携帯電話料金の高止まりに乗じて急成長してきた格安スマホ事業者が曲がり角に来ている。12月4日には「フリーテル」ブランドを生み出した端末会社の経営破綻が明らかになった。体力に勝る通信大手のなりふり構わぬ販売攻勢を格安スマホ事業者はかわすことはできるだろうか。
(日経ビジネス2017年12月11日号より転載)
「2025年までにスマホ(スマートフォン)出荷で世界一になる」。こう公言してはばからなかったプラスワン・マーケティング(東京・港)が12月4日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。同社は端末の設計・製造を自ら手掛ける一方で、通信大手からインフラを借りる「MVNO(仮想移動体通信事業者)」として格安の通信サービスを提供する「二刀流」で市場を開拓。格安スマホサービスで業界6位につけていた。
だが、そんな成長モデルも今春、行き詰まる。「過大広告」をしていたとして消費者庁が行政処分。契約数が伸び悩み、膨張する広告投資を賄いきれなくなった。11月には楽天に通信サービス事業を売却したが、資金繰りは改善せず、自力再建を断念した。
通信大手が「包囲網」
もっとも、身の丈に合わない拡大路線を突っ走ったことだけがプラスワン破綻の原因とは言い切れない。もともと格安スマホ事業は、自前の設備を持たない代わりに通信料の安さで顧客を引き付ける薄利多売のビジネスだ。そうした格安スマホ事業者に、顧客流出に危機感を持つKDDIなど大手携帯電話会社は安い通信料を売り物にしたサブブランドで対抗。自らも最低料金を格安スマホに近づけ、「包囲網」を築いている。
もはや「格安」の看板だけには頼れない──。格安スマホ事業者は独自の生き残り策を模索する。
一つは規模拡大。プラスワンの通信サービス事業を買収した楽天がその道を行く。約35万人の顧客基盤を引き継いだことで、顧客件数は140万件と、同200万件とされる業界1位のソフトバンクのサブブランド「ワイモバイル」の背中も見えてきた。楽天の大尾嘉宏人執行役員は今後もM&A(合併・買収)を「前向きに検討する」と話す。
自ら顧客管理に乗り出すのはインターネットイニシアティブ(IIJ)だ。資金力を生かして同社は約50億円を投じ、これまで通信大手が担ってきた「加入者管理機能」など一部の機能を自前で運営する体制に18年3月までに切り替える。独自の料金プランやサービスを打ち出し、大手に対抗する狙い。
日本通信はIoT(モノのインターネット)市場に活路を見いだす。中国の通信機器メーカーと協業して構内用アンテナ設備を開発中だ。「LTE」と呼ぶ通信技術を活用し、工場内や物流現場など電波が飛びにくい場所でも広範囲で安定したデータ通信を可能にする。
異業種参入も多く、数十社がひしめくとされる格安スマホ市場。淘汰か、延命か。いばらの道が続く。
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