「3つの偽り」 by堺屋太一氏

リーマン破綻による金融混乱が続き、今年 1-3月のGDPは(年率換算で)マイナス 15%にもなるらしい。これでひとつ思い出した記事があるので、それについて書いておきます。

旅行中に読んだ週刊現代のGW合併号に堺屋太一氏が書いた記事です。

関西出身、元通産官僚で作家、“団塊世代”の名付け親でもある堺屋氏は、ちきりんの尊敬&信頼する洞察家のひとり。今回の記事も“なるほど”ってことでちょっと感心しました。


今日の発表とも絡みますが、IMFが発表している今年の先進国成長率予想“米国はマイナス 2.6% ,日本がマイナス 6.2% ”という数字をあげ、

「なぜ日本経済だけがこれほどの惨状に陥ってしまったのでしょうか」と問いかけ、その答えとして、「直接の原因は輸出の落ち込みですが、その背景にあるのは、官僚による「3つの偽り」の弊害です。」と指摘しています。


「3つの偽り」とは?

1.「偽りの自由化」


小泉構造改革で自由化が進んだと言われているが、進んだのは製造業と携帯電話業界、タクシー業界くらいです。本当に自由化が必要な21世紀の成長産業である、医療、介護、教育、農業などは一段と規制が強化されています。


ものづくりだけを自由化したので、経済全体が輸出依存型になってしまったのです。これは小泉改革が悪かったのではなく、その改革を中途半端に終わらせた官僚の罪悪です。

2.「偽りの国際化」


官僚は「日本は国際化が進んだ」と言い続けてきましたが、それはモノだけの国際化でした。その他の分野、たとえばおカネやヒトの国際化はむしろ後退しています。


たとえばブルドックソースやJパワーのケースのように、外資の資本参加をはねつけています。

労働賃金が高くて高齢化が進んでいるのに2008年に日本人の人口は純流出(入国より出国が多い)に転じてしまいました。これは先進国で唯一の現象です。特に注目すべきは、研究者や若者の流出が多いことです。

3.「偽りの成長」


2002年から 2007年にかけて日本はいざなぎ景気を上回る長期成長を続けているといわれてきました。

しかし実際には、世界経済の成長に引きずられて輸出が伸びていただけで、経済成長率でみてもG7の中で七等賞にすぎません。


また、15兆円の経済対策について、

しかもこの不況に対して、麻生総理は霞ヶ関に経済対策を丸投げしてしまった。

大型補正予算は額こそ15兆円と巨額ですが、中身は各省官僚がこれまでやりたかった事業を持ち寄っただけ。メリハリどころか目玉の一つもありません。


(中略)


15兆円を有効に使えば日本の社会を劇的に変えることができます。

たとえばリニアモーターカーを東京から福岡まで通すことも可能でしょう。世界最高の研究施設を10カ所造れます。未来に希望を抱けるような目玉事業を興すこともできるのです。


しかし今回の経済対策を見て、「これで世の中がぐっと便利になる、おもしろくなる」と胸を弾ませた読者の方はおられるでしょうか。


あと、官僚について至言だと思ったのは下記。

日本の官僚はおカネには清潔だが、権力には貪欲です。他人(民間)の仕事や暮らしを自分の思うままに動かしたいのです。


その後、現在の公務員制度改革が官僚によって「より、官僚に権限を集中させる仕組み」として作り上げられようとしている現状を説明した上で、

日本経済を疲弊させながら自分たちの権限拡大に邁進する官僚の暴走を止めるために、国民はどう対応していくべきなのか。まず読者の皆さんには、ふたつのことを肝に銘じてもらいたいのです。


ひとつは「官僚は偉くない」と認識すること。そしてもうひとつは、その官僚を変える公務員制度改革こそが日本を救うということをはっきりと知っておいてほしい。


私は自分のブログの中で「世の中では何が起きているのか。世の中はどうなっていくのか。私たちはどこに向かうべきなのか。」ということを考え、書いていきたいと思っています。

(もうひとつは、「人間ってなんなのか。生きる意味って何なのか」みたいなこと。つまり、“社会”と“人間”がちきりんがブログで書いていきたいと思っていること、です)

また、それを「わかりやすく、インパクトと説得力のある文章として構成し、表現したい。」と考えています。

そんな私にとってこの堺屋氏の記事は「お手本」のような文章だったので、今日は半分以上が引用というエントリになってしまいましたが、記録として書いておくことにしたです。


がんばろ! 

(堺屋太一氏は今 73歳。と考えるとちょっとメゲます。今の年齢でこんなレベルでは一生追いつけないってことかも、とも思う。でもあきらめたら進歩しないし、自分にだって何かがあるに違いないと信じて頑張ります。。。)



そんじゃーね!

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