2023年、個人的に行って良かった場所の一つ、夷隅郡大多喜町の古民家ゲストハウス「わとや」。

ゲストハウスとは、ホテルや旅館とは異なり、ドミトリー(相部屋)があったり、お風呂やトイレが共用だったりすることで、比較的安価で泊まれる宿泊施設のことです。

宿のスタッフや宿泊者同士の交流があり、その地域のことも深く知ることができるので、私は昔からあえてゲストハウスに泊まる旅をよくしていました。

ただ千葉県内では未経験。調べてみると千葉にもゲストハウスが結構増えている!

中でもひと際個性を放っていたわとやを予約してみたところ、想像以上に刺激的な体験が待っていました。

公開 2023/12/30(最終更新 2024/03/25)

広報 広田 みずほ

広報 広田 みずほ

埼玉県生まれの千葉県民。地域新聞社で広告の企画営業、編集部を経て現在広報担当。好きなものは東南アジアとハイボール。勝田台駅周辺の酒場放浪記を書きたい。★X(旧Twitter)★@tahirom2

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ゲストハウスとは?

素泊まりなら1泊3,000~4,000円前後で泊まれるところもあり、バックパッカーをはじめ世界中の旅好きに利用されているゲストハウス。

何と言ってもリーズナブルに宿泊できるのがうれしいところですが、それ以外にもプライスレスな魅力がたくさんあります。ただ、ホテルや旅館などとは異なる点が多いため、初めての方には少しハードルが高いと感じるかもしれません。

大きな特徴は、1つの部屋に複数人で宿泊するドミトリー(相部屋)があるということ。

「初対面の人と一緒に寝泊まりするなんて!」と思いましたか?

大丈夫、部屋のスタイルは宿によってさまざま。男性専用ドミトリー・女性専用ドミトリーの他、個室があるゲストハウスも多々あります。中にはファミリーで泊まれる一棟貸し切りタイプも。神経図太めの筆者はドミトリーでぐっすりですが、初めての方はまず個室があるゲストハウスから始めてみると安心です。

バスルームやトイレは共用でアメニティ類は置いていない場合がほとんどなので、歯ブラシやタオルなど必要なものは持参しましょう。

食事の提供も基本的にはありません。その代わり、共用のキッチンで自炊ができたり、近隣のおいしいお店を紹介してくれたりするのもゲストハウスならではの楽しみです。最近ではカフェやバーを併設しているゲストハウスも増えてきました。

ゲストハウスにはオーナーさんの人柄や思いが反映され、それぞれに全く違った個性があるので、目的や自分に合った雰囲気のところを選べば、旅をより特別なものにしてくれるはずです。

築100年以上の古民家をリノベーションしたゲストハウス「わとや」

さて、今年の夏休み、私がぜひとも泊まってみたいと足を運んだのが大多喜町にある古民家ゲストハウス「わとや」です。

古民家ゲストハウスわとやの外観
わとやの母屋。共用リビングにはハンモックが

なんでも「かまどでご飯を炊き、五右衛門風呂で癒やされる宿」とのこと!

期待に胸を膨らませ訪ねると、管理人のカズさんと2匹のかわいい犬が迎えてくれました。

わとや管理人のカズさんとゴールデン・レトリーバーのデンスケ、ブリタニー・スパニエルのノリオ
管理人のカズさんとゴールデン・レトリーバーのデンスケ、ブリタニー・スパニエルのノリオ

まずはデンスケとノリオにご挨拶(ネーミングセンスが絶妙)。犬に慣れていない人でも仲良くなれる方法をカズさんが教えてくれます。2匹はよくしつけられていて、お客さまの宿泊スペースには決して足を踏み入れません。

ゴールデン・レトリーバーのデンスケ、ブリタニー・スパニエルのノリオ
中には入らずのぞくだけ

犬を怖がっていた子どもが、帰る頃にはすっかり犬好きになっていたというエピソードも。デンスケとノリオに会いたいがために再び泊まりに来る人もいるのだそう。なんて優秀な看板犬!

わとやがあるのは、小高い里山の頂上。広々としたウッドデッキから望む眺望は抜群です。

わとやの手作りブランコ
こ、これはハイジのブランコでは!! 乗る

カズさんお手製の巨大ブランコをこげば、青空に吸い込まれていくよう。

そんな都心から車で1時間半ほどの場所とは思えない環境にあるわとや、なんと冷房がありません。

暑さにめっぽう弱い自分が、今年の酷暑の中、冷房なしで過ごしたなんて今でもちょっと信じられないのですが、風通しの良い日本家屋は扇風機だけで十分快適だったのです。

五右衛門風呂とかまどで炊くご飯

わとやに来たならば、露天の五右衛門風呂にはぜひ入りましょう。

五右衛門風呂を沸かすわとや管理人
カズさんが火をおこして沸かしてくれます

ところでお気付きでしょうか…そう、五右衛門風呂には脱衣所も仕切りもありません。

開放的!!

その分、刻々と変化する空に抱かれながら、旅の疲れを癒やすことができます。念のため水着を持ってきて正解でした。女性の方は水着持参で来ることをおすすめします(そして屋内に普通のお風呂もありますのでご安心を)。

露天の五右衛門風呂
夕立がやってきて天然のシャワーを浴びました

夕食は宿泊客みんなで作ります。カズさんが用意しておいてくれた食材を見て、何を作るか相談。ご飯は大多喜産のお米をかまどで炊き上げます。

かまどでご飯を炊くわとや管理人
昔ながらの方法で
新鮮な地元野菜を生かしたグリル
新鮮な地元野菜を生かすため、シンプルなグリルにすることに

この日の宿泊客は、都内からいらしたご夫婦1組と大学生が1人。年齢も職業もバラバラの、ここに来なければ知り合うことはなかったであろう者同士が同じ食卓を囲む。なかなか不思議な状況ではあるのですが、さまざまな生き方や新しい価値観に触れられることにゲストハウス泊の醍醐味を感じます。食後はホタル観賞や花火など、ひと夏の思い出を共にしました。

虫たちと眠る夜を越えて

古民家内に浮かぶツリーハウス
古民家内に浮かぶツリーハウス

こちらの見た目だけでワクワクしてしまうツリーハウスが私の宿泊した寝室です。

わとやには、2段ベッドがある定員6名のドミトリーと、定員3名の古民家内ツリーハウスがあります。その日の状況や男女比によって部屋割りが決まるため、寝室の指定はできません。個室を希望する人は、定員2名(ケースにより3名)の離れ(ロフト小屋の貸し切り)を予約しましょう。

先述の通り、わとやには冷房がないため、夜も窓を開け放って寝ます。

つまり、虫たちもがんがん入り込んできます。

虫だけは苦手な筆者、かなりビビりながら布団に寝転び天井を見つめていると、大きなバッタのような生き物が、見事な瞬発力で蛾を捕食したではありませんか。

貴重な瞬間を目撃し、「自分も自然の中の一部に過ぎないのだよな」などと思った私は、やがて共存を受け入れて眠りにつくのでした。

そんな夜を越え、極めつきは朝ごはん。

わとやの朝はウッドデッキにちゃぶ台を並べることから始まります。

古民家ゲストハウスわとやのウッドデッキとちゃぶ台

絶景を目の前に、みんなでTKG(卵かけご飯)をいただきます。「あぁ来て良かった!」と五感が喜ぶ瞬間です。

みそも梅干しもカズさんの手作り
みそも梅干しもカズさんの手作り

「私がわたしに還る場所・わたしとあなたが繋がる場所」

田舎暮らしの達人のような管理人カズさんですが、実は東京生まれ東京育ち。2015年に大多喜町に移住し、わとやをオープンしました。

そのきっかけとなったのは、2011年の東日本大震災。災害でガスや電気が止まったとしても「生きる力」が、自分自身にも未来を担う子どもたちにも必要だと考えていた時、大多喜町の休耕田に出合い米作りを始めました。わとやの古民家は、その休耕田の持ち主から紹介してもらったもの。そんな思いから作り上げられたわとやには、「都会で暮らす我が子に自然の中でしかできない体験をさせたい」という親子連れが多く訪れます。

現在は、大多喜の素晴らしさをもっとたくさんの人に感じてほしいと、わとやの近くに新たな宿泊施設を建設中です。パーマカルチャーを実現する、一つの「村」のような施設をイメージしているとのことで、こちらの展開も非常に楽しみです。

わとやが出掛ける新たな宿泊施設の模型とイラスト
カズさんが運命を感じたというその場所は、川と滝がある神々しい秘境

たまたま同じ日、同じ宿を選んだ人が交差するゲストハウス。

職場での肩書きなどは一旦脱ぎ捨て、皆等しく「ただの旅人」として過ごした時、私は何者でもない自分に再会したような感覚になります。

わとやが掲げる「私がわたしに還る場所・わたしとあなたが繋がる場所」というのは、本当に言い得て妙です。

茨木のり子の詩「一人は賑やか」
宿泊者と程よい距離感で繋がりながら、思い思いに一人の時間も満喫できる自由さがゲストハウスの魅力

普通の旅では飽き足らないというあなた、大自然の中に身を置き、一期一会を楽しむゲストハウス泊を体験してみませんか?

古民家ゲストハウス「わとや」の詳細

住所/千葉県夷隅郡大多喜町筒森810
アクセス/小湊鐵道線「養老渓谷駅」「上総中野駅」から車で10分(15時以降お迎え可能)
電話番号/0470-64-6351
料金/ドミトリー1泊7,150円、離れ1泊10,450円(2食分の食材費込み)※一棟貸しは要相談
ホームページ/http://watoya.com/
Instagram/@watoya810