ますます深まっていくJASRACの謎


さて、前回JASRAC監督官庁はどこなのか不明だという話をした。今回はその続き。


あの後も、色々と調べてみたのだが、JASRACは調べれば調べるほど奇妙なところがある。JASRACの定款を見る限りは、監督官庁は不明であるが、著作権等管理事業法の適用を受けていることから考えると文化庁と考えるのが自然だと思うのだが、前回の資料で触れたように「民法の規定により、公益法人の設立許可及び指導監督に関する権限は、その目的・事業に関連する事務を所掌している内閣府及び10省の中央官庁に与えられています」とあり、中央官庁でもない文化庁JASRACに対して指導監督するというのは腑に落ちない面はある。


そんな事を思いつつネットをうろうろしていたら「個人向けの企業サポートで受けられるサービス」と言うものを見つけた。やった、これさえあればJASRACを所管している官庁が一発で分かるぞと思って検索してみた。結果は驚くことに、JASRACの所管官庁は文部科学省だった。文科省が所管している社団法人なのに、JASRACの定款には文科省の文の字も含まれていない。謎は深まるばかりである。



さらに調べていくうちに、もう一つの謎に突き当たった。定款の変更についての事である。総務省の文書によれば、以下のようにある。

社団法人の定款は、総社員の4分の3以上(定款に別の定めがあるときはこれによる。)の同意及び主務官庁の認可を要件として偏向することができる(第38条)。
平成18年度 公益法人に関する年次報告【PDF】P.5


例えば、日本レコード協会も、定款を変更するにあたっては文部科学大臣の認可が必要である。

第44条 この定款は、理事会および総会において理事および会員おのおのの現在数の4分の3以上の議決を経、かつ、文部科学大臣の許可を受けなければ変更することができない。
社団法人 日本レコード協会定款


また、私的録音補償金協会も事情は同じで、主務大臣の認可が必要である。

第41条  この定款の変更は、理事会において理事現在数の4分の3以上及び総会において会員現在数の3分の2以上の議決を経、かつ、主務大臣の認可を受けなければならない。
http://www.sarah.or.jp/info/info01.html


ところが、JASRACだけは事情が違っているようで、総会の決議があれば、定款の変更が可能であることになっているのである。

第56条 この定款は、総会の決議を経なければ変更することができない。
2 前項の決議は、議決権を有する正会員現在数の過半数の者が出席する総会において、その過半数をもって決する。
3 この定款を変更したときは、すみやかに、公告し、かつ、会員に通知する。
JASRAC 定款


社団法人である以上、民法の制約を受けると思われるのだが、そうでもない所もあるらしい。JASRACは社団法人でありながら、特殊な一面を持っていると思われるのが、これ以上の事を調べるには、紙の資料でもって調査するしかなさそうだ。JASRACは設立経緯自体が特殊なようでもあるし、設立当時からさかのぼって調査する必要があるだろう。