お金を払わないとオリンピックの応援もできないのか

 

 リオオリンピック、盛りあがったのはいいのだけれども、そのおかげさまであったのかどうなのか、今月の全国書店売上は壊滅的であった。みなさんやはりテレビでオリンピック選手を応援していたのだろうか。

われわれ書店員が、誰かを応援しようという気持ちを表現する際には、フェアという企画をたてることが多い。例えば、『がんばろう熊本フェア』という売場を作って、そこに熊本関連の本を集めるみたいな、そういう企画である。その売場にメッセージコメントなどを設置したりして、お客様に共感してもらう。それで本も売れる。

フェアが書店の顔だと言われ、書店それぞれの個性がもっとも見えやすい場所になっているのは、そうした書店の中の人の気持ちがこもっているからなのである。

では、このオリンピック期間中に「リオオリンピックフェア!がんばれニッポン!」ってやってる書店をどれぐらい見かけただろうか?

やっている店もあったかもしれないが、私の店はやらなかった。

オリンピックが始まったら書店の売上は大打撃になる、だから、オリンピックは書店の敵なのだ、メダルとか記録とかどうでもいいんだ、絶対に応援なんかしてやるものか、と思っていたわけではない。

我々も応援したかったのだ。本当は。ところが当局よりフェアを禁じられていたのである。

「書店は、オリンピック協賛企業ではないので、「五輪」「オリンピック」などの言葉や五輪マークなどを使用するのは禁止です。

また「リオ」「リオデジャネイロ」「がんばれニッポン!」のようなオリンピックを想起するような言葉も使用禁止です」

リオは地名だろ!と言いたくもなるが、こんな制約があったのでは、フェアで大々的にオリンピックをプッシュするのはさすがに少々厳しい。書店の中の人が純粋にオリンピックを応援しようと思って作ったフェアも問答無用で商用利用とみなされてしまうというわけだ。

そんなの関係ねえ!とそういうのを無視してフェアをやった店もあっただろう。現に検索したらいくつかの店が実際にフェアをやっている。

以前のオリンピックはここまで厳しく言われなかったんだが、難しい時代になってきてるね、と思う。4年後の東京五輪でさらに厳しくなっていることを考えると、東京でオリンピックやってるのに、東京の書店ではオリンピックフェアをどこもやってないってことに現実としてなるんだろうなと、少々悲しく思うのであった。

 

 

 

 

 

 

人はどのようにして買う本を決めているのだろうか?

 

morioka.keizai.biz


盛岡のさわや書店さんの謎の文庫本Xのニュースを読む。

こういった書店での販売努力の企画は大好きで、すごく応援したくなる。

先日も三省堂書店さんの池袋本店で、夏の名作文庫を販売する面白い企画をやっていたので思わず購入。どんな企画かというと名作文庫40タイトルを独自に選出し、番号をつけて、おみくじで選んでもらうのだ。

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これがすごいのが、中が確認できないように袋づめされてるだけじゃなく、カバーも栞も統一されたデザインで用意されており、おみくじまでちゃんと作ってある点だ。

おみくじにはヒントが書いてあり、たとえば私の引いた3番のおみくじにはこう書かれている。

今宵のよふかし本の手掛かり

【作者】東京帝大の英文科講師となった際、生徒から授業が不評で神経衰弱になった

【作品】九州の田舎から上京した若者が都会的な人々やものと出会い「世界の見方」を改める物語 

 凝っている。

これが本の定価362円+税で買えてしまうのである。その準備作業がどれだけ大変か想像がつく身としては素直に感動してしまう。なんてすごいんだろう。

ところで、今回のタイトルであるが、こういう事例を考えたとき、人はどのようにして買う本を決めているのかということが気になってくる。

そもそも本というのは、読む前に購入することがほとんどなわけだから、断片的な手がかりだけで本を買うかどうかを決める。

それは、表紙であったり、著者であったり、値段であったり、あらすじであったり、パラパラとめくってみたときのフィーリング(これが一番大事だったりする)であったりするのだが、最終的かつ総合的な決め手は人によっても、その時々によっても異なるものだろうと思う。

今回、さわや書店さんの企画で興味深いのは、値段以外の書誌情報が全くわからないのに売れているという点。「この本を読んで心が動かされない人はいない、と固く信じています」「それでも僕は、この本をあなたに読んで欲しいのです」というメッセージだけで、お客様は本を購入されているのだ。

これは書店とお客様の信頼関係が成り立っていないと起こり得ない現象だ。そして信頼関係が成り立っていれば、こうしたおすすめだけのどんな内容なのかまるでわからない本でも、買っていただけるだという、商売の本質にも関わる話でもある。すごいものだ。

ところで文庫本Xって、何なんでしょうね。気になってしょうがない。

 

 

 

 

 

本屋さんは何屋さんなのかわからなくなってきている

 

NHK 日本語発音アクセント新辞典
 

  取次の営業さんが月2回くらい巡回に来られる。今月の売上は全国的にも惨憺たる数字になっていて、これは非常にまずいですね、となるのだが、コミックは人気連載も終わりましたし、去年は『火花』がありましたしねー、で今回もトークは終わってしまい、特に売上を改善する策があるわけでもないようであった。

営業さんが持ってきた7月の全国の書籍の売上上位タイトル一覧を確認してみる。

1位は池井戸さんの『陸王』。まあこれはともかくとして、5位に『NHK日本語発音アクセント新辞典』がランクインしていたのには驚いた。18年ぶりのロングセラー改訂版なのであるが、この辞典は使用する人と用途が限られた専門的な辞書であって、そんな爆発的に売れるような本ではない。これが5位とはよっぽど売れるものがないらしい。

旧版が売れていた頃を知らないらしいまだ若い営業さんは「何ですかねーこの本は」と困惑していた。

 

 さて、そんな営業さんが今回

「なんか流行ってるらしいんですよ、これ」

といって提案してきた商材が「ベジッティ」であった。

「野菜をいれると麺のような形に切ってくれるらしいんですね。私は知らなかったんですが、関連書籍も出てるみたいです。どうでしょう。仕入れてみませんか?」

 うーん・・・。

「じゃあこれ。前回も提案させていただいたんですが、「お手軽ぬか床キット」はどうでしょう。県内ではまだどこの店も展開してくれてないんですが、名古屋や大阪の店では売れているみたいですよ。どうでしょう。仕入れてみませんか?」

うーん・・・。

 

最近の取次営業さんの商談は半分がこんな感じである。そこに選書のセンスはすでに要求されておらず、もはや本屋さんなんだか何屋さんなんだか分からなくなってきている。

「そうですね。今の時代、本が売れませんからね。本来なら本の売上をあげるようなご提案をさせていただくのが筋なんでしょうが、本が売れないならほかのものを売るしかないので、最近はこういうのが本当に多くなってますね」

営業さんによると、売れる雑貨もあるけれども売れない雑貨は本当に売れなくて両極端であるとのこと。雑貨の良し悪しがわかる力量が無いと、これからの本屋さんでは厳しいらしい。

 

 

 

 

 

本屋がなくなったら、本当に困るのだろうか?

 

 本屋で働き始めて20年になる。

色々と思うところあって一度は現場を離れたのだが、4年ほどして、また戻ってきてしまった。

日本の出版業界は、1996年の2.6兆円の売上をピークに右肩下がりを続けている。この20年で市場規模は半分近くにまで縮小していて、今や1.5兆円。パチンコ産業の3.3兆円に及ばないのはもちろんのこと、トヨタ自動車一社の純利益2兆円にも余裕で負けている業界である。

私にしても本屋で働き始めたのがちょうど20年前だから、売上が前年を上回るという経験を一度もしたことがないということになる。客観的に見ると完全に斜陽産業なのだ。

ソフトバンクの孫社長によると、紙の媒体は30年後には消滅しているという。

「紙の新聞なんて100%ありえない」孫正義氏が描く“30年後”のメディア事情 - ログミー

この話があったのが2010年だったから、この予言が実現すると仮定すると、24年後には本屋などは確実に消えてなくなっていることになる。

はっきり言ってこの先は厳しい。というか、現時点でもすでに厳しい。

でも何の因果か、また戻ってきてしまった。

何だかんだ言って、私は本屋が好きなのであろう。

好きでもなければ、正直やってられないし、やっていけないのだ。この業界は、実はそういう人たちばかりで支えられている。

さて、冒頭に紹介した『本屋がなくなったら、困るじゃないか』というこの本は、そういう人たちが福岡に集まって、何故この業界はこうなってしまったのか、これからの本屋はどうしていけば生き残っていけるのか、喧々諤々(?)の議論を交わしている本である。

私は、「何故こうなってしまったのか」「何処を目指すのか」が明確になっていないと、「どうすれば生き残っていけるだろうか」という問いは無意味なのではないかと思っている。どんな病にかかっているのか、ろくに診断もせずにただただ延命治療をしているようなものだからだ。

出版業界の危機を語る本は、それこそ何十冊と存在するのだが、どうすればこの業界は生き残ることができるか、という点に主眼を置いた本は多いものの、何故こうなってしまったのかを掘り下げている本はなかなかなくて、そういう意味でこの本は、お馴染みのテーマを扱っているようで実は新しい。

私も、自分が働いていたこの業界はこういう構造になっていて、こういう問題があるから、ダメになっていっているんだということがわかり、非常に勉強になった。漫然と何も考えず業務に忙殺されているだけ、という意識低い系の書店員であったことを、痛く反省するばかりである。

ただ、同時に思うことがあった。

本屋がなくなったら、本当に困るのだろうか?と。

私は、本屋でなかった4年間、ほとんど本屋に行くことがなかった。

それ以前は本屋なしの生活など考えられない毎日を過ごしていたわけだから、その意識の変化には自分でもとても驚いたが、よく考えると普通の生活をしている上で、本屋にはそんなに用は無いのであった。

本は別に本屋で買わなくても読むことができるのである。そもそもそれ以前に本など読まなくても読むものはいくらでもネット上に転がっているのであった。これが一般的な人の感覚なのだ。

この20年間、本屋がなくても生活にはさしたる不便を感じないという人が、どんどん増えてきているのを肌で感じる。数でいうと、むしろそちらのほうが圧倒的多数派であることは間違いない。

私は考える。

この人たちが、自分の生活に欠かせないなと思ってくれるような本屋を、つくれないものかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沖縄に行ってみたい

書店を出店するとしたらどんな店を出す?という企画を、若手に考えてもらうという研修の講師をやることになった。
最初はどこか想像上の架空の町を設定して、そこに出店する企画をつくってもらおうかと考えていたのだけれども、実際にその架空の町の資料を作ってもらってみたら、そもそも私自身が全くどんな書店を作ったらいいのか本当に何も思い浮かばない。
架空の町は、頭の中で作り上げたものだから表層の薄っぺらい設定しかない。それだとそこに住んでいる人がどんな生活を送っているのか、普段何を考えているのか、どういう本を欲しいと思っているのか、正直想像するのがとても難しいのだ。どうやら我々は無意識に、その土地の結構深いところまで考えを巡らして売場や棚を作っていたんだなぁということを、今更ながらに発見する。
さて研修のほうである。
じゃあ、しょうがないので架空の町に出店することはあきらめて、特徴のわかりやすい極端な場所に出店するということにしたらどうだろう、たとえば沖縄とか、と思いつくままにそれまで思ってもみなかったことを口走ってしまったのは確かに私だ。
なんと、それがあっさり採用されてしまった。
割と旅行は好きな方なのだが、実は沖縄だけは行ったことがない。なので暑いんだろうなあ、海きれいなんだろうなあ、台風すごいんだろうなあくらいの貧弱なイメージしかもっていなかった。
出店シミュレーション用マーケティング調査を開始する。沖縄という土地のことを調べるのは初めてだ。ただの研修用の調査だから現地にいけるわけではない。大量の統計データを収集し、地元の人のウェブ掲示板やブログをなめるようにチェックし、『空から日本を見てみよう』のDVDで沖縄本島をくもじいと一緒に一周し、何冊もの沖縄本を斜め読みする。いやいやこれが、夢中になるほど面白い。
行ったこともないのにすっかり沖縄のライフスタイルに詳しくなってしまって、本当に出店できたら面白いのになどとあらぬ妄想をしてしまう。
というかそれ以前に、まずは仕事抜きで行ってみたくなった。ものすごく。
前段が長くなってしまったけれど、この本はそんな中、そう言えば「沖縄に本屋出店しました」みたいなそのものずばりな本があったよなぁとふと思い出し、ひっそりと店の棚にささっているのを購入して読んでみたもの。著者の宇田さんはジュンク堂の那覇店の立ち上げメンバーで、そのまま沖縄に住み着いてジュンク堂をやめ、「市場の古本屋ウララ(http://urarabooks.ti-da.net/)」という店をはじめる。これがものすごく面白いのだ。
宇田さんの文章がうまい、というのもあるのだけれど、古本屋の日常と地元の人との会話が生き生きとしていて、沖縄のなんとも明るい空気感がとてもよく伝わってくる。「くもこ」の話なんて最高だ。研修うける人たちにも、この本はオススメしようかと思っている。研修受けたら沖縄に行きたくなるに決まっているからだ。
いつ行けるかまったくわからないが、那覇に着いたら、まず最初にウララに行ってみようと思う今日このごろ。

本屋大賞

本屋に復帰したので頑張って読んでみようと思ったけど、『サラバ』と『怒り』は時間切れのため未読。無理でしたー。
一応その2作品を除いた分は読んだので、個人的に面白かった順に書いていきます。

世界を救うために、二人は走る。東京大空襲の夜、東北の蔵王に墜落したB29。公開中止になった幻の映画。迫りくる冷酷非情な破壊者。すべての謎に答えが出たとき、カウントダウンがはじまった。二人でしか辿りつけなかった到達点。前代未聞の完全合作。

誰が書いたとか、あまり気にしないで読んじゃいました。エンターテイメントにとことん特化した作品で、これは映像化しても面白いんだろうなあ、やはり主演はイノッチかなあ、などと想像しながらニヤニヤできる作品ではないかと。とにかく伏線小道具の使い方が上手く、強引でスピード感のある展開といい、私はこういうのが大好きなんだ、と声を大にして言いたい作品でした。ああ面白かった。
ただ、本屋大賞的には過去に同系統の『ゴールデンスランバー』が受賞しているので、そのへんを考慮すると微妙なのかもと想像。
評価A

強大な帝国から故郷を守るため、死兵となった戦士団<独角>。その頭であったヴァンは、岩塩鉱に囚われていた。ある夜、犬たちが岩塩鉱を襲い、謎の病が発生する。 その隙に逃げ出したヴァンは幼い少女を拾うが!?

上巻まで読んだときは、もしかすると守り人シリーズの上を行く面白さかもしれん、これは傑作!と大興奮だったのですが、ヴァンとホッサルが出会ってからの下巻の展開が惜しすぎました。<取り落とし>のような意外な展開は、無くてよかったんだけどなあということで、個人的には残念ながら2位です。でもこの作品は今までに無い「医療もの+ファンタジー」という2つのジャンルが奇跡的に融合した作品でありまして、上橋先生の圧倒的な筆力は今回も冴えに冴え渡っており、2014年を代表する大作であることは確か!
前にも書いたけど、これほどのクオリティのファンタジーが日本語で読めるというのは、本当に幸せなことだと思います。個人的にはに上橋作品のスケールは本屋大賞という枠はこえてるという気がするんですよね。
評価A

本屋さんのダイアナ

本屋さんのダイアナ

私の呪いを解けるのは、私だけ――。すべての女子を肯定する、現代の『赤毛のアン』。「大穴(ダイアナ)」という名前、金色に染められたバサバサの髪。自分の全てを否定していた孤独なダイアナに、本の世界と彩子だけが光を与えてくれた。正反対の二人だけど、私たちは一瞬で親友になった。そう、“腹心の友”に――。自分を受け入れた時、初めて自分を好きになれる! 試練を越えて大人になる二人の少女。最強のダブルヒロイン小説。

少女小説というジャンルはほぼ読んだこと無くて、『赤毛のアン』も『花子とアン』もそんなに好きじゃないし、正直期待していなかったのですが、いい意味で完全に裏切られました。これは…良かったよ。これほどまでに目から汗が出るような破壊力がある作品だとは・・・思ってなかったですわ。
まあ前半部で設定が見えてしまって、後半部の話の展開が予想できちゃうところとか、本屋さんが出て来るのは最後の最後の方なのであまりこのタイトルは適切じゃないよなあというところとか、ちょっとだけ気になった点はあるんですが、何かそういうのはどうでもよい、と思えてしまうくらい、心地よい読後感に浸れる作品。キャラが魅力的で、主人公2名のダブルヒロイン小説とあるけれども、影の主役ティアラを入れてあげてトリプルヒロイン小説といって欲しいですよね。
評価A−

ハケンアニメ!

ハケンアニメ!

伝説の天才アニメ監督王子千晴が、9年ぶりに挑む『運命戦線リデルライト』。プロデューサー有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品だ。同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と人気プロデューサー行城理が組む『サウンドバック 奏の石』もオンエアされる。ネットで話題のアニメーター、舞台探訪で観光の活性化を期待する公務員…。誰かの熱意が、各人の思惑が、次から次へと謎を呼び、新たな事件を起こす!anan連載小説、待望の書籍化。

表紙CLAMPだし、アニメ業界にも興味ないし、本屋大賞ノミネートになってなかったら絶対読んでなかったと思う作品。でも予想に反して面白いんだなこれが…。本屋大賞ありがとう、読書の世界を広げてくれて。
王子監督の『運命戦線リデルライト』のイメージは、やはりあれなんですか、『少女革命ウテナ』の幾原監督なんですか、絶対運命黙示録なんですかね。あれは名作でしたね。
この作品、主人公3人の連作ですが、全員若い女性。微妙に厳しかったですが期待の新人監督・斎藤瞳と人気プロデューサー行城理の話が感情移入できたので気に入りました。3作品の後のラストのまとめ方が、まあ見事で、カタルシスを味わえます。
本屋大賞ノミネートには感謝するけれども、辻村さんにはこの作品じゃないタイトルで受賞して欲しい気がしてます。
評価A−

ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、他力本願で恋をしようとする青年、元いじめっこへの復讐を企てるOL…。情けないけど、愛おしい。そんな登場人物たちが作り出す、数々のサプライズ。

いかにも伊坂っぽい話でしたが、まあこういうのもいいよねという「ある小さな夜の作品」というこじんまりした印象の作品です。伊坂作品なのに泥棒や強盗、殺し屋や超能力、恐ろしい犯人が出てこなくて、恋愛がテーマというのは珍しいです。
ところで、話の中に出てくる「斉藤さん」の商売はJASRAC的にはどうなんですか。絶対著作権料払ってないよなあ。
評価B+

土漠の花

土漠の花

ソマリアの国境付近で、墜落ヘリの捜索救助にあたっていた陸上自衛隊第一空挺団の精鋭たち。その野営地に、氏族間抗争で命を狙われている女性が駆け込んだとき、壮絶な撤退戦の幕があがった。圧倒的な数的不利。武器も、土地鑑もない。通信手段も皆無。自然の猛威も牙を剥く。最悪の状況のなか、仲間内での疑心暗鬼まで湧き起こる。なぜここまで激しく攻撃されるのか?なぜ救援が来ないのか?自衛官は人を殺せるのか?最注目の作家が、日本の眼前に迫りくる危機を活写しつつ謳いあげる壮大な人間讃歌。男たちの絆と献身を描く超弩級エンターテインメント!

自衛官は人が殺せるのか?というテーマからの重い感じは受けなかったですね。実際そんな逡巡は途中からどっかに飛んでいってしまうし、どちらかというと、『キリングフィールド』的な世界観ではなくて『プライベートライアン』的な世界観で、異常に強い敵とのマッチョな戦闘描写を読ませたい作品なのかな、というのが私の印象です。貴志祐介さんの『クリムゾンの迷宮』のようなサバイバルエンターテイメント小説というジャンルが近いように思います。まあ、なので「泣ける」作品と言われてますが、そうでもなかったなあと。終わり方はとてもよかったですね。
評価B+

満願

満願

第27回山本周五郎賞受賞
2015年版「このミステリーがすごい! 」第1位
2014「週刊文春ミステリーベスト10」 第1位
2015年版「ミステリーが読みたい! 」 第1位
2014年のミステリー年間ランキングで3冠に輝いた、米澤ワールドの新たなる最高峰!
人生を賭けた激しい願いが、6つの謎を呼び起こす。人を殺め、静かに刑期を終えた 妻の本当の動機とは――。驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、交番勤務の警官や在 外ビジネスマン、美しき中学生姉妹、フリーライターなど、切実に生きる人々が遭遇 する6つの奇妙な事件。入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジックで魅せる、 ミステリ短篇集の新たな傑作誕生!

米澤さんと私の相性は悪いらしく、どの作品読んでも面白さがいまひとつよくわからないんですね。これまででも、ちょっと面白いかなと思ったのが『氷菓』ぐらいかも、ということで、この作品に収録されている6作品についてもすべてオススメしませんが、世間的な評価はすごいことになっているので、私の感性が世の中と相当ずれているのでしょう。残念なことです。
評価B

å„„ç”·

å„„ç”·

宝くじで3億円を当てた図書館司書の一男。浮かれる間もなく不安に襲われた一男は、「お金と幸せの答え」を求めて大富豪となった親友・九十九のもとを15年ぶりに訪ねる。だがその直後、九十九が失踪した―。ソクラテス、ドストエフスキー、アダム・スミス、チャップリン、福沢諭吉、ジョン・ロックフェラー、ドナルド・トランプ、ビル・ゲイツ...数々の偉人たちの“金言”をくぐり抜け、一男の30日間にわたるお金の冒険が始まる。人間にとってお金とは何か?「億男」になった一男にとっての幸せとは何か?九十九が抱える秘密と「お金と幸せの答え」とは?

昔、これとテーマも筋も同じようなお金の話を、アメリカの自己啓発小説で読んだのですが、そっちのほうが「お金と幸せの答え」については納得できる答えが書いてあったなあ、と思い出した次第です。そしてその本のタイトルを思い出せない自分に愕然としております。
評価C

â– 

http://www.47news.jp/CN/201502/CN2015021501001096.html
10代はクレジットカード持ってないからに決まってるだろ。何を言ってるんだ。
日本通信販売協会ともあろう組織の人が、そんな当たり前のことを無視して、このグラフから「10代はリアル書店が好き」などと言うとは思えないので、こういうときは元記事をあたってみる。
日本通信販売協会が1月26日に発表している「リアル書店とネット書店の利用実態」というレポートがあった。多分これだろう。
ジャドマ通販研究所
案の定なんだけど、特記してあったのは40代の通販利用率の高さであって、「10代はリアル書店が好き」なんてどこにも書いていない。10代と60代の利用率の低さが同じくらい、とは書いてあるけど、その理由を「好き」だからって言っちゃうのはおかしいだろう。やはり誰かが意図的に解釈を歪めたのだ。
ところで、このアンケートには続きがあった。
その2のほうを見るとネットとリアルのジャンルによる使い分け実態も調査しているのだ。
これを見るとネット書店の需要が一番高いジャンルがコミックス。10代にもっとも需要が高いと思われるコミックがネットの1位なんだから、10代はネットを使えない理由があると考えるのが自然ではなかろうか。
むしろ私が驚いたのは、リアル書店の1位がラノベだったってこと。コミックはネットで買って、ラノベはリアル書店で買うというのか。どういうことなんだ。
仮説はいくつか考えてみたけど確証がない。そんな使い分けしてる人どれくらいいるんだろう?
実際そうやっている人、理由を教えてもらえませんか?