たまに詩を読んで(3)
東京で一人暮らしを始めたのは、西武新宿線の都立家政駅から歩いて五分ほどのところにあったアパートである。三畳一間(今でもこの大きさの部屋はあるのだろうか。昭和の遺物のような気がするのだが)で、炊事場とトイレは共同だった。その部屋で、ほとんど毎夜遅くまでこつこつと詩を書いていた。
その頃影響を受けていたのが谷川雁さんである。だから、その頃書いていた詩は、谷川さんの模倣のような詩が多かった。
なかでも好きだったのがこの詩だ。
「革命」 (谷川 雁)
おれたちの革命は七月か十二月か
鈴蘭の露したたる道は静かに禿げあがり
継ぎのあたった家々のうえで
青く澄んだ空は恐ろしい眼のようだ
鐘が一つ鳴ったら おれたちは降りてゆこう
ひるまの星がのぞく土壁のなか
肌色の風にふかれる恋人の
年へた漬物の香に膝をつくために
革命とは何だ 瑕のあるとびきりの黄昏
やつらの耳に入った小さな黄金虫
はや労働者の骨が眠る彼方に
ちょっぴり氷蜜のようにあらわれた夕立だ
仙人掌の鉢やめじろの籠をけちらして
空はあんなに焼け・・・・
おれたちはなおも死神の真白な唾で
悲しい方言を門毎に書きちらす
ぎ な の こ る が ふ の よ か と(残った奴が運のいい奴)
最後の一行がとても好きだ。