iPhoneが米国を救い、GALAXYが韓国を救う。

JPモルガン・チェイスが、9/12にリリースと言われるiPhone5が米国GDPを0.25〜0.5%押し上げる可能性がある旨のアナリストレポートを発表した。計算は単純だ。

  • iPhone5の販売価格:600ドル
  • うち米国に帰属する付加価値:400ドル
  • ×10-12月予想販売台数:800万台
  • =米国GDP寄与:32億ドル

これを年換算した128億ドルが米国GDPを幾ら押し上げるかだが、米国GDPは15兆ドルなので単純に割ると0.085%だが、レポートでは更に4倍の0.33%となっている。この辺の数字の綾はこのレポートからは読み取れないが、大体今年の米国の成長率は2.5%位と予想されているから、このレポートが正しければ、成長の15%以上をiPhone5で稼ぎ出すことになる。

○元ネタのJPモルガンレポート

とはいえ、まず今のiPhone4sが売れてる分は既に米国GDPに反映されているので、純増分だけではないか、というツッコミと、仮に凄い勢いでiPhone5が売れて、殆ど純増だというペースで4Qに売れたとしても、これは純粋に需要を創出してるのでなくて、他の需要を食っているだけでは無いかというツッコミも有り得る。その観点で携帯電話全体のグローバルシェアを見てみたら、実は上位に余りアメリカメーカーがいない。



順位

メーカー名

2012年1Q販売台数

シェア(%)

2011年1Q販売台数

シェア(%)

1

Samsung

86,567.60

20.7

68,782

16.1

2

Nokia

83,162.50

19.8

107,556

25.1

3

Apple

33,120.50

7.9

16,883

3.9

4

ZTE

17,439.30

4.2

10,789

2.5

5

LG Electronics

14,720.40

3.5

23,997

5.6

6

Huawei

10,796.10

2.6

7,003

1.6

7

Research In Motion

9,939.30

2.4

13,004

3.0

8

Motorola

8,368.20

2.0

8,790

2.1

9

Sony Mobile Communications

7,898.40

1.9

7,919

1.9

10

HTC

7,703.40

1.8

9,314

2.2

その他

139,392.60

33.3

153,809

35.9

合計

419,108.30

100.0

427,846

100.0

○出典:ITMedia

目立つのはモトローラ位だが、余りここはシェアを1年で減らしていない様だ。と言う事は、iPhone5は、新規需要の創出でなく、他の携帯の需要を食ってるだけとしても、食われたのは他国産のNokiaやLG、RIMで、米国GDPには寄与している事になる。成る程。3000億〜4000億売るプロダクトはそれだけで一国のGDPに目に見えるインパクトを出しそう、という事の様だ。

 更によく考えると、アップルから目の敵にされる位売れているGALAXYは、米国と比べるとかなり小さい韓国経済に対して、凄いインパクトを与えている可能性がある。

 サムスンのフラグシップ携帯電話が世界的な反響を呼んでいる。サムスンは米国時間9月6日、「GALAXY S III」が5月の発売開始から100日のうちに全世界で2000万台の販売を達成したと発表した。

 サムスンは、最も成功したこのスマートフォンの販売を今までのところ「新記録」と呼んでいる。

○出典:CNET

 これに対して、前述のiPhone5と同じ様なバック・オブ・ザ・エンベロープですると、

  • GALAXY S3の販売価格:600ドル
  • うち韓国に帰属する付加価値:300ドル(OSが他社開発の分を考慮し、販売価格の半分とした)
  • ×100日販売台数:2000万台
  • =韓国GDP寄与:60億ドル

そして、韓国のGDPは米国の13分の1の約1.1兆ドルである。単純に年換算してGDPで割っても2%に相当する。JPモルガンのiPhone5の計算だと更に4倍しているから、そうするとかなり激しい数値になって、それは実証的にも相当の違和感がある。ただ、4倍しない上記計算でも、今年2%成長と予想されている韓国経済は、LGのシェアをある程度食ったにせよ、サムスンのシェアはそれ以上に伸びてるし、GALAXYでその成長分のかなりの部分を稼いだ事になる。まさに救国の一品。

こう書くと、日本の携帯電話メーカーがガラパゴスでどーたら!と叫びたくなるが、グローバルに売れる商品の長打力は認めつつも、今となっては、アップル・サムスン両社に賢くデバイス売って、米韓両国に帰属しない付加価値の内、何割かが取れてるなら、それでいいんじゃないのと思う次第。