こんにちは。スマートバンクでプロダクトマネージャーをやっているinagakiです。
これまで0→1フェーズや規模の大きなグロースフェーズのプロダクトづくりに関わってきた中で、プロダクトマネージャーが”熱”を伝える重要性について考える機会が多々ありました。
ユーザーに対してはもちろんのこと、プロダクトチームに対しても”伝える”ことが仕事の大半を占めるプロダクトマネージャー(PM)の仕事において、どうやって熱を伝えるかについて自分なりに考えてみました。
プロダクトづくりは冷静と情熱の間
プロダクトマネージャーの仕事を紐解いてみると、すべてにおいて仮説を持つことから始まるような気がします。
「ユーザーは○○という課題を持っているのではないか」「○○というソリューションで解決できるのではないか」「中長期的にこういう方向性にした方が良いのではないか」など。
こうした仮説を検証することを繰り返し、ユーザーへの提供価値を定義し、プロダクトに落とし込んでいくわけですが、仮説を決める際には、一定「これなら行けるんじゃないか」という感覚的な期待(ワクワク)をもとに決めることが多いのではないでしょうか。
もちろん、さまざまなファクトをもとに仮説を抽出していくわけですが、最後残った選択肢から選ぶとなると、答えのない中においては「これなら行けるんじゃないか」とPMが熱を感じられる仮説を持てるかどうかが重要になってくると思います。
一方で、検証の段階になると、定量・定性両面でのファクトをもとに、いかに冷静に、現実的に仮説の善し悪しを見極めてくかが重要になってきます。
大なり小なり仮説検証をするPMは、このように冷静と情熱の間を行ったり来たりしながらプロダクトマネジメントをやっていくわけですが、実はこうした営みにおいて、意図して熱を伝えていくことがPMには必要なのではないかと思うのです。
熱は意志を持って伝えるもの
プロダクトチームに対して、仮説に対する熱をどれだけ意図的に伝えられていますか?
ここで言う仮説は小さなもの(「このタイミングで機能訴求した方が使ってもらえるのではないか」等)から、大きなもの(「新規機能としてこういう価値を提供したらどうか」等)まで、さまざまな粒度のものを指していますが、いずれにせよ、熱の方ほど実は意図的にプロダクトチームおよび関係者へ伝える必要があるのではないかと思います。
フランスの哲学者アランが残した「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意志に属する」という言葉にもありますが、「うまくいかないかもしれない」という悲観的な見方ほど意図せず持ちやすいと言われています。
その結果、仮説に対して「上手くいかないのではないか」「失敗するんじゃないか」といった否定的な考えは持ちやすいため、不確実性の高いアプローチ(仮説)を取りづらくなり、結果的に確度が高そうな”冷静すぎる”仮説を選びがちになってしまうこともあります。
一方で、楽観主義とまでは言いませんが、仮説を見出す際の「行けるんじゃないか」という感覚的でもある熱の方は工夫をしないと伝わりづらくなってしまいます。
なぜなら、その熱の根拠は、仮説を持つに至るプロセスでPMが得たさまざまな情報をもとに、半ば無意識的に生成されているからであり、その膨大な前提まで伝えきれないと100%理解してもらうことは難しいからです。
もちろん、できる限り言語化して伝えるということになりますが、それも含めて意図的にしっかり伝えるという努力が重要になってきます。
熱を伝えられないPMには良いプロダクトづくりはできない
プロダクトマネジメントの始まりは仮説である以上、この熱が伝わらないが故に「そもそも何でその仮説なんだっけ」がチームに理解されづらくなり、動き出しが遅くなってしまうことがあります。
正直、0→1フェーズに近いほど、仮説自体も確固たるものではなくて「いくつかある中で感覚的にこれが行けるんじゃないか」というもののことが多い気がします。
その感覚的な「これ行けるんじゃないか」が伝わらずスタックしてしまうと、そもそも検証の一歩すら動き出せなくなってしまいます。
また、仮説検証は一発一中であることが少なく、仮説が外れてまた立て直すというサイクルが一定発生します。
その産みの苦しみの中で、打席に立ち続ける必要がありますが、チームの中で仮説に対する熱がなければ、粘り弱くなってしまうこともあります。
すなわち、仮説に対する熱を伝えて巻き込めなければ、プロダクトマネジメントの根本的な営みがしづらくなってしまいます。
熱を共有して、熱を武器にプロダクトをつくる
では、どうやって熱を伝えるか?
最近の取り組みで実際にやっている工夫についていくつか紹介したいと思います。
💡具体的なイメージを共有する
多くの伝わらないケースにおいて、具体的にイメージができていないことが要因になっているように思います。
論理的に、理路整然と話すほどに「言いたいことはわかったけど…」という渋い反応をされることはありませんか?
熱というものは感情的なものであるため、自分自身が想像して、手触り感を持てないと人は共感できないのではないかと思います。
「ユーザーのXXという課題を解決すべきではないか」という仮説の熱を伝えたいのであれば、例えば、その仮説を持つようになったきっかけのインタビュー動画を一緒に見るのが良いでしょう。
他にも「このソリューションなら解決できるのではないか」というという仮説の熱を伝えたいのであれば、敲きでも良いのでモックを作って、それを見ながら話すのが良いように思います。
💡同じものを見て、話す
具体的なものを見ながら、一緒にどう感じるかを話すことで熱が伝わりやすくなります。
例えば、インタビューを見て仮説を持つようになる過程で、実は自分自身の中でもさまざまな情報(発話や言動、文脈など)を経て考えを持つようになっているように思います。
この過程を完全に言語化して伝えきれると良いのかもしれませんが、とても難しいことにも思います。
一緒のものを見ながら話すことで、さまざまな情報をもとにどう考えて、この仮説、この熱に至ったのかを再現することで、より正確に熱を伝えらえるようになります。
直近でも、関係者を全員集めて「プロダクトチームでインタビューを観る会」を開催したのですがとても効果がありました。
非同期で「インタビュー動画観ておいてね」という運用もできるのですが、一緒に観ながらちょっとした反応に対しても一緒にリアルタイムで反応することで、より感覚を揃えやすくなったように思います。
もちろん関係者が多いほど(プロダクトチーム単位だと多くなりがち)カロリーの高い取り組みではありますが、重要であるからこそ早い段階で実施して、熱を共有でき、投資対効果を感じるものでした。
💡チームに熱を”プレゼン”する
チームに対して、淡々と話していませんか?
熱とともに仮説を共有する上で、その伝え方が重要だと思います。
そもそもPM自身がその仮説にワクワクしているかということが伝わらなければ、言っていることがいかにロジカルでファクトに基づいていたとしても、熱は伝わりません。
ユーザーに価値を提案するのと同じように、プロダクトチームに対しても、その仮説を提案する必要があるのではないかと思います。
- ストーリーを伝える
新しい機能の仕様について共有するにしても、具体的な仕様の話からしていませんか?
状況による部分はありますが、特に新しい取り組みをする場合においては、その当該案件の話をするだけでなく、その背景にあるよりマクロな話(会社の状況、戦略やプロジェクトの位置付けなど)を改めて話してみても良いかもしれません。
PMにとっては当たり前の文脈だとしても、プロダクトチームにとってはそこまで明確に意識していないことも多く、その背景が抜けてしまっているが故に熱としても伝わりづらくなってしまいがちです。
2. 内容だけでなく話し方、振る舞いなどのインターフェースもこだわる
同じ内容でも、淡々と話すよりも、熱を持って話す方が伝わりやすいと思います。
声の大きさや口調、表情、身振り手振りなど、話し方から人が受ける情報量は思っている以上に多いと言われています(らしいです)。
当たり前のような話かもしれませんが、PMとしての普段の実務でこれを意識し続けるのも難しいかもしれません。だからこそ、意図してやることが重要なのかもしれません。
業務連絡をするつもりで話すのではなく、プロダクトチームに”提案する”というスタンスで、伝える際のインターフェースにもこだわってみると良さそうです。
まとめ
PMとして働いていると、ミーティングばかりという日々になりがちですよね…。そのぐらい様々な関係者とコミュニケーションする必要性のある役割なのだと思いますが、だからこそ伝える技術を磨くことで、パフォーマンスを高めることもできるのではないかと思います。
最近他社のPMの方々と話す中で、事業責任者や営業、マーケなどのビジネスバックグラウンドのあるPMとそうでないPMとの違いについて盛り上がったのですが、一つにはこうした人に伝える技術を磨く経験の有無があるのではないかと思います。
プロダクトづくりと言うと、ともすると孤高な職人の世界のように見えますが、ことPMの役割でみると、常に人に対してどう伝えるかということと切り離せないのではないかと思います。
ここまで色々書いてきましたが、全く満足にできているわけではありません。PMとしての伝える技術について、もっと学んでいきたいと思いますので、自分はこう思う等あればぜひお声掛け・お話させてください。
また、スマートバンクではプロダクトマネージャーを募集しています。ご興味ある方は以下よりお声掛けください。 smartbank.co.jp