます。高齢化や過疎地対策として、エネルギー問題解決の手法として、さらに最近はゼロから街を設計する必要がある地域がでてきたりで注目度があがっています。

コンパクト・シティとは徒歩や自転車、バスなどで生活できる(つまり“マイカー”に依存しないでやっていける)街のこと、スマート・シティとはITや高速通信網を利用して、エネルギー、交通、生活支援システム等が最適化される街、といったイメージでしょうか。

これらは高度成長&人口増加時代の“ダム、空港、高速道路、埋め立て”などに替わる“新型公共事業”ともいえ、新法ができてモデル都市にでも指定されれば大型予算が付くかも!?なので、みんな虎視眈々と狙っているわけです。


しかも昔型の公共事業だと「儲かるのはゼネコンと重電メーカーばかりなり」だったけど、コンパクトシティやスマートシティで儲けられる業界はそれよりかなり幅広い。

たとえば自動車会社は電気自動車や自動運転システムを含んだ交通システム全体を設計したいだろうし、エネルギー関連ならスマートグリッド+分散型発電システムで街ごとのエコシステムを作りたい。

電機メーカーは、家中の機器をすべてつないで遠隔操作や安全監視に役立てようと目論み、住宅メーカーもエコ住宅や耐震住宅はもちろん、単身高齢者のケア住宅など新たなコンセプトの住居を作り出すべく必死で検討中、のはず。

言わずもがなですが、通信、モバイル、IT産業はこれら新機能都市を支えるインフラ、バックボーン産業となりうるし、セキュリティサービス、宅配をはじめとした物流産業、コンビニなど小売店も、それらの都市のネットワークポイントを構成する重要産業となります。

つまり、コンパクトシティ&スマートシティ構想は幅広い産業にとって「巨大な成長機会」となるわけで、人口減少、高齢化で市場縮小が進む日本国内においては、医療・介護と並ぶ超有望市場なわけです。


ところがコレ、なかなか話は進みません。理由のひとつは「地方公共団体が絡むことが必須だから」でしょう。企業と消費者だけなら「やってみてダメなら発売中止」もできるけど、行政が絡むとそうはいかない。予算にも細かく議会の許可が必要だし、イチイチ法律や規制が絡む。巧くいったらいったで「特定の民間企業への利益供与」とか言われちゃう。

日本郵政がかんぽの宿を民間企業に売ろうとしてボコボコにされてましたが、あんな大赤字の事業を売るにも批判を浴びるんだから、行政が民間企業と一緒に新しいことをやるなんて超煩雑。加えて我らが霞ヶ関の国土交通省様も「オラオラオラオラ、オレ様の担当領域だぜえ!」とごっつい勢いで身を乗り出してきてますからね、マジ大変。


★★★


で、ちきりん的には「いっそ発想を逆にしてみたらどうなの?」とも思ってます。

財政赤字に悩む諸都市は、今までのように“霞ヶ関詣で”をして中央に補助金を乞うのではなく、民間企業から「スポンサー」を募ればいいのでは?

具体的には、「都市再建のスポンサー」として公に協賛企業を募り、応募してきた企業(もしくは企業グループ)に構想全体のプレゼンをさせ(議会で発表した後、市民にも新聞やネットサイトで公開)、住民の意向も踏まえて最終的に何社かの民間企業(自動車会社と住宅会社とIT会社など)をスポンサー企業として選び、共同プロジェクトとして街づくりをする、というイメージです。


もちろん市の予算で一定額は払うけど、一部は「宣伝費用」として企業に払ってもらう(割り引いてもらう)。さらに「市の命名権」を5年とか10年単位で売るのもいい。たとえば世田谷区の名前を「世田谷シャープエコ特区」にしちゃうとかね。

そしてスポンサー企業のリーダーシップも利用しながら、自然エネルギー村を作ったり、電気自動車や電気コミュニティバスだけしか走らない街を作っちゃう。

もちろん、タブレットを全家庭に配って行政サービスに利用する「アップルさいたま市」とか、全戸に“光の道”を引いちゃう「ソフトバンク光の道市」、「豊田スマートモバイル市」あたりもすぐにできそう。「ワタミ・ハッピーケアシティ」もいいよね。

スポンサー企業も、実際に運営してみてのテストマーケティングで商品やサービス内容の改善ができるし、他市や他国から見学が相次げば実地ショールームとしても使える。日本はもちろんアジアのテレビなどにもどんどん取り上げてもらえれば万々歳じゃない?


どうせ今までだって“企業城下町”は多数存在し、特定企業が出て行ったら存続しえないような街もあったよね。そういう場合、進出企業にはかなりの優遇策も実施してたはず。

だったら今後は、「最初から民間企業と組んで街づくりをします!」みたいに宣言したっていいと思う。てか、国土交通省を通じて予算配分する(=確実に利権化する)より、公けに世界中からスポンサー企業を募って競わせたほうが絶対無駄が少ない。


財政の余裕はないけど高度な行政サービスを実現したい(せざるをえない)自治体、新たな成長機会を渇望しているけど日本国内にはなかなか市場が見つけられない日本企業、いっそ積極的に手を組めばいーじゃん。

どこの市や町もお金がないし、中央にももうお金はありません。消費税を上げても年金や医療費、生活保護など既定の高齢者福祉に消えていく。

だったら民間企業が入れるところはどんどん(もちろん外資系企業も海外企業も積極的に)参加してもらって、各“企業都市”が競いあってオモシロイことをやればいい。

ちきりん的には自分の街が「グーグル区」でも「バイドゥ市」でも抵抗ないです。実験的で特徴ある街が増えたら、楽しそう。ぜひあちこち見に行ってみたい。


というわけで、ちきりんは“スポンサード・シティ”、もしくは「新型企業城下町」コンセプトを強く支持します!


そんじゃーねー!




<過去関連エントリ>
・“生活支援生産性”の高い街作り



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