「テレポート(Teleport.org)」という都市情報サイトをご存じだろうか。このサイトの特徴は、世界中場所を問わずに働きたい「ノマドワーカー」、特にテクノロジーの世界で起業を志すような人々が必要とする情報に焦点を絞っているところだ。
テレポートのキャッチフレーズは「自分がベストに生活し、仕事ができる場所に移ろう」というもの。ちょっと使ってみると、要は「新しい働き方」の支援ツールなのだということが分かる。このサイトを見ていると、米国におけるエンジニアの働き方、生活が大きく変わり始めていることを感じられる。そこでその内容を少し紹介しよう。
目玉のコンテンツは世界110都市の基本都市情報で、以下のような内容をそれぞれスコア付けして整理している(写真1)。住宅コスト、スタートアップシーンの盛り上がり、旅行の際の接続の利便さ、ビジネスの自由度、医療環境、環境の質、税金レベル、生活コスト、ベンチャーキャピタルやアクセラレーターの資金充実度、交通の利便性、安全性、教育レベル、経済発展度、インターネットアクセスなどである。
例えば「ビジネスの自由度」というのは、役所の手続きの複雑さや官僚主義の横行、役人の腐敗によってビジネスがやりづらくなっていないかを、世界銀行のデータを基に算出している。サンフランシスコのベイエリア地域やベルリン、東京はレベル8だが、ミンスク(ロシア)やボゴタ(コロンビア)などになるとレベル5に下がる。
ベイエリアに住む者にとって気になるのは家賃などの「リビングコスト」だ(写真2)。コロンビアのボコタならば、1ベッドルーム(リビング/ダイニングに寝室が一つ)の家賃の中間値は420ドルだが、サンフランシスコベイエリアになると3300ドルに跳ね上がる。分かっていたが、ものすごい差である。同サイトでは、同じサンフランシスコベイエリアの中でも、サンフランシスコ市内とそれ以外の場所に住むのとでは、家賃だけでなく通勤時間や生活コストなどがどれぐらい変わるのか、調べられるようになっている。
スタートアップによる求人数も提供
まあ、ここまでならばよくある都市比較サイトと変わらない。だがもう少し進んで見ていくと、いかにも今日風のプログラマーやエンジニアたちが気にするような項目が出てくる。
そのうちの一つはスタートアップによる求人数(写真3)。例えばオレゴン州のポートランドならば、一般的なソフトウエア開発者の求人数は5、フロントエンドの開発者は6、インフラ含めて何でもできるフルスタックの開発者は7、システムの運用担当者は13、その他技術職全般で31のポストが、募集中だということが分かる。同時にこの地域の平均報酬額は、モバイル開発者が12万500ドルとなっていた。
テレポートが提供する情報によれば、ポートランドでの生活コストはサンフランシスコベイエリアに比べて23.8%も安い。それでこの報酬ならば、全く悪くない環境だ。引っ越したくなるデータだと言える。
さらにテレポートは、スタートアップシーンの情報も提供している。その土地のスタートアップの数やその分野、投資ステージによる数、昨年の資金調達額などだ。「へえー、こういう会社があるのか」という雰囲気がつかめる。
もしある土地に移り住むとなった場合、地元で似たような境遇の人々に出会いたいというのは自然な欲求だ。そういったニーズに応えて、コワーキングスペース(共同利用可能な仕事場)のリストも提供する。ノマドワーカーが集まるようなカフェも含めて、ポートランドには235カ所もコワーキングスペースがあるという。
ウエアラブル端末から集めた「エクササイズ動向」も
毎日の通勤方法やアウトドアでのエクササイズの環境にもこだわる若者であれば、その町の人々がどんな風に移動しているのかも知りたいだろう。そういう情報もある。
例えばポートランドでは、毎日人々が歩いている平均時間は32分、自転車2分、走っているのが1分、そして車やほかの交通手段を利用している時間が24分だという。これはウエアラブル端末で得られるデータから算出しているのではないかと思われるのだが、エクササイズと通勤状況の両方が分かるので、日常的な人々の生活の様子がちょっと感じられる。
これらのデータは、自分の趣向と照らし合わせてマッチング度を測ることもできる。例えば、起業したいのか、職を探しているのか、生活コストの安いところへ引っ越したいのかといったことを入力すると、そういったユーザーのニーズに都市環境がどれだけ適合しているのかが分かる。
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