軽くて曲がる「ペロブスカイト太陽電池」の実用化に向けて、日本と中国の開発競争が激しくなっている。2035年に世界の市場規模が1兆円に達するとの予測もある次世代の太陽電池だ。日本が生んだ技術だが、中国が猛追している。
ペロブスカイト太陽電池は、基板にフィルムを使うものとガラスを使うものの2種類がある。特に注目度が高いフィルム型は折り曲げられ、重さは従来の太陽電池の10分の1。建物の屋上や壁面、自動車の屋根など様々な場所に貼り付けられる。
ペロブスカイトは、ヨウ素と微量の鉛などを使った特殊な結晶構造を持つ化学材料だ。室内などの弱い光でも発電できる上に、製造技術を磨けば従来の太陽電池に比べ半分以下のコストで生産できるとの期待もある。こうした特徴や将来性を踏まえ、次世代再生エネルギーの有望技術と期待を集めている。
ペロブスカイト太陽電池の開発は、09年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授らが書いた研究論文から始まった。ただし、当初は光などのエネルギーがどれだけ電気エネルギーとなるかを示す発電効率が数%とまだ低かった。12年に英国や韓国の研究者が改良を施して発電効率を10%台に引き上げたころから世界で開発が本格化してきた。
積水化学など開発の先頭集団に
課題は「発電効率の向上、(発電パネル・シートなどの)面積拡大、長期に品質を保持する耐久性、そして環境に優しくするための鉛利用の減少も重要になってきた」(宮坂特任教授)。日本には現在主流のシリコン系太陽電池で1970年代から研究してきた経験を持つ企業があり、大学も含めて技術の基盤はあるが、どれも一朝一夕に克服できる課題ではない。
例えば、発電効率は現在一般的なシリコン系太陽電池が26%程度なのに対し、ペロブスカイト太陽電池は最高で25%前後。一見僅差のようだが、ペロブスカイト太陽電池の数字は発電効率を上げやすい小型版の場合なので、差はまだ小さくない。
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