作家の値段

作家の値段 (講談社文庫)

作家の値段 (講談社文庫)

最近、出久根さんの本にまつわるエッセイをよく読んでいる。情報量が多いのでなかなか読み進まないのがもどかしいのだが、非常に面白くて困っている。
この『作家の値段』という本は、有名な小説家の稀覯本が、古書業界においてそれぞれいくらぐらいの価格になるか、ということを題材にしたエッセイだ。出久根さんの古書店主としての知識と経験が存分に生かされていて、読んでいて楽しいことこの上ない。司馬遼太郎、三島由紀夫に始まって、山本周五郎、川端康成、太宰治、寺山修司、宮澤賢治、永井荷風、江戸川乱歩、樋口一葉、夏目漱石、直木三十五、野村胡堂、泉鏡花、横溝正史、石川啄木、深沢七郎、坂口安吾、火野葦平、立原道造、森鴎外、吉屋信子、吉川英治、梶井基次郎まで総勢24名の作家について、それぞれのエピソードを紹介しつつ、今現在における初版本がいくらで取引されているかをふまえながら、その作家を「値踏み」していくという、出久根さん本人曰く「本邦初の、読んで損はない、どころか読めば儲かる実益作家論」なのだ。
直木が有るのに芥川が無いのはなんでだ、と思った方、この本は続編も出ており、芥川や谷崎はそこに登場する。
ところで、この本を読んでまず思ったのは、これは『ビブリア古書堂の事件手帖』のネタ本だなということである。例の太宰の『晩年』のアンカット極美本の古書価が300万という話も出てくるし、福田定一の話も出てくる。出久根さんは栞子さんよりも饒舌に語りかけてくるのだ。
そう思って、ビブリアを読み返してみたら、やっぱりあった。1巻の305頁目の参考文献の一番最後に、出久根達郎『作家の値段』(講談社)とある。3巻の参考文献のリストにも一番最後に出てくる。ネタ本ということを知らず、偶然読んでいたのだ。
『ビブリア古書堂の事件手帖』に出てくる古本トリビアが好きな方はぜひ読んでいただきたい本である。あと。書店はビブリアの隣にこの本を並べて置くべきだろう。