2024年は楽天ポイントが共通ポイント化して10年目の節目。楽天経済圏の要である楽天ポイントは、消費者行動を色濃く映し出す強力なデータ基盤でもある。楽天ポイントを運営する楽天ペイメントの小林重信社長に、ポイント事業の現状と今後について聞いた。

楽天ポイントが共通ポイントとしてオフライン店舗でも使えるようになってから10年たちました。振り返っていかがですか。

楽天ペイメント小林重信社長(以下、小林氏):やはり進出して良かったですね。楽天グループ全体で、新規の楽天ID会員のうちおよそ4分の1はオフライン起点で獲得しています。消費行動全体で見ると当然オフラインの占める割合が大きく、ポテンシャルは非常に高いです。

 ポイントカードがあると現金払いのお客さんも含めて幅広くデータが取れます。我々の場合はお客さんがポイントカードを提示する割合が高く、極端なお店では90%を超えることもあります。これほどトランザクション(商取引)が可視化されると、出店計画や棚割りを考えたり、どのお客さんにアプローチすべきか選択したりできるようになります。

具体的にはどんな事例がありますか。

小林氏:例えばある飲食店では、一見すると男性の顧客が中心のように思われていたところ、実は30~40代の女性が多いことがわかりました。さらに楽天市場の購買履歴などに基づいて、その人たちが美容や健康に気を使っていることも推測できました。趣味嗜好は自前のアンケートではなかなか調査できませんが、楽天はお客さんごとに大量のパラメーターを設定して趣味嗜好をデータ化しています。

 実際に店頭のディスプレーを華やかな色味に変えたり、脂っこいものを減らしてサラダや野菜ジュースなどを置いてみたり、いろいろと試行錯誤ができるようになりました。

 今は様々なクライアント企業のマーケティング幹部の方とタッグを組んでこうした施策を進めていますが、今後は人工知能(AI)を活用しながら、誰でも使える汎用的な分析ツールを構築したいと思っています。加盟店に相当するパートナー企業の方々からもいろいろな要望をいただいていますね。

小売りはお店ごとに課題がバラバラという印象もありますが、現実味は。

小林氏:結構、共通化できる要素も多いんですよ。例えば新規出店する際、楽天グループの4000万人以上いる月間アクティブ会員のデータを使えば、どのエリアにどんな属性の人がいて、どう販促すると効果が出るのかがおおむねシミュレーションできてしまいます。

 チャットボット形式のインターフェースでデモを作ってみたところ、パートナー企業さんの反応はかなり良かったです。次の10年は、こうしたパートナーシップ事業とAIのかけ算で進めていきます。個別の対応はかなり人的リソースが必要なので、そのままだと拡大させていくのが大変なんですよね。

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