先日、世界報道写真展に行ってきました。京都新聞本社ビル地下の工場跡の空間で開催されています。12月29日まで無料、写真撮影も可です。
戦争、災害、貧困、環境など多分野の写真が大きく引き伸ばされていて、わかりやすいキャプションが添えられています。
12月初旬に上息子(ウエムス)と行ったところ、たいへん勉強になったので、ほうぼうの授業で勧めました。
同志社からは一駅なので、特殊講義<「負の遺産」と政治>受講生のみんなに行ってもらい、「私が選んだ一枚」とその理由を発表してもらいました。

以下、みんなの選んだ一枚とコメント、私が印象に残った写真とをいくつかピックアップします。
ちなみに、みんなが選んだ一枚、私は撮っていませんでした。もちろんどれも覚えていますが、全部撮るのもちょっとあれかな、と遠慮したのです。こういうときは全部撮っておくものですね!
学生さんたちはそれぞれで撮って発表の時に映写してくれましたが、撮影者の著作権を尊重して、それらは使わないでおきます! というわけで、写真はすべて私が撮影したものになります
◇一枚目からショッキングな写真がありました。「父の痛み」と題した作品です。下の写真でオレンジの服を着た男性が写っているものです。

これを選んでくれたAさんは、次のように話してくれました。
2023年2月6日に起こったトルコ・シリアでの地震発生後の写真です。瓦礫の下に埋もれた娘を助けることができない状況で、娘のそばを離れることを拒んだ父親の写真です。その後、娘は亡くなりました。世界報道写真展の最初の1枚として飾られている写真です。力のない手を握り続ける父の表情がとても印象に残り、今同じ時に違う場所ではこんなことが起こっているのかと改めて実感させられました。(受講生のAさん)
◇ウクライナのダムが壊され、周囲が水没した件に関する「カホフカ・ダム 戦争地帯の洪水」のシリーズ。

ドイツで石炭(!)の露天掘りのために村々が立ち退かされている様子と、それに抗議する人々の姿を追ったシリーズ「無人地帯」。

ドイツよ、お前もか、とショックを受けたシリーズ
こちらは、「アマゾンの干ばつ」。

◇これはいったいどういう状況?? と目を見張ったのは、「赤い空 緑の水」シリーズの一枚。

石油の漏出や精製過程で出るメタンガスによるガスフレアで真っ赤に燃える空と、それが常態となっているのか、平静にゲームを楽しむベネズエラの人々。ベネズエラは、なんと国民の約82%が貧困状態にあり、人口の半分が基本的なニーズを満たす食糧を手に入れるだけの収入を得ていないそうです…
◇シュールレアリスムの絵画なのかと思った、「危機に瀕したアフガニスタン」。

この写真と同じシリーズから選んでくれた学生Bさんは、このように話してくれました。
特に印象に残っているのが、右下のリンゴを凝視する子ども達の姿。たった一つのリンゴを見て大きく目を見開く様子から、恒常的に食べ物が枯渇している状況が容易に想像できる。紛争のない国では、彼らと同じ年代の子どもはゲームやおもちゃに目を輝かせるであろう。しかし、紛争下ではそうではない。その差に愕然とする。現在、世界各地で紛争や戦争が起こり、彼らのような子どもたちは日々増え続けている。その一方、戦争が長期化するにつれ、現地から遠く離れた日本では関心が薄まりつつある。たとえ盛んに報道されなくなったとしても日々人が死に、飢えていると思うと恐ろしい。(学生のBさん)
◇Cさんは、南アフリカの「ヴァリナ・バベナ」を選んでくれました。
認知症が集落で差別されている地域で、認知症の父を見守る娘の姿に心を打たれました。いままでハンセン病や水俣病など様々な病気に関する資料を読んできましたが、思えばどれも差別がセットだったように思います。別の展示で、日本の認知症患者は世界でもトップレベルに多いという事を知りました。日本で認知症患者が世間から差別の目にさらされることが少ないのは、患者の数も多く、病気についてきちんと理解している人が多いからなのだと気づかされました。(学生Cさん)
◇Dさんは、自身の体験から、「ミャンマーの青年兵」を選ばれました。
ミャンマーのクーデターが起きた時にミャンマーにいた人(当時15歳程)の子を思い出して選びました。その子と歳の近い子が戦ったりしてるのかと思うと同時に、自分自身が希望しての就いた職業というわけでなく、自国を守るために、まだ若い人が兵士となり、命の危険に日々晒されていることに色々なことを考えさせられました。(学生Dさん)
◇
アジア地域の作品では、私はこちらに衝撃を受けました。「チルンシ川の汚染」。インドネシアです。泡だらけなのです。

そして、私が一枚だけ選ぶとしたら、こちらかな…
「闘う、沈まずに」。フィジーのキオア島のおじいさんと孫です。

この島は、海面上昇のため、刻々と地面が侵食されていっています。
この写真の祖父は、孫を抱いて、自分が少年だった頃の海岸線と記憶するところに立っています。
このあたりの人びとは、おそらく数年のちには移住せざるを得なくなる可能性があるとのことですが、しかし、この祖父と孫の眼差しには強さと意志を感じます。
◇ほかにも、知るべき、考えるべき状況を撮った、優れた写真がたくさんあります。
年末の忙しい時期ですが、ぜひぜひ足を運んでいただければと思います。
