ビーチサイドへの出張

 福島県の小名浜に来ていた。ここは日本の大概の人には知られていないが、「東北の湘南」というキャッチフレーズを持つ、東北にしては温暖な、雪の降らない海洋性気候の土地である。海洋性気候だからと言って、別に海洋沿いに泊まる必要は全く無かったのだが、街で最も良いホテルがビーチサイドだった事も有り、部屋からよく海が見えた。

Morning
[SHARP 904SH 35mm F2.8]

  • 朝焼け。空気の澄んだ所では、朝夕はいつだって壮大な劇場になる。

 この小名浜オーシャンホテルというホテルは、数年前からこの地域に出張に来る時は常宿にしているのだが、理由は温泉が秀逸だからである。露天風呂が断崖絶壁の海を見下ろす、素晴らしい見晴らしなのだ。夜が特にいい。深夜、誰も居ない露天風呂で、ひたすら断崖に打ち付ける波の音を聞きながら、ゆるゆると物思いにふけるのはとても贅沢な時間だ。
 僕は日本全国各地の秘湯に行き、温泉にはそれなりに慣れ親しんでいると思うが、ここの温泉は割と高ポイントを付けていい。ホテルの様な大規模に開発された温泉だと、バックパッカーである僕の点は辛くなるのだが、ここはうまく開発されている。

Onahama Ocean
[SHARP 904SH 35mm F2.8]

  • 風が強く、雲が生き物の様に動く日だった。一眼レフじゃなくて、これは携帯の画像。こういうコントラストや彩度がそれ程強く無い薄暗い遠景は割と良く写る。

 このホテル、数年前、僕が泊まっている時に民事再生法を残念ながら申請し、その後ホテルにゴルフ場が付いている事から、今はアコーディア・ゴルフの傘下である。いつもおごられっぱなしのゴールドマン=サックスだが、ちょいとだけ還流させて頂いた。
 しかし、このホテルの唯一の欠点は、朝食を食べるバフェ・レストランである。これが1番ホールを見下ろす絶景なのである。川奈の大島コースに似た、断崖ギリギリを攻めるアンジュレーションに富んだリンクスがくっきりと見える。これは、その後仕事しようという気力が随分と萎えてしまう。