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鈴鹿8耐、30号車Honda HRCが完璧なレース運びで4連覇、21号車YAMAHA RACING TEAMは2位

2025年8月1日〜3日 開催
鈴鹿8耐は30号車Honda HRCが4連覇

 鈴鹿8耐「2025 FIM世界耐久選手権 "コカ·コーラ" 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会」は8月3日に決勝レースが行なわれ、30号車Honda HRC(高橋巧/ヨハン・ザルコ、CBR1000RR-R SP、BS)がポールトゥウィンで4連覇を達成した。大会直前に3人目のライダーがキャンセルとなり急遽2人体制で臨むことになったものの、2位以下に付け入る隙を与えなかった。

 6年ぶりのファクトリー参戦となった21号車YAMAHA RACING TEAM(中須賀克行/ジャック・ミラー/アンドレア・ロカテッリ、YZF-R1、BS)は、セーフティカーが導入された終盤に追い上げるも及ばず2位。続く3位は1号車YOSHIMURA SERT MOTUL(グレッグ・ブラック/ダン・リンフット/渥美心、GSX-R1000R、BS)だった。

 EWCシリーズランキング首位の7号車YART-YAMAHA(カレル・ハニカ/マーヴィン・フリッツ/ジェイソン・オハロラン、YZF-R1、BS)は度重なる転倒もありリタイア。同シリーズランキング2位の11号車Kawasaki Webike Trickstar(ロマン・ラモス/マイク・ディ・メリオ/グレゴリー・ルブラン、ZX-10R、BS)が8位に入って13ポイントを獲得したため、その差は5ポイントに迫った。シリーズ最終戦となる次戦は9月20日よりフランスのポール・リカール・サーキットで行なわれる。

スタート〜1時間、早くも上位グループが硬直状態に

鈴鹿8耐決勝レースのスタート

 おなじみのル・マン式で開幕した決勝レース、ライダーが一斉にコースを横断してマシンに駆け寄り発進していくなか、2番グリッドの21号車が出遅れる。ポールポジションの30号車はスムーズにスタートを切ってホールショットを決めるも、まだタイヤが温まっていない隙を突いて4番グリッドの73号車SDG Team HARC-PRO. Honda(名越哲平/阿部恵斗/國井勇輝、CBR1000RR-R、BS)が勢いよく先頭へ。

 73号車はオープニングラップも制すると、トップ集団をリードしていく。30号車は無理することなく、コンマ2〜3秒後方から様子をうかがう形。30分が経過する頃までトップ2台は付かず離れずの距離を保っていたが、周回遅れが現れたことで73号車がそのトラフィックにつかまってしまい、ほとんど競わずして30号車が先頭に立つ。

最序盤、73号車がレースをリードする

 一方で少しずつ順位を回復させていた21号車は、初回のピットインタイミングをやや遅らせて混雑を回避できたこともあってか、2位に浮上。30号車もスティントを長めに取り、ザルコ選手への交代後も21号車との間に10秒以上のギャップを作った状態でコースに復帰した。ライディングには余裕があるように見え、30号車の独走状態になりそうな情勢。

徐々に追い上げ2位に浮上した21号車

 スタートから1時間が経過した時点でほとんどのチームが初回ピット作業を終えると、そこから30号車、21号車、73号車のトップ3の並びは硬直状態に。30号車と21号車は13〜14秒の間隔を空けて淡々と周回を重ねていく。ここまでにあった上位陣の大きなアクシデントは、4位走行中だった1号車が転倒し12位あたりまで後退してしまったことと、5号車がマシントラブルでピットから出てこないまま、といったあたり(5号車はその後リタイアした)。

中盤、トップ2チームにミスはなく、淡々としたレース展開に

 2回目のピットイン以降は、1位と2位の差が12秒ほどにやや縮まる。ワンミスで順位がひっくり返る可能性はあるものの、両者2分7〜8秒ペースで安定しているうえにマージンを残しているような印象だ。

 3時間が経過したところで、トップの30号車と2位の21号車の差は30秒以上へと広がった。30号車は2分7〜8秒とこれまでと変わらない一定したペースだが、21号車が2分9秒台と抑え気味になっている。3位とはそこからさらに2分近い差があり、上位2台が他の全チームを周回遅れにしそうな勢い。

21号車は30号車との差をなかなか詰められない

 折り返しとなる4時間が経過。多くのチームが1スティント50〜55分としているなか、30号車はちょうど1時間ごとのピットストップを繰り返しており、このまま行けば1スティント分少なく済む可能性がある。生タイムでも2位とは40秒以上の差をつけていて、他チームよりピットストップが1回分少ないとすれば1分30秒以上のアドバンテージがある状況だ。

 6スティント目、21号車のミラー選手が2分6秒台を叩き出すなどペースアップし、30号車との差を詰め始めるも、それに対して30号車ザルコ選手も負けじと2分6秒895でファステストを更新、均衡はなかなか崩れない。

30号車は他チームより1つ少ない7ストップ作戦を敢行

終盤にセーフティカーが2回導入、差は急速に詰まるが……

 ところが、6時間が過ぎたところで流れが大きく変わる。ヘアピンでクラッシュが発生しセーフティカーが導入されたことで、30号車と21号車の間に20秒以上あった差が数秒にまで縮まった。

 21号車にとっては千載一遇のチャンス。しかし、およそ15分後にセーフティカーが解除されると、間に数台の周回遅れが挟まっていたこともありタイムギャップを解消するには至らず。むしろ30号車の高橋選手がここまでのファステストを叩き出し、徐々に突き放される形に。

30号車の高橋選手がファステストでポジションをキープ

 残り1時間を切って再びセーフティカーが導入され、そのタイミングで30号車がピットインしたことにより21号車の後方に位置取ることになった。が、1スティント少ない7ストップの戦略がハマり、30号車Honda HRCがトップでフィニッシュ。2位の21号車YAMAHA RACING TEAMに30秒以上の差を付け、217周回でチェッカーを受けた。

最後はザルコ選手が担当し、フィニッシュ
表彰台でトロフィーを掲げる高橋選手とザルコ選手

 3位表彰台は1号車YOSHIMURA SERT MOTUL。序盤に転倒するも最小限のダメージに抑え、セーフティカーの影響で終盤は73号車との3位争いも繰り広げた。30号車と同じく7ストップに抑えていたことが功を奏し、1号車に軍配が上がった。

7ストップ作戦で3位を獲得した1号車YOSHIMURA SERT MOTUL

 唯一のドゥカティマシンを駆る3号車SDG-DUCATI Team KAGAYAMA(水野涼/マーセル・シュロッター/レオン・ハスラム、Panigale V4R、BS)は、粘り強い走りで3時間経過時には4位まで順位を上げていた。が、他車との接触でマシンを損傷し、復旧に時間がかかったことで下位への後退を余儀なくされ、30位に。

大会唯一のドゥカティ、3号車SDG-DUCATI Team KAGAYAMAは他車と接触するアクシデントが響き30位に

 100%サステナブル燃料を使用するとともに、各種車体パーツに環境負荷を低減したアイテムを装備する0号車Team SUZUKI CN CHALLENGE(エティエンヌ・マッソン/アルベルト・アレナス/津田拓也、GSX-R1000R、BS)は、途中4位までポジションアップしながらもクラッシュを喫し、その後レースに復帰するも37位に終わった。

0号車Team SUZUKI CN CHALLENGEは上位入賞ならず、残念ながら37位となった

鈴鹿8耐トップ3記者会見、ザルコ選手「最後のナイトランは本当に素晴らしかった」

鈴鹿8耐トップ3記者会見

 30号車Honda HRC(高橋巧/ヨハン・ザルコ、CBR1000RR-R SP、BS)が4連覇を成し遂げて幕を閉じた決勝レース。決勝後に行なわれた表彰台3チームの記者会見の内容を抜粋でお届けする。

優勝:30号車Honda HRC(高橋巧/ヨハン・ザルコ、CBR1000RR-R SP、BS)

30号車Honda HRC

高橋巧選手:無事終えられて良かったです。この(暑い)コンディションのなか2人でレースするのは相当つらいのが分かっていたし、ただただ疲れました。最後、ジョアン(ヨハン・ザルコ選手)も体のコンディションが厳しそうだったし、その中で自分ができることをやって最後に(ザルコ選手にバトンを)パスしようと思って2分6秒台に入れたりもしましたが、後ろ(21号車)の追い上げが激しすぎて、キープすることに切り替えました。

(自分が走行中に)いつピットに入りたいとなってもおかしくない状況だったので、ジョアンに感謝しています。チームもみんな頑張ってくれたし、応援してくれたファンのみなさんにも感謝しています。

ヨハン・ザルコ選手:スティントの合間に体力を回復するのが難しかったですね。最後のスティントは「いけるだろうか」と思っていましたが、最初のセーフティカーが入ったときにはタクミ(高橋巧選手)が多くラップをこなしてくれたから、少し長く休憩できました。自分の時にもセーフティカーが入ったので、ゆっくりながらもリズムを取り戻す助けになったと思います。最後のナイトランは本当に素晴らしかったし、レースを完走できて本当にうれしいですね。

 タクミはすごく強い。暑い中でも弱みをまったく見せないし、それはチームにとって大きなアドバンテージになります。ただ、来年は2人だけではやりたくないとは思っています。今日の勝利で一番のポイントとなったのは燃費で、ピットストップが7回で済んだことは大きかったですね。

2位:21号車YAMAHA RACING TEAM(中須賀克行/ジャック・ミラー/アンドレア・ロカテッリ、YZF-R1、BS)

21号車YAMAHA RACING TEAM

中須賀克行選手:テストが少ない中、ジャック(・ミラー)選手とロカ(アンドレア・ロカテッリ)選手には非常に感謝しています。この2人がいなかったら2位はなかったんじゃないかというぐらい2人が引っ張ってくれました。

 自分が足を引っ張っちゃった面もあるんですけども、3人で力を合わせられて、そしてチームスタッフも6年ぶりにも関わらず、ミスなく送り出してくれたことには非常に感謝していますし、トータルでしっかりこの2位を勝ち取ったんじゃないかなという風に思います。本当に彼ら2人には感謝しかないです。

ジャック・ミラー選手:最初から最後まで素晴らしいレースでした。最初のスティントはもっと速く走れたかもしれないけれど、この暑さの中でまずは感触を確かめたかった。中須賀さんが言ったように私たちはテストでバイクに乗る時間があまりなく、予選で自分は転倒していたので、今日はとにかくバイクに乗り続けることが必要でした。

 ファーストスティントは無難にこなしたものの、セカンドスティントでもまだ完全にはリラックスできず、夜のサードスティントへと進みました。鈴鹿で夜にレースを走るのは2度目だけれど、本当に素晴らしい体験でした。ストレートに戻ってくるたびに、観客の皆さんがペンライトを振っている光景は圧巻で、これは他のレースでは味わえないものです。

3位:1号車YOSHIMURA SERT MOTUL(グレッグ・ブラック/ダン・リンフット/渥美心、GSX-R1000R、BS)

1号車YOSHIMURA SERT MOTUL

渥美心選手:(30号車と21号車の)ファクトリー2チームに勝つために、YOSHIMURAの久々の優勝を成し遂げるために、僕がチームを引っ張っていかなきゃいけないなと思っていました。彼らのペースを再現できるように頑張りましたが、なかなか難しくて課題が残るレースになったと思います。

 レースはグレッグ(・ブラック選手)が今回も素晴らしいスタートを決めてくれました。ダン(・リンフット選手)は転倒はありましたが、幸いマシンのダメージがほぼなくていいペースで走ってくれたので、僕がさらにいいペースで走れば表彰台の可能性もあると思っていたので、チームの士気を上げられるように頑張りました。

 ただ、暑かったので消耗してしまい、2回目の自分のスティントでは体が痛くなるほどでした。最後、(ダンが走る代わりに)僕に走れるかという確認があったんですけど、回復が難しかったのでダンにそのままの流れで行ってもらうことになりました。自分としては、去年の最終スティントでいい走りができていたこともあり(今回は走れる状況になかったのが)悔しかったですが、2年連続、最後のスティントでの表彰台争いに勝ったのはうれしく思います。

 (EWCシリーズ戦において)今シーズン苦戦していた中で流れを変えるいいレースになったと思いますので、最終戦ボルドール、チャンピオン獲得のために引き続き頑張りたいと思います。

決勝レース暫定結果

順位:チーム(選手、車両、タイヤ)
1:30号車Honda HRC(高橋巧/ヨハン・ザルコ、CBR1000RR-R SP、BS)
2:21号車YAMAHA RACING TEAM(中須賀克行/ジャック・ミラー/アンドレア・ロカテッリ、YZF-R1、BS)
3:1号車YOSHIMURA SERT MOTUL(グレッグ・ブラック/ダン・リンフット/渥美心、GSX-R1000R、BS)
4:73号車SDG Team HARC-PRO. Honda(名越哲平/阿部恵斗/國井勇輝、CBR1000RR-R、BS)
5:37号車BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM(マーカス・ライターバーガー/マイケル・ファン・デル・マーク/スティーブン・オデンダール、M1000RR、BS)
6:76号車AutoRace Ube Racing Team(浦本修充/ロリス・バズ/デイビー・トッド、M1000RR、BS)
7:40号車TeamATJ with docomo Business(岩田悟/鈴木光来/国峰啄磨、CBR1000RR-R SP、BS)
8:11号車Kawasaki Webike Trickstar(ロマン・ラモス/マイク・ディ・メリオ/グレゴリー・ルブラン、ZX-10R、BS)
9:88号車Honda Asia-Dream Racing with Astemo(ナカリン・アティラットプワパット/アンディ・ファリド・イズディハール/モハメド・ザクワン・ザイディ、CBR1000RR-R、BS)
10:99号車Elf Marc VDS Racing Team/KM99(ランディ・ド・プニエ/フロリアン・マリノ/ジェレミー・グアルノーニ、YZF-R1、DL)