茨城県で納豆製造を営んでいるが後継者がおらず、事業承継を目的に投資会社に株式を譲渡した。ところが経営を譲って以降、従業員給与の遅配が続き、会社の預金3500万円が消えてなくなった。危機感を募らせ、株式を買い戻して代表に復帰。「事業承継など眼中になかったのだろう」と悔やむ。

(写真=陶山 勉)
(写真=陶山 勉)
[金砂郷食品代表]
永田 由紀夫氏
1962年、茨城県生まれ。92年に金砂郷食品の前身である、くめ・クオリティ・プロダクツに入社。前身企業が経営不振に陥り民事再生法の適用を申請。事業を承継するために2009年に金砂郷食品を設立。経営再建を主導した。

 茨城県常陸太田市で納豆製造を営んでいます。2023年3月、個人商店として銀行借り入れを頼みにやっていくには限界があると感じ、事業承継を目的に投資会社のルシアンホールディングス(HD)と自社株式の譲渡契約を結びました。

 その後、私は会長に退き、ルシアン側の3人を経営幹部とする体制になりました。ところが2カ月後、ルシアン側に不信感を抱くようになります。「株式購入資金の支払いを一部先延ばししてくれないか」と連絡が来たのです。7月と8月には給与の遅配が2カ月連続で発生しました。不安になった従業員が5〜6人辞めてしまいました。

 会社の預金を確認すると、3500万円がなくなっていました。このままだと倒産すると危機感を募らせ、私は自分の預金や生命保険を解約するなどして23年9月に株式を買い戻し、代表に復帰しました。株式譲渡契約時に半年間の移行期間を設け、投資会社の契約不履行があった場合はすぐに契約を解除できるようにしていたのです。

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