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阪急電車

阪急電車

阪急の中でもローカル路線になる今津線を舞台にした連作短編集。個人的にこどものころ、まさにこの沿線に住んでいたので、多分作者以上に一駅一駅にものすごく思い入れがある私です。
冒頭にでてきた宝塚中央図書館は、私が生涯はじめて本を借りた図書館。宝塚南口の耳鼻科に通っていました。逆瀬川は自分が住んでいた町で一番思い出深い駅。小林には親戚が住んでいて、翔子がドレスを捨てた駅前のスーパーイズミヤにもよく行きました。仁川はやはり阪神競馬場とピクニックセンターかな。甲東園は自宅方面のバス停があって学生時代関学に試合に出かけたりしました。門戸厄神は何度かおまいりに行ったし、西宮北口にあるスイミングスクールに通ってました。まだ神戸線と今津線が平面交差していたころのお話。懐かしい思い出に浸りながら読み終えました。
なんと言っても、今津線のよいところは、その生活に根ざしたほどよいスピード感なのですが、よく有川さんがその雰囲気を再現していると思います。特に甲東園での女子高生の会話とか、今津線沿線の雰囲気を素晴らしく代表していて、そうそう、まさにこんな感じだよ、有川浩うまいなぁと思って読んでいたら、あとがきで、あれは実話ですと書いてあったので、いろんな意味であらら。